「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」の版間の差分

提供: Kusupedia
移動先: 案内検索
(オススメDVD追加)
67行目: 67行目:
 
まだまだ映像化されてない「忠臣蔵」って、たくさんあるなあ。
 
まだまだ映像化されてない「忠臣蔵」って、たくさんあるなあ。
  
 +
<div class="thumb tleft">
 +
<div width="240px">
 +
<amazon>B000I0RNCK</amazon>
 +
<amazon>B000I0RNCU</amazon>
 +
<amazon>B000I0RND4</amazon>
 +
<amazon>B000I0RNDE</amazon>
 +
</div>
 +
</div>
  
 
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1977]]
 
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1977]]

2008年12月5日 (金) 10:32時点における版

作品概要
制作会社 松竹
公開年度 1977年
内蔵助役 松本白鴎ほか
評価 5ツ星
役者絵:中村橋之助

寛延元年(1748年)に初演された歌舞伎

言わずと知れた、赤穂事件を芝居にした名作フィクション。

「江戸時代当時の大人の事情」で、ストーリー的には赤穂事件だがオリジナルエピソードがほとんどで、時代設定やキャラクターの名前も全部変えてある。主役の名前は大星由良之助

昭和52年版を収録したDVDやCS放送、平成20年の白鴎27回忌公演や平成中村座などつぎはぎで構成しております。


絢爛だけど、すさまじく、ところどころカワイイという実に不思議なエンターテインメント。

DVDは9話だけエピソードがとびとびに収録されている。それでも全部見ると10時間くらいになる。歌舞伎の興業では通しで上演されることは珍しく、たいがいどれかの段が単品で上演される。二段目、十段目、十一段などがまれ。

かいつまんで…

口上人形 裃姿の人形が首を回してエヘンエヘン言いながら主演者の説明をする。わりと悲劇が続く仮名手本なのにめちゃめちゃ滑稽。元が人形浄瑠璃だった名残ですかね。こういう「強弱」が仮名手本忠臣蔵はちょいちょい出てくるが、なんというか、センスがすごい。五段目のイノシシとか八段目の遠くの嫁入り行列とか、急に柔和なキモチになります。魅力のひとつでしょうなあ。DVD未収録。

大序 鶴岡八幡宮のリフォームを祝ってのイベント中、偉いじいさん高師直(こうのもろなお)と接待係の桃井君がヘンな空気になる。フィクションとはいうもののかなり史実とかけ離れた大胆なアレンジ。「プロローグ!」てかんじでパーッときれいなビジュアルが印象的。幕が開くとおばさんのお客さんが「ふぁ〜」と喜ぶ。文楽版(人形劇で、こっちがオリジナル)を見たら舞台構成がまったく同じなのでおもしろかった。今で言えば、漫画が実写になったかんじ?

二段目 桃井 館の場。お使いに来た大星由良之助の息子力弥を加古川さんちの娘小浪がむかえて恥じらいの接待。若いカップルの仲良しぶりがここで出てくる(力弥使者)。そして殿様の桃井君が側近の加古川さんに「おれ、あいつヤルから」と高師直をやっちゃうことを告白する(松切り)。平成20年中村座に於いて三十ウン年ぶりに公開された。DVD未収録。

三段目 加古川さんが桃井君に内緒で高師直に詫びを入れて仲を取り持つ(進物の場)。高師直はいじめの矛先を塩冶判官に変える。松の廊下で喧嘩〜刃傷(喧嘩場)。DVDの尾上梅幸と尾上松禄のケンカはオーバーアクションであるにも関わらず刃傷までのイライラの高ぶり、持っていきようが見事。

DVDにも未収録の「裏門合点」を見ておりません。

道行旅路の花聟 「落人」。もともとスピン・オフだったらしいが、ここら辺に入れられて上演されるそうです。DVDではこれのあとに五段目になるのでわかりやすいパッケージ。前半は日舞。早野勘平お軽の実家に居候するキッカケのエピソードで、華やかな舞台美術。高師直の家来、鷺坂伴内が大きく(間抜けに)扱われている。

四段目 判官切腹。慣用句?として使われる「おそかりし、ゆらのすけ〜!」って実際セリフにあるのかと思ったら実際は「由良之助か、待ちかねたわやい〜」だった。

五段目 山崎街道、鉄砲渡しの場。お家の大事にデートで駆けつけられなかった塩冶判官の家来、早野勘平カノジョの実家で狩人生活。イノシシと間違えてを誤射する。うたれて死ぬのは強盗の定九郎。

そもそも落語の「中村仲蔵」において初代仲蔵(歌舞伎役者)の苦心の工夫の末生まれた「定九郎像」がどんなだろうと興味を持って仮名手本忠臣蔵を見たがったのが、忠臣蔵にハマっていくきっかけだった。たしかに不気味でかっこ良かった〜(出番は超短い)。平成18年の海老蔵11の定九郎はゾッとする色気で、「ワル」という生き物のよう。先代と細かい振りが同じだったので、勘三郎襲名記念DVDで見た中村錦之助(信二郎時代)の定九郎はちょっとワイルドだったから、チームによって演出が違うんだなあと、私はたいそうおもしろがりました。

ライブで見るといのししが写真やDVDで見るのより小ぶりに感じてかわいい。ええとその時の定九郎は中村橋之助。<スマートなイメージでした。

六段目 勘平は誤射した死体からお金を奪って仇討ちの連名に加わるために友達に軍資金を払ってホッとして帰宅。すると舅さんの遺体があとから運び込まれる。自分が撃ち殺してしまったのは舅でその死体から泥棒したのかと勘違いして大ショック。切腹する。(早野勘平 住家の場)

最初はもう、理不尽すぎて見ちゃいられなかったなあ。おばあちゃんの激怒も勘平のぐしゃぐしゃな気持ちも。

平成20年に中村座で見ましたら、勘平の末路にぼろ泣きしちゃいました。

七段目 祗園一力の場。五段目で舅が強盗に取られた大金はカノジョのおかるが御茶屋に実を売った代金。実家での泥棒〜切腹騒ぎなど知らず、おとなしく御茶屋で奉公するおかるだったがひょんなことで討ち入りのリーダー大星由良之助の密書を読んでしまう。おかるの兄、寺岡平右衛門は秘密を知った妹おかるを殺すことで由良之助に忠誠を証明しようとする。

DVDのおかる、女形の中村歌右衛門さんがご高齢で、妙齢なはずのおかるがおばあさんに見えちゃうのがじゃっかんサメた。しかしいろんなおかるを見たがこの人ほど「女性」の線というかデフォルメがすばらしい人はほかにしらない。

平成20年に白鴎27回忌公演で見ましたがライブで見た時はぼろ泣きしました。おかるが不憫で不憫で。歌舞伎のライブって、意識と感情が割と離れてて急にわっと泣けてくるんで不思議。理性の方が「あっと、ここで泣くの!?ハイ」て感じでいささかビックリする。歴史が築いた「型」は理屈抜きに日本人のDNAを刺激するようです。

由良之助と芸者衆が遊ぶとき、その公演当時の時事ネタを入れるモノボケの一発芸「見立て」が楽しい。

八段目 道行旅路の嫁入り。二段目に出てきた小浪とお母さんが押しかけ女房しに猥談をしながら大星家へ行く道のり。平成20年の中村座で初めて見たが、「原作に忠実」が建前なので女馬士おやまや奴角助が出てこなかった。せっかくキャラ図鑑を加筆しようと思ってたのに。(ま、貴重なバージョンを見せていただいたわけだが)DVD未収録。

九段目 嫁入りに来たのに、大星家ではおかあさんから自分の殿様のケンカを止めちゃった加古川さんの娘と、うちの息子と結婚なんてさせられませんと、けんもほろろに断られる。加古川さん本人が出てきて死を以て詫びを入れる。後半がちょっと長い印象。(山科閑居の場)

十段目 討ち入りのための武器調達をした豪商、天川屋義平のはなし。08.10月現在Wikipediaには戦後では1986年に一回上演されただけとありますが、あたしが見たのはCSで放送された1959年2月歌舞伎座の中村吉右衛門劇団、市川猿之助一座、中村時蔵参加による「忠臣蔵」通し上演の録画。Wikiもなかなかアテになりません。

たしかに前後があってこそ引き立つ段なんで、これだけ上演してもお客さんが入らないかもですが、役人(に化けた浪士)の詮議に口を割らない天川屋はかっこいいし、ハッピーエンドだし大好き。武器調達のキャラを入れようというセンスが素晴らしい。(天川屋見世の場)DVD未収録。

十一段目 討ち入りの場。この場だけいちいちアレンジが違うそうですな。昭和52年版(DVD)ですごく意外だったのは、史実において吉良邸討ち入りのときにわりと応戦してきて手こずったと言われる小坊主が本作品においてビジュアル化されていることであります。H20平成中村座ではカットされてました。

吉良邸の庭(奥庭 泉水の場)での殺陣は見応えがあり、特に竹森喜多八(武林唯七がモデル)と小林平八(小林平八郎がモデル)の、ダンスのような一騎打ちは目を見張り、DVDで初めて見たときはテレビに向かって拍手しちゃいました。

つかみ合いとか雪の投げ合いとかが逆に新鮮。歌舞伎って池とかに落ちた人が這い上がってきた時の演出がかわいい。


まだまだ映像化されてない「忠臣蔵」って、たくさんあるなあ。