江戸むらさき特急
1995年にリリースされたVシネマ作品。
ビッグコミックスピリッツの同名ギャグ漫画(お馴染みのいろんな人気時代劇のパロディ短篇集)が山城新伍のハートをつかみ、彼がメガホンをとって、京都撮影所の全面協力により映像化が実現した。
「遠山の金さん」や「隠密同心」など13話のオムニバスのトリに、「忠臣蔵外伝の巻」として忠臣蔵が扱われている。
この作品、ビックリするような出演者で、「大奥」のパロディを岸田今日子のナレーションでやってたりするし、忠臣蔵も内蔵助は風間杜夫である。
「忠臣蔵外伝の巻」は劇中劇の形をとっており、おそらくコレだけは漫画の原作と関係がない(要確認)。
風間杜夫は子役時代からいままで大石主税〜浅野内匠頭〜堀部安兵衛〜大石内蔵助と順調にキャリアを積んできた時代劇役者の役で、そのパーソナリティはあたかも「蒲田行進曲」の銀ちゃんのその後じゃないかと思わせるような演じぶりで贅沢に感じられる。
(もりいくすおには、つかこうへい劇団というイメージの強い風間さんだったが、どっこい「住田知仁」名義で子役で活躍をした、往年の東映京都の時代劇キャリアのある人である。大人になって、大友柳太朗に再開した時すっかり忘れられていたそうだが。笑(ワイズ出版「大友柳太朗快伝」))
内蔵助が天野屋利兵衛に夜這いを掛けてしまって「男でござる!」と叫ばせたり、瑤泉院(中島ゆたか!)に、はりがたを渡して「細かりし由良之助」と言わせるなど、古典の小咄の映像化もうれしい。
討ち入りの陣太鼓を叩いてると近所のオバサンが「うるさいなあんたらっ!!いいかげんにしよしっ!!」と苦情を言うシーン(山城新伍の実体験)で全75分の作品の幕は閉じる。
1995年と言えば「ダウンタウンのごっつええ感じ」が絶頂期にあり、ギャグセンが温められてるお茶の間と、その当時ですっかりオトナの山城監督の撮り方にはじゃっかんの温度差があるが、氏の時代劇に対する愛情がイタイほど感じられる作品であります。
<付言>
芸達者の山城新伍は花王名人劇場「爆笑!大まじめ!?山城新伍独演会」(1982年6月20日放送)で艶笑落語「天野屋利兵衛」を披露している。
東映時代、駆け出しのころは通行人役や死体役が多かったが、初めて台詞があると聴いて楽しみにして参加した「忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻」の台本を広げてみたら見当たらない。聴いてみたら最後の「えいえいおー!」だってんで、頭にきて口パクでやってやったという。ろくに自分のことなんか見ちゃいない監督から「なかなか勢いがあってよかったよ!」とテキトーに言われたとか。盛ってるだろうがおもしろエピソードを同番組で披露している。