新春大型時代劇スペシャル 大忠臣蔵

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作品概要
制作会社 TBS
公開年度 1994年
内蔵助役 松方弘樹
評価 3ツ星


製作年の背景

評判がいいのにDVDリリースされないばかりか、TBSチャンネルのサイトで検索しても「橋田壽賀子もの」や「たけし版」は出てくるのに本作はラインナップされておらず、あたかも同局で「無かったこと」のような扱いの忠臣蔵。


これが正月に放送された1994年という年は、映画のほうでも松竹東宝も忠臣蔵を作っている。

この松方弘樹版はひじょうに意欲作だし、松竹は深作監督のワルノリ絶好調だし。東宝はアプローチが好評だったと記憶している。

しかし、この忠臣蔵ラッシュのあとはパタッと大作は続かない。おそらく「なんかさあ、もはや独参湯(どくじんとう:よく効く薬=興行すれば必ず大当たりのキラーコンテンツ。まれに人参風呂とも)じゃなくね??バブル崩壊しちゃったしさあ、カネがかかるわりに客入らないからやめとこう」みたいなムードがメディア界に広まっちゃったんじゃないだろうか?「四十七人の刺客」は同年公開の「ゴジラVSスペースゴジラ」より振るわず、翌年から東宝はガメラ作って怪獣快進撃を始める。

能村庸一氏の「実録 テレビ時代劇史」によれば視聴率が散々だったらしく「惨敗」「不振に終わった」とある。’94年は忠臣蔵がコテンパンだったようだ。


作品の特徴

さて、作品のほうはと申しますと、監督があの怪作「ノストラダムスの大予言」の舛田利雄だが(ごめんなさい「錆びたナイフ」のほうが有名なんですね。日活で石原裕次郎とたくさん映画をやってらっしゃる監督。)、本編には人食い人種も巨大ナメクジも出てこず、全体的にはオーソドックスであるが、それでいてなぜかすごく見応えがある。撮り方に凝ってるわけでもなく、大胆な表現があるわけでもないのに、なぜ見応えがあるのか素人にはわからない舛田マジック。たぶん細かいオリジナリティを各所に入れてるのが案外うまくいってるのと、キャスティングがいいからでしょうか。

そう、間違いなく言えるのは、キャラクターが豊かにふくらんでて、そこにピッタンコな役者が当てられています。どの人も「早くまた出てこないかな」と思わせる魅力があります。そう、コレ大事なんですよね。忠臣蔵は登場人物が多いのだから「こいつは見てたっておもしろくねえや」って俳優は入れるべきではないんです。どんなにカネをかけてもここはがんばらないとイケナイ。忠臣蔵ファンだから言ってるのではなく、そうしないと「持たない」でしょう、ハナシ長いし。どうも近年はそこんところがおろそかな気がいたします。

本作は全編、浪士たちを中心に構成されており、柳沢の陰謀とか上杉の間者とか、そういう理屈は一切出てこない。内匠頭さえそんなに重厚に扱われていない。そういう整理の仕方もうまいのかもしれない。

あと、特徴的なところは、意外にみんな口が軽い。もっとも作戦を部外者に口外する忠臣蔵ではあるまいか?


キャスティングの魅力

役所広司の安兵衛が印象的で、演技も役者持ち前のダイナミックさが申し分なく、彼がフレームインするとホッとする。主家断絶後は、彼ら急進派が自分たちだけで上野介を殺そうとはやり、小さな作戦を立てては失敗を重ねるのだが、このことで自然に敵が難攻不落なイメージに仕上がっていき、後半への期待を高める効果を生んでいる。

ほかにも川谷拓三の原惣右衛門が子だくさんでかかあ天下だったりとか、夏八木勲の不破数右衛門がなぜか病気で、討ち入りしながら吐血したり(八つ墓村でもそうだったがこの人、血を吐くとき「あうっ」って声を出します)、安兵衛たちと別行動のアザー急進派「殿さまラブトリオ」の筆頭の片岡源五右衛門はマッチが役所広司と対照的なコントラストを出してたりと、いろんなキャラクターがさまざまな個性で登場し、オリジナルを壊さないようにキャラをおもしろくふくらませようとしてる。そんなスタッフのこころいきが存分に楽しめます。

マッチのほかに、内匠頭のヒガシ(は後年「元禄繚乱」でも同じ役をする)、主税のTOKIO松岡、光GENJI(てまだこのころやってたのかしら?)の内海=矢頭右衛門七とかジャニーズ陣がうまく当てられてて、これがなかなか奮闘している。(右衛門七はほとんど出番はないけど)

風流で有名なコンビ、宝井其角大高源五を、それぞれケーシー高峰と羽賀研二というドエロな配役にしたのだけはなにをどう血迷ったのか?逆に笑える。

特筆すべきは、愛妻家・小野寺十内の井川比佐志とお丹・長山藍子のキスシーン。初老のラブシーンも珍しいがこのふたり、寅さんのさくらと浩なのである(テレビ版「男はつらいよ」)。ファンにはなにしろ気まずいシーンだw。

肝心な松方の内蔵助だけ、妙にセリフ回しがオーバーアクションなような気もしたが、大江戸捜査網や金さんで「豹変するキャラクター」を得意としてる彼は、祇園で遊ぶ彼と討ち入りを覚悟する内蔵助の変身ぶりをいい振り幅で演じており、お茶の間的には安心して見られる。


考察

平成21年現在、知る限りでは平成の忠臣蔵ではもっともキャストが豪華だが、昭和の里見版より人気がないのは時代劇を受け入れる視聴者の嗜好の変化もあるだろうが、なんというか、花をあしらったようなお茶の間向けの「優しさ」に欠けるからか?里見版ってペールトーンのイメージなんですが、こちらはコントラストがはっきりしている上にビビッドなんですよね。大人向け?