「忠臣蔵 地の巻/天の巻」の版間の差分

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{{Cinema|制作=日活|公開=1938|内蔵助=阪東妻三郎|星=3|頃=}}
 
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[[画像:Yasui.jpg|thumb|役者絵:志村 喬]]
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[[画像:Chie tono2.jpg|thumb|役者絵:片岡千恵蔵]][[画像:Yasui2016.jpg|thumb|役者絵:志村 喬]]
 
30歳代の知恵蔵は台詞が明瞭(早口だけど)。
 
30歳代の知恵蔵は台詞が明瞭(早口だけど)。
  
かなりスタンダード。衣装のデザイン(柄など)が知る中では最もPOP。
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かなりスタンダード。
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公開当時、空前の大当たりを取った作品。<small>(昭和33年「アサヒ芸能」NO.614)</small>
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衣装のデザイン(柄など)が知る中では最もPOP。
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(古いスチルとか見ると、昔の作品になるに従って衣装のデザインが凝ってる。「[[忠魂義烈 実録忠臣蔵|実録忠臣蔵]]」もそうとうPOP。)
  
(古いスチルとか見ると、昔の作品になるに従って衣装のデザインが凝ってる)
 
  
 
エピソードtoエピソードというテンポで、サクサク話が進む。あんまりサクサクしてるので吉良が浅野をいじめようと思うきっかけが浅薄で、進物が気に入らなかったわりにはイジメの度合いが徹底的で、そこまでするか?これじゃあ吉良さん少し頭がおかしいだろ!?というぐらい悪人になってる。また、吉良をやってる役者の山本嘉一(セリフに句読点が多い)という人が知る限りでもっとも憎々しげなお顔立ちなのでステロタイプここに極まれり。
 
エピソードtoエピソードというテンポで、サクサク話が進む。あんまりサクサクしてるので吉良が浅野をいじめようと思うきっかけが浅薄で、進物が気に入らなかったわりにはイジメの度合いが徹底的で、そこまでするか?これじゃあ吉良さん少し頭がおかしいだろ!?というぐらい悪人になってる。また、吉良をやってる役者の山本嘉一(セリフに句読点が多い)という人が知る限りでもっとも憎々しげなお顔立ちなのでステロタイプここに極まれり。
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古い作品なので音声の悪さと侍言葉が相まって、初めてみた時はなにをしゃべってるのかよくわかんなかった。何十本も忠臣蔵見て各エピソードが頭に入ってから見直したら、この作品が実はひじょうに丁寧でよくできていて、バンツマのキャスティングに象徴されるように全体がスマートでコンパクトだということがわかったが、ビギナーには難儀かもしれません。
 
古い作品なので音声の悪さと侍言葉が相まって、初めてみた時はなにをしゃべってるのかよくわかんなかった。何十本も忠臣蔵見て各エピソードが頭に入ってから見直したら、この作品が実はひじょうに丁寧でよくできていて、バンツマのキャスティングに象徴されるように全体がスマートでコンパクトだということがわかったが、ビギナーには難儀かもしれません。
  
大評定のシーンで、すげえ悪役な声が会場に響いてるんで[[大野九郎兵衛]]が進行役やってるのかと思ったらバンツマ演じる内蔵助の声だった(笑)。
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大評定のシーンで、すげえ悪役な声が会場に響いてるんで[[大野九郎兵衛]]が進行役やってるのかと思ったらバンツマ演じる内蔵助のダミ声だった(笑)。
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全体の尺に比べて「大石東下り」がたっぷりしている。内匠頭と二役の知恵蔵演じる[[立花左近]]と内蔵助との面会を目玉にしているのもあるが、BGMの長唄「勧進帳」の歌詞をすっかり聴かせるためにわざわざタメてるのが印象的。
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 戦争をまたいで、20年後くらいに映画の全盛期になり、日活も石原裕次郎や赤木圭一郎など、大スターを抱えて東映と人気争いでしのぎを削るが、各社が作った「オールスター出演映画」は日活は制作しておらず、ましてや現代劇専門?(いやいや「幕末太陽傳」という大傑作があるしなあ)だったのもあって、忠臣蔵もその頃に作られていない。
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 合併前から数えれば、長い歴史を持つ日活が、&戦前まではたくさん忠臣蔵をリリースしてきた日活が、敢えて新時代の発展を意識するように、忠臣蔵を撮らないことで過去との決別を計ったのかもしれない。(という、勝手な深読み)
  
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 忠臣蔵映画製作は、「作り得る撮影所が立派に大人として成長した会社だという証拠」(マキノ省三監督の言葉だったと思うby南部僑一郎「別冊近代映画 昭和34年2月号」)とすると、日活はじゅうぶんに成熟していたといえるし、その後、70年代という微妙なときに「戦争と人間」三部作とか作ってる元気もあるから、やはり'''敢えて'''忠臣蔵に手を出さなかったのかなと。(という、勝手な深読み)
  
全体の尺に比べて「大石東下り」がたっぷりしている。内匠頭と二役の知恵蔵演じる[[立花左近]]と内蔵助との面会を目玉にしてるのもあるが、BGMの長唄「勧進帳」の歌詞をすっかり聴かせるためにわざわざタメてるのが印象的。
 
  
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[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1938]]
 
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1938]]

2021年1月22日 (金) 17:59時点における版

作品概要
制作会社 日活
公開年度 1938年
内蔵助役 阪東妻三郎
評価 3ツ星
役者絵:片岡千恵蔵
役者絵:志村 喬

30歳代の知恵蔵は台詞が明瞭(早口だけど)。

かなりスタンダード。

公開当時、空前の大当たりを取った作品。(昭和33年「アサヒ芸能」NO.614)


衣装のデザイン(柄など)が知る中では最もPOP。

(古いスチルとか見ると、昔の作品になるに従って衣装のデザインが凝ってる。「実録忠臣蔵」もそうとうPOP。)


エピソードtoエピソードというテンポで、サクサク話が進む。あんまりサクサクしてるので吉良が浅野をいじめようと思うきっかけが浅薄で、進物が気に入らなかったわりにはイジメの度合いが徹底的で、そこまでするか?これじゃあ吉良さん少し頭がおかしいだろ!?というぐらい悪人になってる。また、吉良をやってる役者の山本嘉一(セリフに句読点が多い)という人が知る限りでもっとも憎々しげなお顔立ちなのでステロタイプここに極まれり。


古い作品なので音声の悪さと侍言葉が相まって、初めてみた時はなにをしゃべってるのかよくわかんなかった。何十本も忠臣蔵見て各エピソードが頭に入ってから見直したら、この作品が実はひじょうに丁寧でよくできていて、バンツマのキャスティングに象徴されるように全体がスマートでコンパクトだということがわかったが、ビギナーには難儀かもしれません。

大評定のシーンで、すげえ悪役な声が会場に響いてるんで大野九郎兵衛が進行役やってるのかと思ったらバンツマ演じる内蔵助のダミ声だった(笑)。


全体の尺に比べて「大石東下り」がたっぷりしている。内匠頭と二役の知恵蔵演じる立花左近と内蔵助との面会を目玉にしているのもあるが、BGMの長唄「勧進帳」の歌詞をすっかり聴かせるためにわざわざタメてるのが印象的。


<附言>

 戦争をまたいで、20年後くらいに映画の全盛期になり、日活も石原裕次郎や赤木圭一郎など、大スターを抱えて東映と人気争いでしのぎを削るが、各社が作った「オールスター出演映画」は日活は制作しておらず、ましてや現代劇専門?(いやいや「幕末太陽傳」という大傑作があるしなあ)だったのもあって、忠臣蔵もその頃に作られていない。

 合併前から数えれば、長い歴史を持つ日活が、&戦前まではたくさん忠臣蔵をリリースしてきた日活が、敢えて新時代の発展を意識するように、忠臣蔵を撮らないことで過去との決別を計ったのかもしれない。(という、勝手な深読み)

 忠臣蔵映画製作は、「作り得る撮影所が立派に大人として成長した会社だという証拠」(マキノ省三監督の言葉だったと思うby南部僑一郎「別冊近代映画 昭和34年2月号」)とすると、日活はじゅうぶんに成熟していたといえるし、その後、70年代という微妙なときに「戦争と人間」三部作とか作ってる元気もあるから、やはり敢えて忠臣蔵に手を出さなかったのかなと。(という、勝手な深読み)