「忠臣蔵・OL篇/武士篇」の版間の差分

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{{Cinema|制作=劇団青年団|公開=2015|内蔵助=森内美由紀|星=3|頃=}}
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{{Cinema|制作=劇団青年団|公開=2015|内蔵助=森内美由紀|星=3|頃=}}[[画像:ol_hen.jpg|thumb|2022年再演版のチラシ]]
  
平田オリザ脚本。
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平田オリザ脚本。演出<small>(註01)</small>
  
 
ディスカッションドラマ(討論劇)。
 
ディスカッションドラマ(討論劇)。
  
本作は忠臣蔵でおなじみの大評定=「籠城だ」「切腹だ」で揉め、最終的に討ち入りに落ち着いていくハナシ。鑑賞したのは2015年だが元になってる脚本は1999年に書かれたそうで「OL篇」はアメリカでツアーまで行ってる人気作品。
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本作は忠臣蔵でおなじみの大評定=「籠城だ」「切腹だ」で揉め、最終的に討ち入りに落ち着いていくハナシ。最初に鑑賞したのは2015年(こまばアゴラ劇場)だが、元になってる脚本は1999年に書かれたそうで、「OL篇」はアメリカでツアーまで行ってる人気作品。
  
本サイトではタイトルを「OL篇/武士篇」と並べて表記してはいるが、正続ではない別のお芝居。
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本サイトではタイトルを「OL篇/武士篇」と並べて表記してはいるが、正続ではなく、同じ内容の別のお芝居。
  
上演時間約60分。
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上演時間・約60分。(ご覧になる方は、上演開始ギリギリに入ると、演出上、いろいろソンをすることでしょう)
  
  
 
刃傷事件勃発時の大評定が、現代のどっかの会社のOLにふりかかったアクシデントかのように表現される「OL篇」。(舞台は社員食堂の一幕)
 
刃傷事件勃発時の大評定が、現代のどっかの会社のOLにふりかかったアクシデントかのように表現される「OL篇」。(舞台は社員食堂の一幕)
  
ほとんど同じスクリプトで男の武士にキャスティングしなおしての「武士篇」(別々の日に鑑賞)。武士篇だからと言ってあらためて当時の赤穂城の評定を再現しなおそうとか、そういうものではない。あくまで「OL篇」のキャストを武士に変えたバージョン(だから登場人物の名も田中さん、佐藤さん…。)
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ほとんど同じスクリプトで男の武士にキャスティングしなおしての「武士篇」(別々の日に鑑賞)。武士篇だからと言って、あらためて当時の赤穂城の評定を再現しなおそうとか、そういうものではない。あくまで「OL篇」のキャストを武士に変えたバージョン(だから登場人物の名も田中さん、佐藤さん…。)
  
セリフの聞こえ方がキャスティングや状況によって変わってくる愉快な実験劇の様相が楽しい。
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セリフの聞こえ方が、設定やジェンダーや状況によって変わってくる愉快な実験劇の様相が楽しい。
  
  
「OL篇」は浅野家の家紋をあしらった陣幕のはられた社員食堂で早駕籠が凶報を知らせに来たところからストーリーは始まり、スーツ姿や制服姿の7人のOLがかしましく揉める。台詞のやりとりが小気味良く、役者さん全員が魅力的。そこで大評定なんだから異様である。
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「OL篇」は浅野家の家紋をあしらった陣幕のはられた社員食堂で、早駕籠が凶報を知らせに来たところからストーリーは始まり、スーツ姿や制服姿の7人のOLがかしましく揉める。台詞のやりとりが小気味良く、役者さん全員が魅力的。そこで大評定なんだから異様である。
  
  
「くすや」が忠臣蔵に偏らない芝居のレビューサイトだったら星の数はもっと多い。
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「くすや」が、忠臣蔵に偏らない芝居のレビューサイトだったら星の数はもっと多い。
  
この討論劇は、登場人物の「プライド」や「意気地」といった価値観や、主君への「大恩」や「愛」から盲目的になる武士の感情など、狂信的な武士のありさま(=討論の邪魔)がスクリプトや演出から取り去られているところが特徴。「恥辱をはらす」とか「二君に仕えず」とかセリフ自体は出てくるのだがいたってロジカルに処理され、OL=武士たちが「かっこ良く生きたい(または死にたい)」と渇望する思いはとくに客席にアプローチされないで、理詰めで評定は進む(やりとりの上での感情の起伏とかは、ある)。
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この討論劇は、登場人物の「プライド」や「意気地」といった価値観や、主君への「大恩」や「愛」から盲目的になる武士の感情など、狂信的な武士のありさま(=討論の邪魔)がスクリプトや演出から取り去られているところが特徴。「恥辱をはらす」とか「二君に仕えず」とか、コトバは出てきてもセリフ要素に過ぎず、OL=武士たちが「かっこ良く生きたい(または死にたい)」と渇望する思いはとくに客席にアプローチされないで、理詰めで評定は進む(やりとりの上での感情の起伏とかは、ある)。
  
もっと具体的に言うと、忠臣蔵ファンにとっては明らかに議論の進行上必要と思われるワードや考え方がスルーされる瞬間、いちいちひっかかるのだ。「そこはもっと膨らまそうよ!」「いやそこ、スルーしないでよ!」といった感じでw。これが5〜10分に1回シャックリのようにひっかかる。
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もっと具体的に言うと、忠臣蔵ファンにとっては明らかに議論の進行上必要と思われるワードや考え方がスルーされる瞬間、いちいちひっかかるのだ。「そこはもっと膨らまそうよ!」「いやそこ、スルーしないでよ!」といった感じでw。これが5〜10分に1回シャックリのようにひっかかる。<small>(註02)</small>
  
 
舞台の設定自体が倒産の憂き目にあった現代社会に置き換えてるわけではなく、彼女たちは「切腹だ」「仕官だ」「幕府」だと普通に'''浅野家の家来として議論する'''ので、こっちはナニ目線でついていったらいいのかも、いささかまごつく。
 
舞台の設定自体が倒産の憂き目にあった現代社会に置き換えてるわけではなく、彼女たちは「切腹だ」「仕官だ」「幕府」だと普通に'''浅野家の家来として議論する'''ので、こっちはナニ目線でついていったらいいのかも、いささかまごつく。
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さて「武士篇」はOLと同じテンションなのに見かけが武士っぽくなってることがハンデになり(?)「OLとサムライというちぐはぐなおかしみ」が無くなったぶん、挽回しようとしたのか、討ち入りを主張するときに「討ち入るの!」と言ってニコ!っとピースサインを出してみるとか、「犬死に」というワードが入る台詞の語尾に「ワンワン」とつけてわざわざふざけてみせたり、急に不要なところで大声を張り上げてバナナを投げたりとか、意味のないオーパーツとか'''わざとらしい'''そういうアレコレが内容を迷走させたように思う。そうして星がもうひとつ減る。
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さて「武士篇」はOLと同じテンションなのに、見かけが武士っぽくなってることがハンデになり(?)「OLとサムライというちぐはぐなおかしみ」が無くなったぶん、挽回しようとしたのか、討ち入りを主張するときに「討ち入るの!」と言ってニコ!っとピースサインを出してみるとか、「犬死に」というワードが入る台詞の語尾に「ワンワン」とつけてわざわざふざけてみせたり、急に不要なところで大声を張り上げてバナナを投げたりとか、意味のないオーパーツとか'''わざとらしい'''そういうアレコレが内容を迷走させたように思う。そうして星がもうひとつ減る。(「OL篇」でも、内容と無関係に意味もなくナルトをほっぺたにくっつけたり、取って付けたようなギャグ風のものが、わたしにはいちいちハマらない。全体が面白いのだから無理にふざけなくてもいいのに、と思う。)
  
見終わったあとうしろの席のおじさんが奥さんらしき人に「なんでタバコ吸ったりピアスしたりさあ。アレがよくわかんねえんだよなあ」と、もっともなことを言ってたので「どうして武士篇作ったのに、オリジナルじゃなくOL篇の方に寄せてるのか」とオリザさんご本人にうかがったら「デフォルトにOL篇がある。それを10年やってたし、自衛隊篇とか(「戦わないんだから俺たち」みたいなセリフがあったとか)、修学旅行篇とかやった(「フトン並べてやってみたが、あんまり成功しなかったw」)んだけど、ひとまわりして武士篇になった」のだそうで、忠臣蔵ありきというよりOL篇ありきなので、ンじゃしょうがないと思った。
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見終わったあと、うしろの席のおじさんが隣の奥さんらしき人に「な〜んでタバコ吸ったりピアスしたりさあ。アレがよくわかんねえんだよなあ」と、もっともなことを言ってたので「どうして武士篇作ったのに、オリジナルじゃなくOL篇の方に寄せてるのか」とオリザさんご本人にうかがったら「デフォルトにOL篇がある。それを10年やってたし、自衛隊篇とか(「戦わないんだから俺たち」みたいなセリフがあったとか(<加筆:2015年の明星大学での公演では、そういうオリザ先生のご説明だったが、あらためて2022年に板橋のアトリエ春風舎で「OL篇」観たら、その台詞はOL篇にもあったが、あとから入った台詞だろうか。))、修学旅行篇とかやった(「フトン並べてやってみたが、あんまり成功しなかったw」)んだけど、ひとまわりして武士篇になった」のだそうで、忠臣蔵ありきというよりOL篇ありきなので、ンじゃしょうがないと思った。(附言:「忠臣蔵・キャンパス編」が2021年11月、オリザ先生が学長を務める、芸術文化観光専門職大学で、CATパフォーミングアーツプロジェクト第1回公演として上演。)<small>(註03)</small>
  
  
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以上の理由から、初見からまる2年ほど星2つをつけさせていただいてたのだが、あとから思い出すとOL篇だけはどうしても「もう一度見たいな」と、何度もおもしろく思い起こされるので、'''「武士篇」を無かったこととして'''星3つに変更しました。
 
以上の理由から、初見からまる2年ほど星2つをつけさせていただいてたのだが、あとから思い出すとOL篇だけはどうしても「もう一度見たいな」と、何度もおもしろく思い起こされるので、'''「武士篇」を無かったこととして'''星3つに変更しました。
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註01…オリザ先生のお家はもともと赤穂で薬種商を営み、おじいさまの内蔵吉さんや、おとうさまの穂生さんのお名前は、赤穂ゆかりのものである(神戸新聞2020/8/1)。
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2020年、赤穂のまちづくりの政策アドバイザーに就任。また、2021年開学の[[大石りく|豊岡]]の国際観光芸術専門職大学の学長でもある。
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註02…籠城か、討ち入りか、全員切腹かで揉める際に、どれもやったことがないのでみんなで利点やリスクを話し合うのだが、その際、「以前に備中松山城の城請け取りの経験がある」というメンバーがいることを、冒頭で言及しているのに、討論中、一切蒸し返さないのが歯がゆい。おおいに参考にすべきでは?
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もっと言うと、討ち入りや再仕官の話をしているときだって、浄瑠璃坂の仇討ちや高田馬場の決闘も、前例のケースとして持ち出してもいいだろうに、そういうのも無い。討ち入りの難易度を語る上で、吉良邸のある江戸城城郭内・呉服橋のロケーションのハナシをしたっていいはずだ。成功率の低い討ち入りと籠城とからめて「犬死に」の是非も問えそう。
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とはいえ情報過多になると、いたずらに雰囲気を複雑にする危険もあるかもだが、経験則やデータが入ってきたら、討論はもっと…。いや、こんがらがるかな。(<ちな、後述の「キャンパス編」では、じゃっかん松山城に関して蒸し返して参考にしている。あと、脚本を読み返したら、安兵衛の仕官はヒトコト台詞にあったみたい。観劇中、聞き漏らしました(クラッカーをパンパンやってたから?)。すいません)
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註03…「キャンパス編」は、方言によって鶴チームと鷹チームと、2種類のお芝居があって、広島、北海道、和歌山、北諸弁の鶴チームの台本を売っていただいたが、あらためて読んで思ったのが、OLや侍、自衛隊のように、「宮仕え」のキャラじゃないと、二君に仕えるとか切腹とかって、成り立ちにくい(鑑賞者が入り込みにくい)のではないかと、思った。
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やっぱ「OL」って、絶妙なメタファーなんですよね。武士だとリンクしすぎてどうしても歴史や講談と比較しちゃうし、学生系だと、お家取り潰しの緊張感が無いし。

2022年5月20日 (金) 13:26時点における最新版

作品概要
制作会社 劇団青年団
公開年度 2015年
内蔵助役 森内美由紀
評価 3ツ星
2022年再演版のチラシ


平田オリザ脚本。演出(註01)

ディスカッションドラマ(討論劇)。

本作は忠臣蔵でおなじみの大評定=「籠城だ」「切腹だ」で揉め、最終的に討ち入りに落ち着いていくハナシ。最初に鑑賞したのは2015年(こまばアゴラ劇場)だが、元になってる脚本は1999年に書かれたそうで、「OL篇」はアメリカでツアーまで行ってる人気作品。

本サイトではタイトルを「OL篇/武士篇」と並べて表記してはいるが、正続ではなく、同じ内容の別のお芝居。

上演時間・約60分。(ご覧になる方は、上演開始ギリギリに入ると、演出上、いろいろソンをすることでしょう)


刃傷事件勃発時の大評定が、現代のどっかの会社のOLにふりかかったアクシデントかのように表現される「OL篇」。(舞台は社員食堂の一幕)

ほとんど同じスクリプトで男の武士にキャスティングしなおしての「武士篇」(別々の日に鑑賞)。武士篇だからと言って、あらためて当時の赤穂城の評定を再現しなおそうとか、そういうものではない。あくまで「OL篇」のキャストを武士に変えたバージョン(だから登場人物の名も田中さん、佐藤さん…。)

セリフの聞こえ方が、設定やジェンダーや状況によって変わってくる愉快な実験劇の様相が楽しい。


「OL篇」は浅野家の家紋をあしらった陣幕のはられた社員食堂で、早駕籠が凶報を知らせに来たところからストーリーは始まり、スーツ姿や制服姿の7人のOLがかしましく揉める。台詞のやりとりが小気味良く、役者さん全員が魅力的。そこで大評定なんだから異様である。


「くすや」が、忠臣蔵に偏らない芝居のレビューサイトだったら星の数はもっと多い。

この討論劇は、登場人物の「プライド」や「意気地」といった価値観や、主君への「大恩」や「愛」から盲目的になる武士の感情など、狂信的な武士のありさま(=討論の邪魔)がスクリプトや演出から取り去られているところが特徴。「恥辱をはらす」とか「二君に仕えず」とか、コトバは出てきてもセリフ要素に過ぎず、OL=武士たちが「かっこ良く生きたい(または死にたい)」と渇望する思いはとくに客席にアプローチされないで、理詰めで評定は進む(やりとりの上での感情の起伏とかは、ある)。

もっと具体的に言うと、忠臣蔵ファンにとっては明らかに議論の進行上必要と思われるワードや考え方がスルーされる瞬間、いちいちひっかかるのだ。「そこはもっと膨らまそうよ!」「いやそこ、スルーしないでよ!」といった感じでw。これが5〜10分に1回シャックリのようにひっかかる。(註02)

舞台の設定自体が倒産の憂き目にあった現代社会に置き換えてるわけではなく、彼女たちは「切腹だ」「仕官だ」「幕府」だと普通に浅野家の家来として議論するので、こっちはナニ目線でついていったらいいのかも、いささかまごつく。

だが、帰りの井の頭線で「オリザ目線」なんだな。と思って納得する。オリザ氏は「ヤルタ会談」(<未見だが討論劇というよりは純粋なコメディだそうです)「御前会議」という会議シリーズも作っておられ、史実の検証ではなく、会議の妙をお芝居にしている。

この、モヤモヤが晴れるまでに星の数が溶けていったw。


忠臣蔵ノンケの人が見ると、最終的に「討ち入り」にまとまっていくサマを見て「反対意見だった人までも同調圧力によってひとつの結論に流れていく怖さ」と感想を持つ場合もあるようだが、オリザ氏は裏テーマとかそんなことじゃなくて、価値観が擦り合わされていく「ダイアローグ(対話)」そのものを面白がり、表現している。

ちなみに忠臣蔵ファンには「さっき反対意見言ってたあいつは、きっと脱盟するな」と想像できるので「同調圧力の怖さ」なんていうものは感じない。


さて「武士篇」はOLと同じテンションなのに、見かけが武士っぽくなってることがハンデになり(?)「OLとサムライというちぐはぐなおかしみ」が無くなったぶん、挽回しようとしたのか、討ち入りを主張するときに「討ち入るの!」と言ってニコ!っとピースサインを出してみるとか、「犬死に」というワードが入る台詞の語尾に「ワンワン」とつけてわざわざふざけてみせたり、急に不要なところで大声を張り上げてバナナを投げたりとか、意味のないオーパーツとかわざとらしいそういうアレコレが内容を迷走させたように思う。そうして星がもうひとつ減る。(「OL篇」でも、内容と無関係に意味もなくナルトをほっぺたにくっつけたり、取って付けたようなギャグ風のものが、わたしにはいちいちハマらない。全体が面白いのだから無理にふざけなくてもいいのに、と思う。)

見終わったあと、うしろの席のおじさんが隣の奥さんらしき人に「な〜んでタバコ吸ったりピアスしたりさあ。アレがよくわかんねえんだよなあ」と、もっともなことを言ってたので「どうして武士篇作ったのに、オリジナルじゃなくOL篇の方に寄せてるのか」とオリザさんご本人にうかがったら「デフォルトにOL篇がある。それを10年やってたし、自衛隊篇とか(「戦わないんだから俺たち」みたいなセリフがあったとか(<加筆:2015年の明星大学での公演では、そういうオリザ先生のご説明だったが、あらためて2022年に板橋のアトリエ春風舎で「OL篇」観たら、その台詞はOL篇にもあったが、あとから入った台詞だろうか。))、修学旅行篇とかやった(「フトン並べてやってみたが、あんまり成功しなかったw」)んだけど、ひとまわりして武士篇になった」のだそうで、忠臣蔵ありきというよりOL篇ありきなので、ンじゃしょうがないと思った。(附言:「忠臣蔵・キャンパス編」が2021年11月、オリザ先生が学長を務める、芸術文化観光専門職大学で、CATパフォーミングアーツプロジェクト第1回公演として上演。)(註03)


<加筆>

以上の理由から、初見からまる2年ほど星2つをつけさせていただいてたのだが、あとから思い出すとOL篇だけはどうしても「もう一度見たいな」と、何度もおもしろく思い起こされるので、「武士篇」を無かったこととして星3つに変更しました。




註01…オリザ先生のお家はもともと赤穂で薬種商を営み、おじいさまの内蔵吉さんや、おとうさまの穂生さんのお名前は、赤穂ゆかりのものである(神戸新聞2020/8/1)。

2020年、赤穂のまちづくりの政策アドバイザーに就任。また、2021年開学の豊岡の国際観光芸術専門職大学の学長でもある。


註02…籠城か、討ち入りか、全員切腹かで揉める際に、どれもやったことがないのでみんなで利点やリスクを話し合うのだが、その際、「以前に備中松山城の城請け取りの経験がある」というメンバーがいることを、冒頭で言及しているのに、討論中、一切蒸し返さないのが歯がゆい。おおいに参考にすべきでは?

もっと言うと、討ち入りや再仕官の話をしているときだって、浄瑠璃坂の仇討ちや高田馬場の決闘も、前例のケースとして持ち出してもいいだろうに、そういうのも無い。討ち入りの難易度を語る上で、吉良邸のある江戸城城郭内・呉服橋のロケーションのハナシをしたっていいはずだ。成功率の低い討ち入りと籠城とからめて「犬死に」の是非も問えそう。

とはいえ情報過多になると、いたずらに雰囲気を複雑にする危険もあるかもだが、経験則やデータが入ってきたら、討論はもっと…。いや、こんがらがるかな。(<ちな、後述の「キャンパス編」では、じゃっかん松山城に関して蒸し返して参考にしている。あと、脚本を読み返したら、安兵衛の仕官はヒトコト台詞にあったみたい。観劇中、聞き漏らしました(クラッカーをパンパンやってたから?)。すいません)


註03…「キャンパス編」は、方言によって鶴チームと鷹チームと、2種類のお芝居があって、広島、北海道、和歌山、北諸弁の鶴チームの台本を売っていただいたが、あらためて読んで思ったのが、OLや侍、自衛隊のように、「宮仕え」のキャラじゃないと、二君に仕えるとか切腹とかって、成り立ちにくい(鑑賞者が入り込みにくい)のではないかと、思った。

やっぱ「OL」って、絶妙なメタファーなんですよね。武士だとリンクしすぎてどうしても歴史や講談と比較しちゃうし、学生系だと、お家取り潰しの緊張感が無いし。