東海道四谷怪談

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仮名手本忠臣蔵』のスピン・オフの怪談。


欲望、裏切り、DV、連続殺人など、ネガティブ要素をふんだんに構成して、こみ入ったコワイ話に仕上げた鶴屋南北のものすごいストーリー。

それでいてなぜかところどころユーモラスという、南北の脳みその稀代ぶりが発揮されている。


元・塩谷藩士、民谷 伊右衛門は舅を殺してまで復縁にこぎ着けた奥さん、お岩も死に至らしめ、その後いっぱい殺す。

ので、いろいろ呪われ発狂する。最後はお岩さんの妹の夫である佐藤与茂七に仇を討たれる。


とにかくお岩さんがかわいそうなのだが、これを演じる役者さんは相当な演技力や体力その他、スキルが要求される。

こわいけど、美しい、で、かわいそうですさまじいという演技はなまなかでは難易度が高そう。

産後の肥立ちの悪いお岩さんの所作には、死に至るまで踊りのような美しさがあり、目が離せない。

また、お岩さん担当の役者はほかに小仏小平、佐藤与茂七と計3役の早替わりをこなさねばならない。


「四谷怪談」というと映画製作にまつわる怪奇現象の都市伝説ばかりがクローズアップされがちだが、舞台のほうはとにかくストーリー、役者のグレードのほかにも、工夫されまくってる仕掛けなど、とにかく観客を楽しませようというサービスのてんこ盛り。

ホラーの基本である(?)、大量のネズミというアイデアなど、ともかくいろいろと、まったく現代(や、海外)にも見劣りしない大傑作であります。


映画

この項目を上げたところで、これまた途方も無い量の作品があるので「くすや」二号館が必要になる(それほどでもないか)ので、本気は出さず、見たのから気まぐれに紹介。

ともかくどうしてこうクリエーターは本作を映像化したがるのか。

人間の業のものすごさが魅力なのでしょうか。



四谷怪談…東宝・1965年

仲代達矢が民谷 伊右衛門を演って好評だった新劇の舞台(演出は小沢栄太郎…本作の伊藤喜兵衛)の翌年に公開された。

岡田茉莉子の岩は品があり、化けても美しさを保っている。化けて伊右衛門に恨みをぶっつけてくるというよりも立身出世に目がくらみきった彼のゲスい生き様を嘆くかのようなスタンスが映画的。同時にホラー映画としてのオモムキは抑えめ。

「塩谷家(浅野家)」について具体的に出てこないぶん、浅野の家来が吉良家の家臣の婿に入るといった皮肉と非道さは無くなっている。・・・てことはここで紹介する意味なくなっちゃうのだなあ。

仲代もさることながら中村勘三郎(17th)の直助の好演も目立つ。(「修羅」の中村嘉葎雄と唐十郎の関係を思い出した。)

大筋も細かい部分もたいへん良く出来ていてわかりやすい。




魔性の夏 四谷怪談より…松竹・1981年

蜷川幸雄監督作品で、前半は良い意味で非常に映画的ではない、舞台的な(?)構図のとり方やセットの組み方、すごく斬新なカメラワーク、セリフの掛け合いなどが愉快に感じられ、『ええじゃないか』や『写楽』のようなアヴァンギャルド時代劇(<そんな分野があるのか、あたしの勝手な言い方でありますが)を彷彿とさせ、どことなく寺山修司映画っぽい呼吸を感じることもある。

65年の東宝映画「四谷怪談」について仲代達矢は自分の演じた登場人物について「蚊帳まで売ろうという貧乏所帯にしては身なりがきちんとしてる」とインタビューでコメントしていたが、本作はその点食い詰めた「場末感」を演出するのにあっちこっち気を使っている。

そんな空気の中、存外忠実なストーリーラインと高橋恵子(岩)と夏目雅子の美貌が素晴らしく、狂った伊右衛門のショーケンの奇演ぶりは申し分がない。

奇抜な演出と思われるところもあり、ネット上のレビューを見ると戸惑ってる人もいるようす。

蜷川監督は怖がって欲しいのやら、楽しんでほしいのやら、確かに戸惑うこともあるが、伊右衛門ひでえなあ。お岩さんかわいそうだなあ、はちゃんと、思う。


同監督の2004年公開「嗤う伊右衛門」は伊右衛門やお岩さんを始め四谷怪談に出てくるいろんなキャラや素材は出てくるものの、まるきり新しく組みなおしたリ・イマジネーション作品で、鶴屋南北も忠臣蔵もまったく関係ないが、絵作りセンスや脚本はなかなかステキ。