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七段目【しちだんめ】…(落語)
 
七段目【しちだんめ】…(落語)
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[[画像:7danme.jpg|thumb|青海堂 落語忠臣蔵 グラビア]]
  
  
タイトルは歌舞伎の[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]の七段目のこと。芝居キチガイの若旦那と小僧さんのおはなし。
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タイトルは歌舞伎の[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]の七段目のこと。芝居キチガイの若旦那と小僧さんのおはなし。別名・役者息子。
  
 
お使いの帰りに寄り道をして芝居見物をしてきた若旦那が親父さんからけんつくを食うが、帰るなりいきなりガミガミやられたのがしゃくにさわったんで、返答を全部、芝居のセリフで返してたらケンカになる。番頭が仲裁に入って、若旦那は二階でまたぞろひとりで芝居のマネをやってるところへ同じく芝居好きの小僧さんが上がってくる。二人は仮名手本忠臣蔵の七段目ごっこをやろうということになる。
 
お使いの帰りに寄り道をして芝居見物をしてきた若旦那が親父さんからけんつくを食うが、帰るなりいきなりガミガミやられたのがしゃくにさわったんで、返答を全部、芝居のセリフで返してたらケンカになる。番頭が仲裁に入って、若旦那は二階でまたぞろひとりで芝居のマネをやってるところへ同じく芝居好きの小僧さんが上がってくる。二人は仮名手本忠臣蔵の七段目ごっこをやろうということになる。
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この噺は「[[四段目]]」よりもさらに、仮名手本忠臣蔵をよく知らないと楽しみが半減する。
 
この噺は「[[四段目]]」よりもさらに、仮名手本忠臣蔵をよく知らないと楽しみが半減する。
  
「四段目」は芝居の再現をやりながら'''解説が付く'''が、こっちは[[寺坂吉右衛門|平右衛門]]と[[お軽]]のくだりをそのままやるからだ。さらに「四段目」はひとり芝居を演じるのだが、「七段目」は若旦那と小僧が演じてるところを演じなければならない。
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「四段目」は芝居の再現をやりながら'''解説が付く'''が、こっちは[[寺坂吉右衛門|平右衛門]]と[[お軽]]のくだりをそのままやるからだ。ちなみに「四段目」はひとり芝居を演じるのだが、「七段目」は若旦那と小僧が演じてるところを演じなければならないハードルが噺家に課せられる。
  
とはいえ、前半部は噺家がうまいと楽しめると思います。
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芝居の再現をする後半はともかく、前半部についてはは噺家がうまいと楽しめると思います。
  
言ってることはよくわからなくても楽しめるときってありますよね。タモリが古地図のことを喋ってるときとか、ガンダム大好き芸人がある場面を再現してるところなどいい例だと思う。だから、噺家がホントに芝居が好きで、かつ演じ方がうまいと、ちゃんと引き込まれる仕掛けになってます。
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それはつまり、言ってることはよくわからなくても楽しめるときってありますよね。タモリが古地図のことを喋ってるときとか、ガンダム大好き芸人がある場面を再現してるところなどいい例で。そんなふうに、噺家がホントに芝居が好きで、かつ演じ方がうまいと、リズムやテンポでちゃんと引き込まれる仕掛けになっております。
  
性格が素直なだけのノンケの監督のポルノ映画が抜けないように、ハナシだけ暗記してカッコだけつけても面白く仕上がらないんですな。「ああ、勉強熱心でらっしゃるんですね」つっておわり。
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性格が素直なだけのノンケの監督のポルノ映画が抜けないように、ハナシだけ暗記してカッコだけつけても面白く仕上がらないんですな。「ああ、一生懸命よくぞネタをおぼえましたね。ハイ」つっておわり。
  
  
さて、わたしが初めてコレを聴いたときはお名前は忘れましたがテレビでどなたかのを拝見して、直球ストレートに「つまらない」と思い、これはもう、来てるこっち側に芝居知識の下地が無ければまったく楽しめないのだなと。とにかくキャラクターがナニを喋ってるのかとんと意味がわからない、と思って途中で見るのをやめてしまいました。
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さて、わたしが初めてコレを聴いたときはお名前は忘れましたがテレビでどなたかのを拝見して、直球ストレートに「つまらない」と思い、これはもう、こっち側に芝居知識の下地が無ければまったく楽しめないのだなと。とにかくキャラクターがナニを喋ってるのかとんと意味がわからない、と思って途中で見るのをやめてしまいました。
  
ところが、歌舞伎が趣味で歌舞伎座で働いてたこともあり、奥さんも歌舞伎役者の娘さんだという春風亭一朝さん(一瞬市川歌右衛門のマネをするが、それがよく似てたりする)のを聴いたら、前に見ててつまらないという先入観がありながら、すごく楽しめた。もっともわたしのほうも最初に聴いたときから1年ほど経っており、それまで現在に至るまで歌舞伎の仮名手本はさんざっぱら繰り返し見ているが。それにしても、である。in三田落語会
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ところが、歌舞伎が趣味で歌舞伎座で働いてたこともあり、奥さんも歌舞伎役者の娘さんだという春風亭一朝師匠(枕で一瞬市川歌右衛門のマネをしたが、よく似てたりする)のを聴いたら、前に見ててつまらないという先入観があるにもかかわらず、すごく楽しめた。もっともわたしのほうも最初に聴いたときから1年ほど経っており、それまで現在に至るまで歌舞伎の仮名手本はさんざっぱら繰り返し見ているが。それにしても、である。in三田落語会
  
その日の一朝師匠の登板は、盗撮をしてとっつかまった、おとうと弟子の春風亭正朝の代打だったが、スカートの中を撮られた女性には同情するものの、この番狂わせをココロから感謝いたしました。
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その日の一朝師匠の登板は、盗撮をしてとっつかまった、おとうと弟子の春風亭正朝の代打だったが、スカートの中を撮られた女性にはご同情申し上げるものの、この番狂わせをココロから感謝いたしました。
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噺家の師匠によって、小僧の定吉が二階へあがった際に、六段目の[[原惣右衛門|原郷右衛門]]と[[神崎与五郎|千崎弥五郎]]が訪ねてくる風に若旦那に声をかける場合と、若旦那が三段目の道行をやってるところへ定吉が[[鷺坂伴内]]になってやってくる場合とがある。(後者がオーソドックス?)
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ハードルが高いとはいうものの、コミカル要素は多いので、思っていたより高座で見かける回数が多い印象です。。
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== 七段目関連 ==
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<<おちゃるか>>
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「下界で流行ってる忠臣蔵という芝居を自分たちもやろう」という相談が神様の間でまとまって、地震と雷がそれぞれ由良之助とお軽をやることに。
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雷 「揺らしゃるか(由良さんかえ)」
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地震「そちゃ、落ちゃるじゃないか(そちゃお軽じゃないか)」
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お店の素人芝居に欠員が出たんで急遽、飯炊きの権助が駆り出されるハナシ。
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メインは「有職鎌倉山(ゆうしょくかまくらやま)」なのだが、山出しの権助が故郷では「村にいた時ゃお役者様だ。」と演劇の経験があるところを語るシーンで忠臣蔵が出てくる。
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『ちょうちんぶら』(<忠臣蔵を間違って覚えている)の七段目でお軽をやったそうで、どんどろ坂の茂左エ門(とか下新田の茂十)が由良之助役をやったと言う。
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茂左衛門は初舞台でのぼせてしまい「そこにいるのは権助でねえか」と言うので「おらは権助だけんども、そういうお前はどんどろ坂の茂左衛門でねえか」とやりとりし、うまくいかなかった。
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はしごはめんどくせえからケツをまくって飛び降りたと経験を語る。観客は「あんな活発なお軽は見たことがない。ケツにずいぶん毛が生えていたけど」と大騒ぎになった。
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由良之助とお軽のやりとりについては「そこさいるのはお軽でねえか」「そういうおみゃあは由良さんだんびゃあ〜」という、オリジナルをやるけど訛っているというほうが主流?。
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「そこさいるのは…そこさいるのは…」を繰り返す茂左衛門に腹を立てた権助が「誰だか当ててみろー」と言うと「(にっこり笑って)権助か!」と続くバージョンも有る。

2020年4月4日 (土) 20:03時点における版

七段目【しちだんめ】…(落語)

青海堂 落語忠臣蔵 グラビア


タイトルは歌舞伎の仮名手本忠臣蔵の七段目のこと。芝居キチガイの若旦那と小僧さんのおはなし。別名・役者息子。

お使いの帰りに寄り道をして芝居見物をしてきた若旦那が親父さんからけんつくを食うが、帰るなりいきなりガミガミやられたのがしゃくにさわったんで、返答を全部、芝居のセリフで返してたらケンカになる。番頭が仲裁に入って、若旦那は二階でまたぞろひとりで芝居のマネをやってるところへ同じく芝居好きの小僧さんが上がってくる。二人は仮名手本忠臣蔵の七段目ごっこをやろうということになる。


この噺は「四段目」よりもさらに、仮名手本忠臣蔵をよく知らないと楽しみが半減する。

「四段目」は芝居の再現をやりながら解説が付くが、こっちは平右衛門お軽のくだりをそのままやるからだ。ちなみに「四段目」はひとり芝居を演じるのだが、「七段目」は若旦那と小僧が演じてるところを演じなければならないハードルが噺家に課せられる。

芝居の再現をする後半はともかく、前半部についてはは噺家がうまいと楽しめると思います。

それはつまり、言ってることはよくわからなくても楽しめるときってありますよね。タモリが古地図のことを喋ってるときとか、ガンダム大好き芸人がある場面を再現してるところなどいい例で。そんなふうに、噺家がホントに芝居が好きで、かつ演じ方がうまいと、リズムやテンポでちゃんと引き込まれる仕掛けになっております。

性格が素直なだけのノンケの監督のポルノ映画が抜けないように、ハナシだけ暗記してカッコだけつけても面白く仕上がらないんですな。「ああ、一生懸命よくぞネタをおぼえましたね。ハイ」つっておわり。


さて、わたしが初めてコレを聴いたときはお名前は忘れましたがテレビでどなたかのを拝見して、直球ストレートに「つまらない」と思い、これはもう、こっち側に芝居知識の下地が無ければまったく楽しめないのだなと。とにかくキャラクターがナニを喋ってるのかとんと意味がわからない、と思って途中で見るのをやめてしまいました。

ところが、歌舞伎が趣味で歌舞伎座で働いてたこともあり、奥さんも歌舞伎役者の娘さんだという春風亭一朝師匠(枕で一瞬市川歌右衛門のマネをしたが、よく似てたりする)のを聴いたら、前に見ててつまらないという先入観があるにもかかわらず、すごく楽しめた。もっともわたしのほうも最初に聴いたときから1年ほど経っており、それまで現在に至るまで歌舞伎の仮名手本はさんざっぱら繰り返し見ているが。それにしても、である。in三田落語会

その日の一朝師匠の登板は、盗撮をしてとっつかまった、おとうと弟子の春風亭正朝の代打だったが、スカートの中を撮られた女性にはご同情申し上げるものの、この番狂わせをココロから感謝いたしました。


噺家の師匠によって、小僧の定吉が二階へあがった際に、六段目の原郷右衛門千崎弥五郎が訪ねてくる風に若旦那に声をかける場合と、若旦那が三段目の道行をやってるところへ定吉が鷺坂伴内になってやってくる場合とがある。(後者がオーソドックス?)


ハードルが高いとはいうものの、コミカル要素は多いので、思っていたより高座で見かける回数が多い印象です。。


七段目関連

<<おちゃるか>>

「下界で流行ってる忠臣蔵という芝居を自分たちもやろう」という相談が神様の間でまとまって、地震と雷がそれぞれ由良之助とお軽をやることに。

雷 「揺らしゃるか(由良さんかえ)」

地震「そちゃ、落ちゃるじゃないか(そちゃお軽じゃないか)」


<<権助芝居>>

お店の素人芝居に欠員が出たんで急遽、飯炊きの権助が駆り出されるハナシ。

メインは「有職鎌倉山(ゆうしょくかまくらやま)」なのだが、山出しの権助が故郷では「村にいた時ゃお役者様だ。」と演劇の経験があるところを語るシーンで忠臣蔵が出てくる。

『ちょうちんぶら』(<忠臣蔵を間違って覚えている)の七段目でお軽をやったそうで、どんどろ坂の茂左エ門(とか下新田の茂十)が由良之助役をやったと言う。

茂左衛門は初舞台でのぼせてしまい「そこにいるのは権助でねえか」と言うので「おらは権助だけんども、そういうお前はどんどろ坂の茂左衛門でねえか」とやりとりし、うまくいかなかった。

はしごはめんどくせえからケツをまくって飛び降りたと経験を語る。観客は「あんな活発なお軽は見たことがない。ケツにずいぶん毛が生えていたけど」と大騒ぎになった。


由良之助とお軽のやりとりについては「そこさいるのはお軽でねえか」「そういうおみゃあは由良さんだんびゃあ〜」という、オリジナルをやるけど訛っているというほうが主流?。

「そこさいるのは…そこさいるのは…」を繰り返す茂左衛門に腹を立てた権助が「誰だか当ててみろー」と言うと「(にっこり笑って)権助か!」と続くバージョンも有る。