「サラリーマン忠臣蔵’60/続サラリーマン忠臣蔵’61」の版間の差分

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あらすじ:赤穂産業の若社長・浅野がメインバンクの吉良頭取の侮辱に我慢しかねて、大切なイベント中に暴力を振るってしまう。接待役を降ろされた浅野社長は失意の中自動車事故で死亡。後釜・新社長の任に就いたのは誰あろう吉良頭取。
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あらすじ:赤穂産業の若社長・浅野がメインバンクの吉良頭取の侮辱に我慢しかねて、大切なイベント中に暴力を振るってしまう。接待役を降ろされた浅野社長は失意の中、自動車事故で死亡。後釜・新社長の任に就いたのは誰あろう吉良頭取。
  
 
浅野社長を慕っていた社員達は大石重役をはじめ辞表を提出し、吉良への復讐を誓う…。
 
浅野社長を慕っていた社員達は大石重役をはじめ辞表を提出し、吉良への復讐を誓う…。
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ベースは史実ではなく、歌舞伎の[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]のほう。
 
ベースは史実ではなく、歌舞伎の[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]のほう。
  
当時人気の社長シリーズと忠臣蔵をうまく混ぜている。
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講談と違って、仮名手本は武家社会の忠義話ばかりではなく、人間模様もふくらんでいるので現代社会のアレコレ(=社長シリーズの世界観)にけっこうマッチしており、オマージュにしてはすんなりハマッている。
  
  
モリシゲを取り巻く重役が加東大介以外大部屋俳優さんなのだが、ここのキャスティングはがんばってほしかったな〜。忠臣蔵のセオリーで行けば、必ずしも内蔵助の参謀って有名な役者とは限らないが、社長シリースのセオリーでいうと森繁の周囲がいつもレギュラーの名脇役で固めてるので、'''見かけに少々違和感'''がある。
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モリシゲが主役になる前の「三等重役」の河村黎吉の遺影を社長室に飾っているところを見ても、れっきとした社長シリーズ(東宝娯楽映画の人気シリーズのひとつ)として製作側は位置づけているように見える。(って、えらそうに書いたらコレ「東宝サラリーマン映画100本記念作品」なんですって)
  
「仮名手本」を下敷きにしてるので、ふつうの忠臣蔵ドラマでは見かけない「桃井」のサイドストーリーがある。
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とはいえ、「いつもの」社長室の常連がそのままシフトしているわけでもない。
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社長シリーズのファンの視線で言うと、モリシゲ([[大石内蔵助|大石専務]])を取り巻く重役が本作品では加東大介以外大部屋俳優さんなのだが、ここのキャスティングは悩ましかったと思う。
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忠臣蔵のセオリーで行けば、必ずしも内蔵助の参謀って有名な役者ばかりとは限らないが、社長シリースのセオリーでいうと森繁の周囲がいつもレギュラーの名脇役で固めてるので、'''見かけに少々違和感'''がある。
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かと言って、[[吉田忠左衛門]]や[[原惣右衛門]]などをシリーズでは道化重役の三木のり平にするというのもミスキャストなので、むずかしいところではある。(つか、三木のり平出てないし)
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さて、先ほどご案内の通り「仮名手本」を下敷きにしてるので、ふつうの忠臣蔵ドラマでは見かけない「桃井」のサイドストーリーがある。
  
 
若い[[桃井若狭助|桃井]]社長(三船敏郎)のつっぱしりを助ける側近の角川(志村喬〜[[加古川本蔵]]がモデル〜)が奔走して吉良(東野英治郎)のイジメを止める下りがなにげに現代のサラリーマン社会っぽくうまく脚色できてて好き。
 
若い[[桃井若狭助|桃井]]社長(三船敏郎)のつっぱしりを助ける側近の角川(志村喬〜[[加古川本蔵]]がモデル〜)が奔走して吉良(東野英治郎)のイジメを止める下りがなにげに現代のサラリーマン社会っぽくうまく脚色できてて好き。
  
[[吉良上野介|吉良]]の東野英二郎や[[鷺坂伴内|伴内]]の山茶花究がうまいんだなー。現代においては忠誠心もさることながら「ねまわし」が必須になってることを欠かさないことで現代劇としてのリアリティを演出している。
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[[吉良上野介|吉良]]の東野英二郎や[[鷺坂伴内|伴内]]の山茶花究がうまいのだ。「ねまわし」が今も昔も処世に必須になってるのがおもしろい。
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まったく別会社のエピソードを見せるというイレギュラーに社長シリーズのファンを戸惑わせないよう、黒澤映画の常連という豪華なキャスティングによって見事に持たせている。
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とにかく徹頭徹尾、ベテラン人気俳優がこの「ごっこ」をすごく楽しんでるようで気持ちいい。
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東宝娯楽の味わいが見ていて心地いいが、脚本や演出側の配慮が楽しめるので仮名手本忠臣蔵を知った上で本作を見ると圧倒的に面白い珍品。
  
黒澤映画常連の三船と志村のツーショットを喜劇映画でおがめるというオマケは贅沢千万。
 
  
  

2011年9月14日 (水) 00:01時点における版

作品概要
制作会社 東宝
公開年度 1960-61年
内蔵助役 森繁久彌
評価 4ツ星

サラリーマン社会に設定を置き換えた現代版の忠臣蔵。


あらすじ:赤穂産業の若社長・浅野がメインバンクの吉良頭取の侮辱に我慢しかねて、大切なイベント中に暴力を振るってしまう。接待役を降ろされた浅野社長は失意の中、自動車事故で死亡。後釜・新社長の任に就いたのは誰あろう吉良頭取。

浅野社長を慕っていた社員達は大石重役をはじめ辞表を提出し、吉良への復讐を誓う…。


ベースは史実ではなく、歌舞伎の仮名手本忠臣蔵のほう。

講談と違って、仮名手本は武家社会の忠義話ばかりではなく、人間模様もふくらんでいるので現代社会のアレコレ(=社長シリーズの世界観)にけっこうマッチしており、オマージュにしてはすんなりハマッている。


モリシゲが主役になる前の「三等重役」の河村黎吉の遺影を社長室に飾っているところを見ても、れっきとした社長シリーズ(東宝娯楽映画の人気シリーズのひとつ)として製作側は位置づけているように見える。(って、えらそうに書いたらコレ「東宝サラリーマン映画100本記念作品」なんですって)

とはいえ、「いつもの」社長室の常連がそのままシフトしているわけでもない。

社長シリーズのファンの視線で言うと、モリシゲ(大石専務)を取り巻く重役が本作品では加東大介以外大部屋俳優さんなのだが、ここのキャスティングは悩ましかったと思う。

忠臣蔵のセオリーで行けば、必ずしも内蔵助の参謀って有名な役者ばかりとは限らないが、社長シリースのセオリーでいうと森繁の周囲がいつもレギュラーの名脇役で固めてるので、見かけに少々違和感がある。

かと言って、吉田忠左衛門原惣右衛門などをシリーズでは道化重役の三木のり平にするというのもミスキャストなので、むずかしいところではある。(つか、三木のり平出てないし)


さて、先ほどご案内の通り「仮名手本」を下敷きにしてるので、ふつうの忠臣蔵ドラマでは見かけない「桃井」のサイドストーリーがある。

若い桃井社長(三船敏郎)のつっぱしりを助ける側近の角川(志村喬〜加古川本蔵がモデル〜)が奔走して吉良(東野英治郎)のイジメを止める下りがなにげに現代のサラリーマン社会っぽくうまく脚色できてて好き。

吉良の東野英二郎や伴内の山茶花究がうまいのだ。「ねまわし」が今も昔も処世に必須になってるのがおもしろい。

まったく別会社のエピソードを見せるというイレギュラーに社長シリーズのファンを戸惑わせないよう、黒澤映画の常連という豪華なキャスティングによって見事に持たせている。


とにかく徹頭徹尾、ベテラン人気俳優がこの「ごっこ」をすごく楽しんでるようで気持ちいい。


東宝娯楽の味わいが見ていて心地いいが、脚本や演出側の配慮が楽しめるので仮名手本忠臣蔵を知った上で本作を見ると圧倒的に面白い珍品。


昭和64年にテレ朝で「新春ドラマスペシャル サラリーマン忠臣蔵〜華麗なる復讐〜」っていうドラマが放送され、まったく別物だそうで07.3月にCSテレビ朝日チャンネルで放送されたそうです。