忠臣蔵・OL篇/武士篇

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作品概要
制作会社 劇団青年団
公開年度 2015年
内蔵助役 森内美由紀
評価 2ツ星


平田オリザ脚本。

ディスカッションドラマ(討論劇)。

本作は忠臣蔵でおなじみの大評定=「籠城だ」「切腹だ」で揉め、最終的に討ち入りに落ち着いていくハナシ。鑑賞したのは2015年だが元になってる脚本は1999年に書かれたそうで「OL篇」はアメリカでツアーまで行ってる人気作品。

本サイトではタイトルを「OL篇/武士篇」と並べて表記してはいるが、正続ではない別のお芝居。

上演時間約60分。


刃傷事件勃発時の大評定が、現代のどっかの会社のOLにふりかかったアクシデントかのように表現される「OL篇」。(舞台は社員食堂の一幕)

ほとんど同じスクリプトで男の武士にキャスティングしなおしての「武士篇」(別々の日に鑑賞)。武士篇だからと言ってあらためて当時の赤穂城の評定を再現しなおそうとか、そういうものではない。あくまで「OL篇」のキャストを武士に変えたバージョン(だから登場人物の名も田中さん、佐藤さん…。)

セリフの聞こえ方がキャスティングや状況によって変わってくる愉快な実験劇の様相が楽しい。


「OL篇」は浅野家の家紋をあしらった陣幕のはられた社員食堂で早駕籠が凶報を知らせに来たところからストーリーは始まり、スーツ姿や制服姿の7人のOLがかしましく揉める。台詞のやりとりが小気味良く、役者さん全員が魅力的。そこで大評定なんだから異様である。


「くすや」が忠臣蔵に偏らない芝居のレビューサイトだったら星の数はもっと多い。

この討論劇は、登場人物の「プライド」や「意気地」といった価値観や、主君への「大恩」や「愛」から盲目的になる武士の感情など、狂信的な武士のありさま(=討論の邪魔)がスクリプトや演出から取り去られているところが特徴。「恥辱をはらす」とか「二君に仕えず」とかセリフ自体は出てくるのだがいたってロジカルに処理され、OL=武士たちが「かっこ良く生きたい(または死にたい)」と渇望する思いはとくに客席にアプローチされないで、理詰めで評定は進む(やりとりの上での感情の起伏とかは、ある)。

もっと具体的に言うと、忠臣蔵ファンにとっては明らかに議論の進行上必要と思われるワードや考え方がスルーされる瞬間、いちいちひっかかるのだ。「そこはもっと膨らまそうよ!」「いやそこ、スルーしないでよ!」といった感じでw。これが5〜10分に1回シャックリのようにひっかかる。

舞台の設定自体が倒産の憂き目にあった現代社会に置き換えてるわけではなく、彼女たちは「切腹だ」「仕官だ」「幕府」だと普通に浅野家の家来として議論するので、こっちはナニ目線でついていったらいいのかも、いささかまごつく。

だが、帰りの井の頭線で「オリザ目線」なんだな。と思って納得する。オリザ氏は「ヤルタ会談」(<未見だが討論劇というよりは純粋なコメディだそうです)「御前会議」という会議シリーズも作っておられ、史実の検証ではなく、会議の妙をお芝居にしている。

この、モヤモヤが晴れるまでに星の数が溶けていったw。


忠臣蔵ノンケの人が見ると、最終的に「討ち入り」にまとまっていくサマを見て「反対意見だった人までも同調圧力によってひとつの結論に流れていく怖さ」と感想を持つ場合もあるようだが、オリザ氏は裏テーマとかそんなことじゃなくて、価値観が擦り合わされていく「ダイアローグ(対話)」そのものを面白がり、表現している。

ちなみに忠臣蔵ファンには「さっき反対意見言ってたあいつは、きっと脱盟するな」と想像できるので「同調圧力の怖さ」なんていうものは感じない。


さて「武士篇」はOLと同じテンションなのに見かけが武士っぽくなってることがハンデになり(?)「OLとサムライというちぐはぐなおかしみ」が無くなったぶん、挽回しようとしたのか、討ち入りを主張するときに「討ち入るの!」と言ってニコ!っとピースサインを出してみるとか、「犬死に」というワードが入る台詞の語尾に「ワンワン」とつけてわざわざふざけてみせたり、急に不要なところで大声を張り上げてバナナを投げたりとか、意味のないオーパーツとかわざとらしいそういうアレコレが内容を迷走させたように思う。そうして星がもうひとつ減る。

見終わったあとうしろの席のおじさんが奥さんらしき人に「なんでタバコ吸ったりピアスしたりさあ。アレがよくわかんねえんだよなあ」と、もっともなことを言ってたので「どうして武士篇作ったのに、オリジナルじゃなくOL篇の方に寄せてるのか」とオリザさんご本人にうかがったら「デフォルトにOL篇がある。それを10年やってたし、自衛隊篇とか(「戦わないんだから俺たち」みたいなセリフがあったとか)、修学旅行篇とかやった(「フトン並べてやってみたが、あんまり成功しなかったw」)んだけど、ひとまわりして武士篇になった」のだそうで、忠臣蔵ありきというよりOL篇ありきなので、ンじゃしょうがないと思った。