大忠臣蔵(NET)

提供: Kusupedia
2023年3月16日 (木) 12:33時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版 (配役のウワサを加筆)

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作品概要
制作会社 NET
公開年度 1971年
内蔵助役 三船敏郎
評価 5ツ星
役者絵:三船敏郎
役者絵:渡哲也


最高傑作。

やさしい昼行灯がいざというとき豹変するイメージの大石内蔵助を、いつも臨戦態勢みたいな三船がどう演じるのかさっぱりイメージがわかなかった。ミフネに「家臣」「家来」という役は想像しにくい。

ところがどうしてどうして。腹の底に何かをグッと飲み込んで目的に向かって一直線の剛直な家老、ミフネ内蔵助が意外にもいい感じに仕上がっているのでした。

「椿三十郎」にはお城勤めは無理っぽいが、「隠し砦の三悪人」の真壁六郎太や「風林火山」の山本勘助をイメージするとすんなり行く。そういう内蔵助(はあと)。リーダーシップに重厚な安定感がある。

テコでも動かぬ頑固さには、それを押し通す際に払う犠牲への考えや配慮が見られたり、若い衆から理屈のあった説得には柔軟に対応するなど、矛盾のないミフネ内蔵助の好感度は高い。



ストーリー展開

<以下 ネタバレ含みます>

刃傷沙汰のきっかけは「塩づくりの秘法」を浅野から教えてもらえなかった吉良のイジメのエスカレート。ハラハラする松の廊下のシークエンスが見事。市川中車の吉良上野介は自然に「こんなくそじじい、死んじまえばいいのに」と思わせてくれる、イイ出来。

秘法を命がけで守ってただけに「お家断絶、領地没収」という裁決が見ていてショッキング。


ストーリーが進んでも中だるみもかなり少ない(ほとんど無いと言っていい)。

1年をかけての連ドラとなると、どういう架空エピソードで「もたすか」が課題になってきて、NHKだとメロドラマなどを合間に入れてくる。この「民放初の大河ドラマ」(<という言い方をしてるのを読んだが、)はチャンバラざんまいという作戦に打って出た。

「東軍流の剣の使い手」という部分を膨らませたミフネ内蔵助を頭にいただくことにより、自然に浪士たちも全員腕っ節がよいというながれになって(例外的に中村嘉葎雄の岡野金右衛門のようなヘナチョコもアクセントで出てきて、これも良い)、なにかと言うとすぐ斬り合いになるのも本作の特徴。架空の間者やシタッパ侍が登場しては斬り殺され、自刃などもあって最終回までに相当な人死にが出ます。

同時に、大石と上杉と幕府の知恵比べにも見応えがある(吉良側はいっこうに頼りない笑。)

あと、めずらしく講談などの架空エピソードも(いささかのアレンジがあるものの)いちいちしっかり映像化している。実際の赤穂事件のいきさつに、後年にあとからあとから作られたいろんな銘々伝、外伝を、つじつまを合わせてドラマのエピソードに盛り込んでおり、腐心の後がうかがえる。NHKの大河みたいに原作ありき(でもないか)じゃないぶん縛りが無いのかも。(あとで読んだ「実録テレビ時代劇」能村庸一著によると、原作使わない&おなじみエピソードは全部盛り込む…は企画立ち上げ当初の条件だったそうである)

また、オリジナルストーリーにしてもすこぶる「講談調」の展開だったりする。



配役

最も注目すべきは、出演陣の豪華さ。五社協定の垣根を越え(ていうか、この初回放送年に協定は消滅してるので、それを反映した?)「こんな人も出てるのか」とおどろくような顔ぶれなのがとにかく楽しい。そうして出来たキャラクターの相関関係や活躍と言ったらない。

映画界やテレビ界、演劇の世界から人気者を集め、おそらく史上最高の贅沢な顔合わせではないだろうか。たとえば東映「赤穂浪士」の萬屋錦之助の脇坂淡路守と東宝「忠臣蔵 花の巻雪の巻」の市川中車の吉良上野介が(それぞれその役で)同じ画面で拝めるんだヨお立ち会い。

それはたとえばミュージカル「RENT」のアンソニーラップが、出演作の「スター・トレック・ディスカバリー」のメンバーと一緒に(艦隊のユニフォームのまま)「Seasons of Love」を熱唱するような、そんなゴキゲンなのである。(よけいわかりにくいか…)

世代的にうれしかったのは、武器調達のかどで拷問にあってる天野屋利兵衛を釈放する粋(イキ)な大阪のお奉行さんを中村梅之助が特出で演じてるとこ。彼は当時江戸町奉行「遠山の金さん捕物帳」放送中で大人気だったのだ!このサービスには当時のお茶の間はさぞ喜んだことでしょう。(さらに付け加えると天野屋を演じた前進座のスター・中村翫右衛門は梅之助のお父さん。…まさかと思って天野屋と一緒に石を抱かされる子役を確認したが中村梅雀ではないようだw)

また、「大石東下り」では、日野家の長持を何者かに勝手に運び出された立花左近がいろいろ推理しながら犯人(大石内蔵助たち)一行の足取りを追うちょっとしたミステリー仕立てになっているのだが、この立花左近が本作放送の数年前から他局(フジテレビ)で始まった鬼平犯科帳シリーズのTV版初代鬼平・松本白鸚(放送当時松本幸四郎8th)ときてる。彼があれこれ推理している様子が鬼平とかぶって面白く、また彼は、この番組の10年ほど前の映画「花の巻雪の巻」の大石内蔵助でもあり、その時に俵星玄蕃だったミフネ(まだわかいからと大石役を逃している)と対峙するのだから興奮いたします。


当時「大江戸捜査網」(三船プロ系。他局)でおきゃんなスリを演じてた岡田可愛が、似たようなパーソナルでカツシンの俵星玄蕃の回に出てるのも、「あゝ忠臣蔵」でも駕籠人足を演ってた小松方正を丑五郎で登板させてるのも、居酒屋主人といえば木田三千雄とか、酔っぱらいなら三井弘次といったように、お茶の間の"おなじみ"や"なんか見たことある"を意識したシェアワールド的なキャスティングがいちいちうれしい。

10話に1回くらいのペースで当時人気のお笑い芸人(Wけんじ。ケーシー高峰。牧伸二。玉川スミ。島田洋之介・今喜多代コンビなど)が登場するのもニクい。

ともかく、「楽しませよう」という心意気がこうまでキャスティングに活かされてる作品は珍しいと思う。(いや、無い!)



欠点

気がかりだったのは、調子に乗っていろんな人たちを浪士として豪華にキャスティングしたのはいいが、肝心な討ち入りの時にこのそうそうたる顔ぶれが一堂に会せるのか?ってコト。そしたら案の定、伴淳三郎有島一郎をはじめフランキー堺中村嘉葎雄、など何人もの大事なメンバーがドッサリと討ち入りのときに不在(ていうか、ラスト何回かはいなかったことのようにかき消える)!しょぼーん。制作費10億円でも全員集合は無理だったかぁ〜。

そんなわけで、あれだけ「おなじみエピソードは全部盛り込む」をコンセプトにしていたわりに、肝心な「勢揃い」「討ち入り」に、じゃっかんの肩透かし感が漂う。(そこに居ない有島一郎の、代役の背中ばかりを写して、アフレコで有島一郎の声だけかぶせるというシーンの苦しいことと言ったら…)

ただ、討ち入り回はそうした穴を埋めるべく、赤穂浪士以外の活躍をクローズアップしてがんばっている。不勢揃いの赤穂浪士の代わりと言ってはなんだが、吉良側は大友柳太朗や芦田伸介などメンツがズラリと揃っており、かっこいいし、ほかにもこれまで影なり日向なり活躍していたいろんな登場人物が集合してクライマックスを盛り上げ、吉良邸内外で立ち回りを見せてくれる。(さながら仮面ライダーの最終回の怪人大集合に似て…ああ、そういえばあのドラマも途中から藤岡弘不在だったなあ!)

このことは、予算もさることながら、スケジュール調整も難しかったのではと思う。

あらためて作品を見てみると、石坂浩二の三平と山本陽子のおかる(※註01)で、前後編の2回にわたって山崎街道の悲恋ドラマが展開されるのだが、よく見ると一緒にいるはずの三船敏郎が、石坂と山本両所と同フレームに収まってるシーンがひとつもない。編集で上手に見かけの辻褄を合わせている。もそっと遡ると、そもそも石坂の三平は、松乃大廊下事件のあと、早駕籠に乗ってなきゃいけないのに、そのシーンでは後ろ姿ばかりでセリフの無い代役さんで間に合わせている。

人気スター勢揃いという高いこころざしも、スケジュールの都合という難題には、すでに序章から振り回されていたようである。この番組の自慢がそのまま自分の首を絞めるようなことになっている。(憶測だが、柳生一党の親玉・柳生俊方の仲谷昇さんは名優だが、彼の登場&活躍する#39「暁の江戸潜入」は、ホントはもっとビッグネームを当てたかったんじゃないかなと思うキャラとストーリーだった。ほかにも実現しなかったキャスティングもありそうな。)


附言:スケジュールと言えば、不幸にも最終回前にお亡くなりになってるメインキャストがいるのも珍しい。人生のスケジュールをしくじった市川中車(8th)丈(吉良上野介役。弟さんが代役をした)に触れないわけにはいかない。


註01…「テレビ・メイト」<大忠臣蔵 特集号(昭和45年12月1日発行 第15号12月号)>によると、当初はおかるにはなんと吉永小百合がキャスティングされていた。降板は映画「戦争と人間第二部」に出るためだろうか。ついでに言うとこの雑誌によれば毛利小平太は高橋悦史ではなく平幹二朗がキャスティングされていた。また、友人によれば土屋主税には石原裕次郎が当てられていたというウワサがあったそうだが、それは実現してほしかったなぁ〜!



その他

●初めてみた時は、女性の撮り方は今ひとつ美しくないかなと思ったものだが、あらためて見てみると、描かれている女子メンはどれもナヨナヨ一辺倒の添え物には終わっておらず、敵キャラも味方も男子メンに負けない魅力的な女丈夫に描かれている。ジェンダーに固執しない登場人物たちは、時代の最先端を行った表現だったのかもしれない。


千坂兵部が放つ隠密・お蘭の香月晃(元宝塚)と、内蔵助のサポートに三村次郎左衛門=アースノンガスの左右田一平、大石三平…高島彩アナのお父さん竜崎 勝、公儀隠密の加倉井林蔵=高松英郎らが持ち回りで三船敏郎の次くらいに四六時中出ずっぱりなのも本作の特徴。


●デジタル放送になって以降の忠臣蔵作品はDVDよりBSやCSで見るほうが映像が綺麗だったりするが、逆に本作のような古いフィルム作品だと、地上波の再放送やBSなどよりもDVDの方が綺麗だったりする。さらに、始末の悪いことに放送では差別用語がカットになってたりするので(特に#29「浪花に散った恋」なんかは音声が穴だらけ)、DVD鑑賞をおすすめしたい。…ただ…、BSとかは字幕がつくので、これもおろそかにできない。(もちろん字幕も不完全になったセリフを反映する形になる)


●音楽良いです。いさましいけど、どっかさみしい。ぱっと頭に浮かぶ「忠臣蔵」の音楽と言えば、コレです。


●ノンケの人が見てもすぐ引き込まれるという作風ではなく、あくまで昭和の時代劇ファン、三船ファン向けと思っていたが、過日まったくノンケの後輩が「南部坂」だけ見てたちまちハマり、最初に遡ってイッキ見していたのでやはり魅力たっぷりの連ドラなのかもしれない。