忠臣蔵・OL篇/武士篇

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2015年11月11日 (水) 13:18時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版

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作品概要
制作会社 劇団青年団
公開年度 2015年
内蔵助役 森内美由紀
評価 2ツ星


平田オリザ脚本。

ディスカッションドラマ(討論劇)。

本作は忠臣蔵でおなじみの大評定=「籠城だ」「切腹だ」で揉め、最終的に討ち入りに落ち着いていくハナシ。鑑賞したのは2015年だが元になってる脚本は1999年に書かれたそうで「OL篇」はアメリカでツアーまで行ってる人気作品。

タイトルは「OL篇/武士篇」並べて表示してはいるが、正続ではない別のお芝居。

上演時間約60分。


刃傷事件勃発時の大評定が、現代のどっかの会社の社員食堂のOLにふりかかったアクシデントのように表現される「OL篇」。

ほとんど同じスクリプトで男の武士にキャスティングしなおしての「武士篇」。武士篇だからと言ってあらためて当時の赤穂城の評定を再現しなおそうとか、そういうものではない。あくまで「OL篇」のキャストを武士に変えたバージョン(だから登場人物も田中さん、佐藤さん…。)

セリフの聞こえ方がキャスティングや状況によって変わってくる愉快な実験劇の様相が楽しい。


「OL篇」は浅野家の家紋をあしらった陣幕のはられた社員食堂で早駕籠が凶報を知らせに来たところからストーリーは始まり、スーツ姿や制服姿の7人のOLがかしましく揉める。台詞のやりとりが小気味良く、役者さん全員が魅力的。そこで大評定なんだから異様である。


「くすや」が忠臣蔵に偏らない芝居のレビューサイトだったら星の数はもっと多い。

この討論劇の特徴は、登場人物の「プライド」や「意気地」といった価値観や、主君への「大恩」や「愛」から盲目的になる武士の感情など、狂信的な武士のありさま(=討論の邪魔)がスクリプトや演出から取り去られているところ。「恥辱をはらす」とか「二君に仕えず」とかセリフ自体は出てくるのだがいたってロジカルに処理され、OL=武士たちが「かっこ良く生きたい(または死にたい)」と渇望する思いはとくに客席にアプローチされないで、理詰めで評定は進む(討論上の激昂とかは、ある)。

もっと具体的に言うと、忠臣蔵ファンにとっては明らかに議論の進行上必要と思われるワードや考え方がスルーされる瞬間、いちいちひっかかるのだ。「そこはもっと膨らまそうよ!」「いやそこ、スルーしないでよ!」といった感じでw。これが5〜10分に1回シャックリのようにひっかかる。

舞台の設定自体が倒産の憂き目にあった現代社会に置き換えてるわけではなく、彼女たちは「浅野家」だ「切腹だ」「仕官だ」「幕府」だと普通に武士的に議論するので、こっちはナニ目線でついていったらいいのか、いささかまごつく。

だが、帰りの井の頭線で「オリザ目線」なんだな。と思って納得する。オリザ氏は「ヤルタ会談」「御前会議」という会議シリーズも作っておられ、史実の検証ではなく、会議の妙をお芝居にしている。

この、モヤモヤが晴れるまでに星の数が溶けていったw。


さて「武士篇」はOLと同じテンションなのに見かけが武士なぶんハンデがあり(?)「見かけのちぐはぐなおかしみ」が無くなったぶん、挽回しようとしたのか、討ち入りを主張するときに「討ち入り!」と言ってニコ!っとピースサインを出してみるとか、「犬死に」というワードが入る台詞のあとに「ワンワン」とつけてわざわざふざけてみせたり、急に不要なところで大声を張り上げてバナナを投げたりとか、意味のないオーパーツとかそういうのが討論を迷走させたように思う。そうして星がもうひとつ減る。

一緒に見たY売新聞のSさん(忠臣蔵ノンケ)が「シュールで面白かった」と言ってたから良かったのかな。(しゅーる・・・だったかなぁ?)

これが今回だけなのかオーソドックスなのかをオリザさんが居るところで上演される会で確認することにする。