新作落語いろいろ

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噺家の師匠たちは忠臣蔵を題材にいろいろなお話しを作ってらっしゃいます。




難題話…桂文治6th

三題噺ならぬ、難題話というものを紹介した、明治33年の作品。榎本滋民先生(前にTBSの落語特選会の解説やってた)によれば文治の新作だろうというお話。

お題は「大星由良之助 流沙河の船軍(ふないくさ)」「在原業平 西王母に百夜通い」「中村芝翫の漢土(かち…中国)で芝居」

塩谷藩士の四十七士が一緒に雲州から鎌倉に討ち入りにでかけるのは相当目立ち、作戦が失敗すれば亡君はおろか竹田出雲(作者)にも申し訳が立たないということで天川屋義平に船を用意させて出かけるが難破し、天竺に辿り着く。

流沙河(三蔵法師も手こずった砂漠)で安計楽艦に乗った唐人に襲われるが山鹿流の陣太鼓を叩きみんなで返り討ち。川をわたって五層の料理店がある食悦国へ。

落ち着いた先で業平(やはり遭難中)とバッタリ意気投合。

漢土でもモテモテの業平は西王母をくどいたところ「小野小町の百夜通い(深草少将がやったやつ。百夜目に倒れる。)をしてほしい」と言われたので通いとおしていたが九十九夜目にいたって二日酔いなので由良之助に代行を頼むが断わられ、業平は同行していた中村芝翫に身代わりをたのむ。

名代の芝翫は「九十九夜目に蓑笠なら雪も要る」と道具方に三角の雪を降らせて出かけるが正体がバレる。

「とんだマァ、雪ちがい(行きちがい)をいたしました」

むじー。つか三題噺系はなかなかファンタジー。

四十七士がユニットとして別のロケーションで悪漢と闘うシチュエーションがワクワクする。



花ぐもり-青春忠臣蔵三平篇…桂三枝

300年から時代を超えて続いている赤穂義士人気。じつは内蔵助は計算づくだったという着想と、師匠の家路の国道171号線に「萱野三平屋敷跡」があるという縁からこの噺を作ったという。

父親の推挙する再就職と主君の仇討ち計画の板挟みになった萱野三平に俳句仲間の大高源五がてっとりばやく忠義の士として名を残すために、辞世の上の句を土産にして切腹をすすめにいく。

師匠の歴史系創作落語なのでいつもながら「よく調べているなあ」と感心はするものの、構成に大きな工夫があるわけではない。実際に忠と孝の板挟みで自害した三平のエピソードに大高源五が加わるだけで、要はやりとりが大阪弁の妙と小ネタで愉快に仕上がってる作品。


余談だが枕で「宝塚は浅野内匠頭、辞世の句を歌いながら踊りまんねんで。介錯人も一緒に踊りまんねん」と話してる部分があるが、ほんとうはお仕置き場に向かう内匠頭が銀橋の途中で立ち止まって辞世を口ずさみ、BGMに辞世に曲のついた歌が流れ、切腹のシーンは無く、もちろん介錯人と踊るシーンは無い。お笑いってこういうふうにいろいろ盛って作るのだなあと興味深かった。



忠臣ぐらっ…立川志の輔

各エンターテインメントに忠臣蔵はあるのに、実は落語だけ無い。というコンセプトから作ったお話し。たしかに、落語の忠臣蔵ものは艶笑小咄の天川屋義平を除いては、芝居の仮名手本忠臣蔵を扱ったものばかりで、芝居好きの誰それがどうしたというハナシばかりである。

志の輔師匠が題材にしたのは岡野金右衛門の絵図面取り。

再三絵図面の奪取を内蔵助から催促され、だんだん討ち入りに後ろ向きな気持ちになってきた金右衛門は自分が絵図面さえ手に入れなければ討ち入りの決行はなくなると考え活動をやめてしまう。しかし彼が酒屋に身をやつした赤穂浪士と知った近所の連中は応援するつもりであの手この手で吉良邸の絵図面を押しつけようとする。

ドタバタ喜劇の構成が面白く、ビジュアル化してもいいんじゃないかと思うくらい。

ただ、なんとなく台詞が安く、まるでその場で思いついて喋ってるかのような完成度だったのが残念。でもアイデアは面白かった。



怪獣忠臣蔵…快楽亭ブラック

忠臣蔵と怪獣映画に詳しいブラック師匠が、生前に円谷英二が語っていた「怪獣をみんなそろえて忠臣蔵を撮りたい」という夢を勝手に具体化したもの。

不肖あたくしもこの2要素は大好物でして、台詞だけ聴いててもちゃあんとインファント島の酋長もダイゴロウもビジュアルが浮かぶんですごく面白いんですが、これCDで聴きますと観客の反応がもうひとつ薄い。無理もないでしょうねえ。怪獣映画と仮名手本忠臣蔵を混ぜたと言ってもツボがわからねえんでしょう。

お話しのほうは、宇宙怪獣サミットの指南番キングギドラが饗応役のモスラを殺すのでゴジラをはじめ四十七士が仇討ちをするというストーリー。

特撮怪獣映画の怪獣を集めても47頭に足りないんで、テレビの円谷プロ怪獣も召集するのだが、中にゃとぼけたブースカなんて次郎長意外伝の灰神楽の三太郎みたいなやつも参加するんで、仲間がうとんじましてな。「役立たず」と蔑視されるんでそば屋に身をやつしてウルトラマンに稽古をつけてもらうなんていうくだりはコレ「血槍無双」、「元禄名槍譜 俵星玄蕃」なんですよね。念がいってるんですよ。ガメラが垣見五郎兵衛なんだけどBGMが勧進帳なんて「忠臣蔵 地の巻/天の巻」風だったりね、もうキャスティングが完璧!や、あたしも気づかない仕掛けがもっとあるんじゃないかしら。

30分強の噺だがあっという間。コレ、1時間ぐらいのロングバージョンで聴けないかなあ。



吉良の忠臣蔵…立川志らく

立川志らく師匠の「芝居落語」(新作落語)。

師匠が日頃から「ヘンだな」と思っていた、ステレオタイプの忠臣蔵劇を、吉良上野介の視点で描くという、「夜討ちの被害者のおじいさん」のはなし。かなりおもしろかったです。

「なんでもヒトに聴かないで自分で調べたらどうなんだ?」と、出来の悪い部下に業を煮やす吉良と「イジメですか!?」と居直る浅野との関係は、実に現代人の心に響く。ばかばかしいけど、どっかで笑えない、身に覚えのあるやりとりになんとなく息苦しくなったりいたします。忠臣蔵ファンのあたしとしちゃあ、うすうす気づいてるけど見ないようにしていた部分がクローズアップされている。

いろいろつじつまが合ってて、さすがお芝居もこなしてらっしゃる構成力。ちょっとDVDで持っておきたいと思いました。

でも師匠、忠臣蔵を見てて感じてた「歌舞伎でがんじがらめになったストレス」を解消する意味でこのお噺をお作りになったとおっしゃってましたが、出てくるディティールは東映映画で、歌舞伎と言うよりは「講談」のそれに近い。



カマ手本忠臣蔵…柳家喬太郎

謎の多い松の廊下事件の真相をばかばかしくひもとき、討ち入りにも新しい展開を加えた名作。喬太郎師匠、流石の構成力。

オカマとうたってはいるが「勢ぞろい!!おかま忠臣蔵」のように安いオネエ言葉などは出てこない。

<以下ネタバレ>

男色関係にある浅野内匠頭吉良上野介。一度だけの過ちが内匠頭(ジジ専)のハートに火を付けていた。どうしても若く経験のない伊達左京亮にばかり指導が熱くなる上野介に悋気の虫がおさまらず、やがて内匠頭は上野に刃を振るう。松乃廊下の刃傷事件はオカマの痴話げんかが原因だった…。

赤穂の評定では、そのケのある者ばかりが残り、討ち入りを決意する。

吉良邸で四十七士はすっかり返り討ちに合うが皆、殿のおそばにイケると笑って死んでいく。吉良邸の用人、小林平八郎達は世間の風評から今後の自分たちのありかたをかんがえ、死んだ浪士の装束を借りて自分たちが義士として死んでいこうとし、炭小屋の吉良のミシルシを上げる。

吉良をあの世で待っていたのは内匠頭であった・・。

「忠臣蔵が好きな人は怒っちゃイヤよ」と前置きされる本作ではあるが、ぶっちゃけ四十七士を「テロ行為」呼ばわりする風潮の現代においては、「心中行為」として構成された本作は忠臣蔵ノンケには一連を理解してもらうにはうってつけじゃないかと思った。「忠」や「義」より「LOVE」で説明される家臣の討ち入り根拠には妙に納得できるものがある。

喬太郎師匠がどっかで読みかじったなにかの一節から「男色」ネタを思いついたそうで、大好きな12chの「つか版・忠臣蔵」の風間杜夫のモノマネで内匠頭を演じている、サービス満点の作品。


聖夜の義士

「聖夜の義士」は毛利小平太の子孫を主人公にそえたクリスマス・イブの奇跡のお噺。

先祖がギリギリになって討ち入りにいけなかったように、サラリーマンの毛利君も出世や恋をすんでの所でライバルの上杉君に奪われている。クリスマスイブのデートの約束も急な上司の残業の命令で行けなくなるが…

世相とあるあるネタのおかげで聴きやすく、プチ・SFなつくりのハート・ウォーミング噺。毛利小平太や忠臣蔵がいまも有名なら「世にも奇妙な物語」がほしがりそうな内容。


白日の約束

初めてできたガールフレンドがホワイトデーに「今日はなんの日か」言ってくるハナシ。主人公はピンと来ないが…。

中で出てくる「日本人なら30過ぎたら忠臣蔵でしょう!?」という名言が心に残る(笑)。


ウルトラマン生誕50周年「ウルトラ喬タロウ」での新作落語では、ウルトラ怪獣のアダ名で呼び合ってた小学生時代の同窓会のハナシで、目立たなかったサイゴくんがいま芝居をやっており先日も浅野内匠頭を演ったというエピソードが出てくる。「なにせ敵がキーラだから」…という、もう、どの客を見込んでのギャグなのやら(笑)、師匠はまっすぐにあさっての方向へ高座を駆け抜けた。




AKO47 新説赤穂義士伝…月亭八方

AKB48がブレイクしているあいだでしか演れない、期間限定作品。<この枕はBSプレミアムの放送では言わなかった w。


AKBと赤穂義士とどっちもくわしい、という客はかなりかぎられるので、このハナシは一般客を相手にした場合、懲りすぎればドン引きされるであろうし、うわっつらだけだと「こんなもんか」と思われてしまうむずかしい素材だと思う。

しかし八方師匠は忠臣蔵にしてもAKBにしてもお客さんが「あ、それなら知ってる」という微妙なラインでうまく構成している。

あと、上方はどんなグレードのギャグを言っても「んなアホな」と付け加えるだけでなんとなくおもしろくなるからオトク。


吉良側に気取られぬようAKO47のコードネームで暗躍する赤穂浪士。吉良ひとりに大勢ではアンフェアと言うことで討ち入り選抜メンバーから、吉良と決闘をする"センター"を赤穂浪士を指示する人々によって総選挙(投票用紙は塩一袋に入っている)で選ぶ。(暗躍してるのに総選挙(笑))

塩問屋・秋元家康兵衛がプロデュース。

中間発表では 1位 大石内蔵助。2位 大石主税。3位 吉田忠左衛門。4位 堀部安兵衛。5位 岡野金右衛門。6位 赤埴源蔵。7位 矢頭右衛門七 ・・コレを神セブンという。

最終的に見事センターになった主税は同士とともに見事本懐を遂げる。

雪の本所松坂町に「エイ!ケイ!オー!!!」の勝ちどきが上がる。




新出意本忠臣蔵(しんでぃほんちゅうしんぐら)…桂 九雀

これまで、はめもの(上方落語の特徴で口演にお囃子を盛り込む演出手法)を中国琵琶やマリンバでやってきた九雀師匠が「吹奏楽で忠臣蔵を」と思いたち、以前から交流のあった奈良でご活躍の市民吹奏楽団「セントシンディアンサンブル」さんとコラボした作品。タイトルの「しんでぃほん」は楽団名に入ってるシンディ(<誰のことか不明)からきている。原作:小佐田定雄(演芸作家)。

生演奏のゴージャスさと落語の面白みが加わった変わり種コラボで舞台上は中央の九雀師匠の後ろに吹奏楽50人ほどが揃うというフォーメーション。松之廊下〜討ち入り本懐までを熱演する。

「風さそう花よりもなおわれはまた われ泣きぬれてカニとたわむる」とか、急進派・安さんは大評定で「おかしんちゃうかっちゅうねんワレ!いったらんかい怒るでしかし!」と横山のヤスさんになったり、赤垣源蔵の義姉が「トクリと反省」したり、コネタを随所にちりばめて大筋を進める構成に生演奏がかぶる。

主なセトリは…これもネタバレになるので最初の方だけ紹介すると芥川也寸志の「赤穂浪士のテーマ」から始まり、松之廊下では「迫り来る脅威(大和の風)」(<なんの曲か不詳)、田村邸の別れでは「オーゼの死(ペール・ギュント)」などがかかるが、たとえば赤穂に急ぐ早駕籠には運動会でお馴染みの「クシコス・ポスト」がかかるといった雰囲気から、全体的なやさしいムードはお分かりいただけると思う。

2回ほどのお色直しをその場でこなす師匠は文字通り大熱演で、夜毎遊び呆ける大石内蔵助をやるときは会場に手ぬぐいをばらまき、最後は演奏者全員が討ち入り装束の羽織を着るなど会場のみんなで楽しく忠臣蔵を楽しめる雰囲気に満ちた、日曜昼下がりに持って来いの出し物でした。

となりのご婦人とお話をしたが、息子さんが舞台上でユーフォニュームを演ってるそうで、おおいにご満悦のご様子でした。