「元禄忠臣蔵 大石最後の一日」より 琴の爪

2021年1月20日 (水) 02:24時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版

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作品概要
制作会社 東宝
公開年度 1957年
内蔵助役 松本幸四郎8th
評価 3ツ星


 新歌舞伎「元禄忠臣蔵」の「大石最後の一日」のみをクローズアップして、1本に仕上げた映画。


 このシークエンスは巨匠溝口健二によって、戦前にも映画化されているが、この「琴の爪」のほうが圧倒的に活劇としての魅力がある。


 冒頭、本来ならどうっていうことのない場面(丁稚がケンカして連行されてる)なのに、異様にダイナミックに仕上がってて「アレ?」と思うほど絵作りが黒沢明くさい。と思ったら、監督さんは「生きる」や「七人の侍」の監督助手をやってた人だった。(堀川弘通)

 ついでに言うと、音楽の佐藤勝も脚本の菊島隆三も、黒沢を手伝った人であり、黒沢ファンとしてはなんともうれしいテイストでございます。


 さて、原作の「大石最後の一日」というお話しは、ひじょうによく書けた内容なのだが、地味な上に台詞がダラダラ長いので、本来ならばビジュアルは退屈。にもかかわらず、本作品のスタッフは会話だけで処理されていたいきさつを、独自の視点とアレンジで、ちゃんと場面を用意して描いている。

 わかりやすいし感情移入しやすいし、色んな趣向を凝らして、とにかく1時間を楽しませてくれる。

 楽しませるったって、コレは悲恋のラブロマンスなのだが。


 ストーリーは、四十七士メンバーの礒貝十郎左衛門が作戦のためにつきあってたフィアンセ・おみのが、彼の本心を確認するために、彼が幽閉されている細川家に出向く。

 十郎左は作戦のためにおみのを利用しただけだととぼけるが、彼のフトコロには切腹で死ぬが死ぬまで、おみのの肩身の琴の爪が大切にされていた。


 泣けるなー!原作では内蔵助が間に入って「おまえ琴の爪持ってたじゃん。アレ出してみろよ」って言ってくれるんで、おみのが十郎左と手を取り合って喜ぶのだが、本作品の十郎左は、自分の死後におみのには生き続け、新しい幸せをつかんでもらいたい一心から、嘘をついて死んでいくのだ。

 原作とちょっと違うんですな。


 そして、おみのを演じる扇千景が鬼のようにかわいい!いま(H22.3現在)で言えば佐々木希クラスである※註01。こんなかわいいコが年を取って政治家になると思いっきりオッサンになってしまうのだから愁傷千万。

 あっ!!!Wikipedia見たらダンナは坂田藤十郎(4th)だっ!!この映画の十郎左なんですよ!所帯を持てたんじゃないか!おめでとう!(涙)※註02


「大石最後の一日」の現代語訳版と言ったおもむきの秀作。


※註01…(更新)令和元年現在、タレ目の感じから、コンディションの良いときの橋本環奈に匹敵すると思われる。

※註02…国立劇場開場40周年の「元禄忠臣蔵」全通し公演のトークショーのご両人によれば「この映画がなれそめ」とコメントしていたそうです。(国立劇場制作部・大木さん談)

この映画の2年前に公開された関連作品「復讐浄瑠璃坂」でも、共演している。