横川勘平


横川勘平【よこかわ かんぺい(かんべい)】…身の丈六尺。ちから十人力。剣道の達人で相撲が得意。吉良邸一番乗り。


品行方正を買われて、伯父さん芹沢助右衛門に養子になってくれと言われるが、「故主の復讐」というこころざしがあるので、そうはいかないんで断りようを内蔵助に相談に行ったら「放蕩をして愛想をつかされなさい」というアドバイス。やったことのない酒や遊郭のありようを安兵衛などにレクチャーしてもらう。

しかし酒は飲めず、みりん飲んで気持ち悪くなったり、吉原は道順と内容を聞いただけで実施が伴ってないから粋(すい)な伯父さんにウソをみんな見抜かれてしまう。

そんなある日、千馬三郎兵衛が「あしたXデー」という回覧板を持ってきた。勘平、小躍りしたが、当日伯父さんの留守中に討ち入りに出かけようとするのを、事情を知らない伯母さんが「伯父さん帰ってくるまで出かけちゃダメよ。いまお茶入れるから。アレ!?下げ緒がムラサキのに変わってますね。おだやかじゃないわね」「汚れたから変えたんです。出かけさせて下さいな伯母さん〜」「いいえ、どうしても行くなら目付へ訴えます」と万事休す。とにかく少しインターバルを置いて伯母さんに「迷ってましたけど養子になりまーす」と安心させ、油断させて雪の中を韋駄天走り。 (※紫色の下緒…浅野家の生死存亡の時のならわし)

永代橋で討ち入りファンのインディーズの警護団に止められる(岡山の池田家とかご本家芸州家から出たという説がある)も合い言葉が言えたのでスルー。やや遅刻して吉良家に到着(一番最後の遅刻者)。縄梯子を登ろうとする武林唯七を出し抜いて勘平遅ればせの一番乗り込み。


以上の、講談の一席とはなにもリンクしない史実?のエピソードといたしましては、彼はお家解散後、吉良邸に出入りの茶坊主に近づき、この人も12月14日に吉良屋敷で茶会があることを調べたとされるものがある。この手柄が映像化されることはまず無いのだが、めずらしく「峠の群像」だけは茶会の日取りを内蔵助に伝えるのは横川である。


吉良側にちょっと斬られてるそうです。


1931年に「赤穂浪士・快挙一番槍」という横川勘平が主役の映画があり、京都、二条のおもちゃ映画ミュージアムさんで53秒だけ残ってる。

市川右太衛門主演。討ち入りシーンで「横川!貴様の命はもらったぞ!」と脅かされる横川が「犬になったか池渕東馬(<だれ?)!横川勘平首途の血祭りだ!」と勇ましくやりを構えて応戦する姿が見られます。


珍説忠臣蔵」ではバタヤンがギターを持って流しをやっていて、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」では食うや食わずの日々に貧してストリートミュージシャンをする横川を火野正平が演じている。ついでに言うと「ドリフ大爆笑79」ではカトちゃんがドラマーで演じている。横川勘平にそういうミュージシャン的な逸話がなにかあるんでしょうか。

享年37。


仮名手本の勘平に名前を取られちゃってるので、歌舞伎ではディレートされて彼に相当するキャラがいない--と、なにかにあったんで鵜呑みにしてここにいったん書いちゃったが、江戸時代の役者絵に行川三平というキャラで描いてあるし。