暗殺教室

ほとんどの登場人物の名前が赤穂事件関係者という漫画。(を原作としたTVアニメ。劇場用実写映画。劇場用アニメ)

1年後に地球を破壊すると宣言する謎の超生物が某中学校の落ちこぼれ教室3年E組の担任に赴任する。生徒たちはこの先生の暗殺を国から命じられる…。

俵星とか垣見などが出てこないことから原作の松井優征先生がソースにしたのは歴史書のほうと見える。


奇天烈な設定にもかかわらず「学校」を表現するのに申し分ない教養と引き出しをいっぱい持ってる作者のつくり上げる、SFで学園モノでスポ根要素も入ってギャグ漫画でもあるこのアクション大作にはガッツリ心をつかまれた。

もっとも、登場人物がいちいち赤穂義士の名前であるとなると目が離せないのは必定でございますが。


そして、原作に欠けてるエッセンスを見事に補完してるのがアニメ。原作に忠実で、松井先生も単行本の中で喜んでおられる。


さて、内容は「一人のターゲットを殺そうとする、世間から揶揄されてる集団の話」という点だけが赤穂義士っぽいといえばぽいが、内容やキャラの相関関係はまったく赤穂事件(忠臣蔵劇)からは遠い。大名レベルの人が漫画の中でもステージが上の方だったり…くらいの共通点。

執筆にあたって群像劇になることを踏まえ、とりいそぎ命名のヒントに事件からざっくり引用したにすぎないような気がいたします。


どう赤穂事件関係者の名前の人がストーリーに関わってるかをちょっぴり紹介すると、十数人しかいないものの、まず生徒の苗字が全員赤穂義士。(人工知能の自律思考固定砲台 律(りつ)さんは除く。)

メインキャラは潮田(シオタと読む)、赤羽茅野(女子)だが、潮田はほとんど劇中「渚(なぎさ)くん」と呼ばれている。で、もう茅野さんがメインに来るところを見てもどれほど赤穂事件も忠臣蔵劇もほぼ反映されてないかがおわかりかと思いますw。

とはいえ手練の転校生に堀部とか、速水(女子)が名狙撃手だとか、片岡(女子)と磯貝(男子)が仲良しだったり他のクラスのザコキャラ生徒に脱盟者の高田田中の名が当てられてたりなど、ちょいちょい油断できないところがあり、くすぐられる。

そのほかコロ先生の誕生秘話におおきく関わるのがあぐりさん。その婚約者は柳澤さんでこの物語では凶悪な敵役。かすっていますな。

E組を目のかたきにする学校理事長の名が浅野。一見敵役だがこれも「ターゲットを狙うキッカケになった一端を担ってる一番上の人」という見方をすれば浅野内匠頭に共通してる。

謎の超生物は「殺(コロ)せんせー」も、音が「KIRA」によく似ているとかいろいろこじつけたくなっちゃう。


ともかく少年ジャンプやアニメでこれを楽しんだ人たちは知らないうちに十数人の赤穂義士の苗字を言えるようになってる?わけだから結構なことでございます。


原作はある幕引きによってきれいに決着がついており、アニメのほうは「その後」が表現されている。


※実写版はすごく原作に敬意が感じられ、映画サイズに上手に(そうとう急ぎ足の展開で)まとめておりコロ先生役の嵐の二宮クンの声優ぶりもじょうず。

なのだが作品はあくまで原作好きな人へのサービスといったところで、リアル中学生で実写化しようというまでの意気込み(=ジャニーズや原作に執着のない観客までも巻き込もうというリスクを負うような姿勢)は無く、漫画では味わえない「思春期の子供が暗殺を任されるオリジナリティあふれる異常性」をリアルに楽しむチャンスを棒に振ってるのはいかにも惜しい。(正・続編あり)