元禄快挙 大忠臣蔵

作品概要
制作会社 横田商会
公開年度 1930年
内蔵助役 大河内伝次郎
評価 2ツ星


京都、二条のおもちゃ映画ミュージアムさんにおもちゃ映画(玩具映写機の販売のために劇場用映画の一部を切り売りしたもの)用のフィルムが残っており、あっちこっちからフィルムの断片を集めてなんとか5分位(2015年10月現在)になった本作が見られた。(所謂パテベビー短縮版)


高家筆頭の吉良上野介が品無く「播州赤穂の田吾作大名」などとめずらしい悪態をついている。

祇園遊興のシーンは手持ちカメラが妙なリアルを生んでいる。

討ち入りシーンに迫力があり、浪士と吉良用人が大勢いっぺんに入り乱れて見応えがある。

危機一髪のお義父さんを助けたのに怒られる安兵衛のシークエンスはこの時代ですでにある。(これ以前にもあったけか要確認)


大石内蔵助の大河内伝次郎が30歳と若いせいか、メイクが大胆で、クマというか酔ったツラというかゾンビというか、じゃっかん不気味w。(目の周囲をメイクする隈取(くまどり)化粧の「ぼかし紅」みたいなのは主流らしく、むかしの丹下左膳のスチルでもそういうかんじで、歌舞伎というより、京劇のそれに近いイメージ。)

数年前に牧野省三から「判官やってくれ」と言われたのにテキトーに反故にされた若い片岡千恵蔵が念願の浅野内匠頭をゲットし、はりきちゃってるかんじですごい形相で吉良を切りつけている。


5分じゃなんとも言えないが、それなりに重厚な印象を持った。

公開当時は数年前の大佛次郎の「赤穂浪士」の登場のせいか、真正面から描いた本作はその代わり映えしないところを冷評されたそうであります。


忠臣蔵のサイレント映画、最後の作品。初のトーキー忠臣蔵まで1年空き、その間には6本ほどスピン・オフが作られている。

その内の1本「赤穂浪士・快挙一番槍」は市川右太衛門主演の横川勘平のハナシで、「横川!貴様の命はもらったぞ!」と脅かされる横川が「犬になったか池渕東馬(<だれ?)!横川勘平首途の血祭りだ!」と勇ましくやりを構えて応戦する姿がやはりおもちゃ映画ミュージアムさんで53秒見られる。


(附言)…梶田章さん著「大河内傳次郎 人と作品・その魅力のすべて」(朝日ソノラマ)によると、榛葉禮一(検索すると榛葉明彦という名が出てくるが、同じ人?)なる人物がこの映画の「説明台本」を発掘し、内容をどっかに連載したあと、まとめて50部だけ刷ったという。こういうのは、どうやったら見られるのでしょう。