吉良ですが、なにか?

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作品概要
制作会社 アタリ・パフォーマンスほか
公開年度 2014年
内蔵助役 −−−
評価 4ツ星


吉良上野介とその家族を描く、松之大廊下事件の直後のハナシ。


三谷幸喜が伊東四朗の喜寿を祝って書き下ろしたもので、大掛かりなセットや展開などはない一幕物。

とかく吉良は悪漢か名君かいろいろ言われるが、この芝居によってついにその実像(?)が、家族や世間とのやりとりによって浮かび上がる!?

「俺が一体なにをしたと言うんだ!」と、これくらいのセリフはどの忠臣蔵でも聞ける。しかし吉良の身内がやがて「お父さんに問題があったのかもね!」と内匠頭に同情を向け、観客がそれにうなずける流れを作っているドラマはちかごろ珍しい。


ファンにとっては三谷さんと吉良について1時間半オハナシをさせてもらったような気持ちよさ。


パンフの中で出演者が「三谷さんは忠臣蔵をよく勉強された」と予測したコメントをしているが、おさらい的なことはしても勉強はしてないのでわと思う。それはファンには臭う「そこはそこまでそうこだわらなくてもいいだろう」的な「そもそも好きじゃなきゃ、このセリフは出てこない」と思われるセリフやワードが随所にあるから。

以前から公言していらしゃったが、やはり三谷先生は「忠臣蔵はお好きなのだな」と思いました。(違ってたらすいません)


三谷節で歌いあげられる「その時」の「あの人達」のありさまは映画の「清須会議」に出てきた連中にも通じるところがあって…そうそう!「戦国時代」というでっかいククリの中の清須会議だけピックアップしたあの調子で「忠臣蔵」もやってくれたらいいのにと妬ましくあの映画を見ていたので、ちょっぴり夢がかなった感じ。

いつか元禄時代を舞台に豪勢なお膳立てでフルコースやってほしい。(※01)


流れに沿って、カメラワークのように鑑賞者の目が出演者にスイッチングされるのを上手に予測して演出された舞台演出はテンポもいいし、睡眠時間1時間の激務のあとで出かけたのにちっともウトウトしなかった。

パンフレットの中で演出のラサール石井氏はそこんところは苦慮されたとコメントしている。


あたしは笑いどおしだったが、忠臣蔵に興味がなかったのか虫の居所が悪かったのか、後ろの席のおばさんが見終わったあと、しょっぱい感想を言ってたので、「ああ、みんなが楽しめるというパッケージはなかったのかな」とフワついて星4つ。


補足

公開当時のチラシ

本作ははじめ、炭小屋と逃げ道の通路が舞台のものがたりだったのが、すでに井上ひさしが似た設定でやってることを知ったのと、一人狩装束の伊東四朗を現代の格好の出演陣が取り囲むパーティの様子が描かれたチラシのイメージ画像を見て三谷幸喜はなにごとか思いつき、すっかり内容を変えてしまったという。

瀬戸カトリーヌは元禄時代の女中>ナース>吉良の次女あぐり…と、役柄が変わっていった。

一番割りを食ったとぼやくのはラサール石井で、はじめは大石内蔵助役だったのが、医者になった。

「あのカッコしたいですもんねえ」

ともかく、急に思い立ったわりに完成脚本が稽古に間に合ったのがすごいと出演陣みんな感嘆。(以上カーテンコールのフリートークにて)


※01

2014年秋に公開してヒットした「清須会議」についてのインタビュー(シネマトゥデイ)で三谷幸喜は、忠臣蔵はいろんな切り口があると語っていらっしゃる。

2015年1月に放送された「フジテレビ開局55周年特別企画 オリエント急行殺人事件」において、三谷氏はお家断絶。散り散りになる仲間。仇討ちのための集合。殺人計画の暗躍。「いつになったら実行するのよ!」あげくに「討ち入り前の血判状」というセリフまで飛び出し、忠臣蔵度を高く描いた。

今後のアプローチから目が離せません。