「開局35周年記念番組 赤穂浪士(テレビ東京)」の版間の差分

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さて、そもそも自由に作っていいのが忠臣蔵のいいところではあるものの、本作の場合はなんのためにこうしたのか?という、いきあたりばったりっぽい、主旨不明のアレンジが相当に目立つ。キャラクターの年齢や設定もテキトーに変えたり、オリジナルエピソードも勝手にいろいろ作って足しているが、こんなにしちゃうなら「大佛次郎原作」としている意味がよくわからない。やるならやるで、面白かったら問題ないのだが…
 
さて、そもそも自由に作っていいのが忠臣蔵のいいところではあるものの、本作の場合はなんのためにこうしたのか?という、いきあたりばったりっぽい、主旨不明のアレンジが相当に目立つ。キャラクターの年齢や設定もテキトーに変えたり、オリジナルエピソードも勝手にいろいろ作って足しているが、こんなにしちゃうなら「大佛次郎原作」としている意味がよくわからない。やるならやるで、面白かったら問題ないのだが…
  
「忠臣蔵」という看板に油断したというか、この作品には「俺達の忠臣蔵をやろうぜ!」というような意気込みよりも、「とにかくゾンビを出しておいたら客は来るだろう」と「死霊の盆踊り」を作っちゃうようなたぐいのおっちょこちょい加減を感じる。
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「忠臣蔵」という看板に油断したというか、この作品には「俺達の忠臣蔵をやろうぜ!」というような意気込みよりも、「とにかくゾンビを出しておいたらいいだろう」と「レイダース 失われたゾンビ」を作っちゃうようなたぐいのおっちょこちょい加減を感じる。
  
  

2022年2月12日 (土) 09:07時点における版

作品概要
制作会社 テレ東
公開年度 1999年
内蔵助役 松方弘樹
評価 1ツ星


役者絵:菅原文太

なんというか、暴走したテレ東が作った、おそらく歴代の中でもかなり出来が悪い部類なのだが、すごく罪がない。幼児が泥団子を差し出してきて「食べて」と言ってきてもカッとならないのと同じかんじ。つまり作風に不器用な出来損ない独特の愛嬌がある。


とにかくしょっぱなからもう、堀田隼人が大鶴義丹、というところで呆気にとられる。原作ではこのキャラを「肌の白い、切れ長の目に長いまつげの鼻筋の通った彫りの深い美男子」と紹介している。これを大鶴の…義…丹…さん…。すぐに押し寄せるものすごい不安。(註01)

この予感は図にあたり、こうしたキャスティングを始めとして以降、徹底的にどっかがズレたアレンジの、二次創作臭あふれる怒濤の12時間がくりひろげられる。


緊張感のない松乃廊下(狭い)の刃傷シーンにポカーンとしてると急に「ベイビ、ベイビベイビ〜」と脳天気な宇崎竜童のバラード調のエンディング曲が始まり、本作のゆるさ、かるさを決定的なものにして第1部の終わり。(ちなみに全六部)


さて、そもそも自由に作っていいのが忠臣蔵のいいところではあるものの、本作の場合はなんのためにこうしたのか?という、いきあたりばったりっぽい、主旨不明のアレンジが相当に目立つ。キャラクターの年齢や設定もテキトーに変えたり、オリジナルエピソードも勝手にいろいろ作って足しているが、こんなにしちゃうなら「大佛次郎原作」としている意味がよくわからない。やるならやるで、面白かったら問題ないのだが…

「忠臣蔵」という看板に油断したというか、この作品には「俺達の忠臣蔵をやろうぜ!」というような意気込みよりも、「とにかくゾンビを出しておいたらいいだろう」と「レイダース 失われたゾンビ」を作っちゃうようなたぐいのおっちょこちょい加減を感じる。


ツッコミどころをかいつまんでご紹介すると…

内匠頭の骨は赤穂城の庭先に埋める。

柳沢が手下の甲賀忍者に「大石暗殺団」を結成させるが途中から執着が無くなる。

大野九郎兵衛の横領した公金五百両を一面識も無い泥棒が赤穂城天守まで内蔵助に返しにくると、内蔵助はそれを泥棒にあげちゃう

・山に住んでる不破数右衛門が「やっときました!」と主税勝手に元服させちゃう。

・浅野家再興の望みが絶たれてから撞木町の放蕩が始まる。何キッカケで下向するかと思ったら「なんとなく」だった。※「峠の群像」もその順だが必然性がある。

・内蔵助は部下の奥さん(好きなときに遊里に売春のバイトに行く)を妾にする。(歌舞伎のお軽のイメージ?)

・なんにも輸送してないのに江戸下向の際「立花左近」を名乗ってわざわざ目立つ。(江戸到着後、天野屋にオーダー)

・赤穂と江戸の距離感が表現されてない(同じ町内くらいなかんじで登場人物が四方八方縦横無尽に現れる)

・名斬られ役の福本清三がクローンみたいにいろんな役でそこかしこに登場。 etc...


不思議なことに、次第に今後なにがおこるのか、どこまで脱線するのかがだんだん楽しみになってくる。討ち入り、ホントにするのかな??このぶんだとUFOが出てきたり、内匠頭が生き返ったりするんじゃないか?という期待感が膨らむ。(ま、ふつうに終わるんすけど)


唯一ぬきんでてるのは、お色気の表現。おっぱいが出せないなら、と下半身でエロを表現するセンスだけは秀逸。


<註01>

一時期は月9とかトレンディドラマにも出ていた大鶴義丹氏なので、番組側はなにも考えずに「いい男」的なキャスティングをしたのかもだが、彼は両親がアングラ演劇界トップのハイブリッドで、吉田豪氏のインタビューによれば大鶴氏は幼少期から「テロルの美学」を相当刷り込まれているらしいことがうかがえる。

大鶴氏にとってテレビ出演は「メディアを使って大衆を先導することもできるから」(&カネのため。自己探究のほうは小説でやるそうです。)引き受けるそうで、ことによると今回の出演は「日本人の魂」とか言われるカルチャー「忠臣蔵」をぶちこわそうという「出演テロ」な意図があったのかもしれない。(笑)


<附言>

放送から20年経った2019年に、テレ東の「朝の!さんぽ道」という番組で、街ぶらロケしている俳優の山下真司氏(本作の堀部安兵衛)が泉岳寺で「オレ、初めて来たのよココ」「堀部安兵衛さんのお墓もありますよね?」という、なかなかユルいことをおっしゃってたので、ああ、やはりなんというか、そういう現場だったんだなと、勝手なニュアンスを捉えました。