「12時間超ワイドドラマ 大忠臣蔵」の版間の差分

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{{Cinema|制作=テレビ東京|公開=1989|内蔵助=松本幸四郎|星=3|=}}
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[[画像:Mimura.jpg|thumb|役者絵:松本竜介]]
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! 制作会社
 
| テレ東
 
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! 公開年度
 
| 1989年
 
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! 内蔵助役
 
| 松本幸四郎
 
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! 評価
 
| ★★
 
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ところどころ入る城達也のナレーションがウソもホントも説得力たっぷりに語ってくれる。
 
ところどころ入る城達也のナレーションがウソもホントも説得力たっぷりに語ってくれる。
  
森村誠一の原作がそうなのか、いろいろ目新しい。
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森村誠一の原作がそうなのか、いろいろ目新しく、面白い作品。
  
たとえばしょっぱなの日食エピソード、それから赤穂義士の火消しエピソード。討ち入り前は幸四郎内蔵助が京都の遊興をしみじみ「楽しかった…」と大野九郎兵衛(藤田まこと)に語るシーン。討ち入りはほかの作品には無い義士たちによる「ののしり誘導作戦」と、さまざまなオリジナリティで12時間をおもしろくしようと工夫をしている。
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<以下ネタバレ>
  
ただ、なんというか、華が無いと言うか、後年の同局の12時間ドラマの忠臣蔵に比べると、なんだか物置を覗いてるような薄暗い気分というか、色で表現すると「群青色」な作品。
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日食にはじまり、江戸の藩士の火消しエピソード、朝廷の使者の前で具体的に赤っ恥をかかされる[[浅野内匠頭|内匠頭]]。[[大野九郎兵衛]]の扱い。[[山吉新八郎]]の存在感。'''吉良家の用人と上杉家の派遣社員との関係'''。吉良側の「浪士仲間割れさせ作戦」。幸四郎内蔵助は京都の遊興(めくら鬼ばかりでなく、複数の花魁の股の下を匍匐前進する遊びも出てくる)をしみじみ「楽しかった…楽しかった…忘れられん」と振り返る。討ち入りの際出てくる浪士たちによる「ののしり誘導作戦」。[[吉良上野介|吉良]](芦田紳介)は高家筆頭肝煎の面目を守り最終的に切腹。墓前にむき出しの生首。お預けの屋敷の内と外による凧揚げ(泣かせる)。眉毛が薄くアイシャドウが濃い内蔵助etc..と、さまざまなオリジナリティで12時間をおもしろくしようと工夫をしている。
  
ドラマはそこそこリズミカルなところもあって、人気番組に恵まれる夜明け前の12チャンネルにしては「開局25周年」ということでがんばってるかんじがするのだが…。
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定石通りじゃないシークエンスが細かく色々あるので、目が離せない、というか油断が出来ない。
  
メインキャストが近藤正臣の内匠頭をはじめ、りくの岩下志麻やあぐりの松坂慶子など、むりから有名人を配してるかんじでイメージも年齢も合ってない。ついでに言うと「ええ!?」と思うくらい立花理沙(当時のアイドル)の演技が破綻している。
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よく本サイトに於いて、低く評価をした作品に対して「遊びがない」と批判することがあるが、所謂「遊び」とはこういう事じゃないのかな、と思います。
  
四十七士もパッとしないんだよなあ。あらかた名脇役系の人達で構成され、ルーキーが石原良純で、コメディリリーフが松本竜介というのも…ん〜、とにかく'''キャスティングがもうひとつ'''。
 
  
一方「歌舞伎座百年記念作品」ということでもある作品なので、いい役には歌舞伎役者が配されている。
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展開がリズミカルで見ていて心地よく、中だるみも少なく、人気番組に恵まれる夜明け前の12チャンネルにしては「開局25周年」ということで相当がんばってるかんじがする。
  
それでも主役の幸四郎を中心にドラマが奇麗に回転してないかんじがある。内蔵助の影が薄いのかなあ。
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サイドストーリーの、それも旅にちなんだ「[[神崎与五郎|神崎東下り]]」など講談の要素に着目しており、特に松本幸四郎の内蔵助と片岡仁左衛門の[[垣見五郎兵衛]]の「東下り」シークエンスは理想的な間合いやアレンジで(旅籠の廊下まで、あんぽつ駕籠で入ってくる凝った演出)たいへん結構。
  
吉良(芦田紳介)は高家筆頭肝煎の面目を守り、最終的に切腹する。
 
  
いろいろあるけどオリジナリティあふれる、昭和最後のテレビ版忠臣蔵。
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[[田中貞四郎]]、[[萱野三平]]、[[高田郡兵衛]]、[[毛利小平太]]ら、脱盟者の各エピソードが豊かに膨らまされているのも特徴。こころざし半ばで死んでいった脱盟者たちの討ち入りの姿を、死にゆく断末魔の毛利小平太(史実的にも最後の脱盟者)の幻覚に見せるというオリジナリティがある構成は秀逸。
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気になる点といえば、大事な屋内セットがいやに狭かったり、コメディリリーフが松本竜介ひとりで、彼のおとぼけはカノジョにつねられて顔をヨリ目にするくらいのサービスだったり(ラスト近くに原哲男が出てくるがなにもふざけない)。
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また、若い登場人物に薹(とう)が立った(でも有名人)役者が無理くりキャスティングされてたり、比較的メインのキャラクターを見たこともない役者が演じてたりする部分。
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それらさえ鼻につかなければかなり見応えある12時間。
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個人的には最初、配役にはだいぶ違和感があった。いろんな分野の人が一堂に会すのも忠臣蔵ドラマの醍醐味には違いないのだが、ふつうはそれがうまくいくと「役者の花畑」的な華やかさになるのだが、「岩下志麻」「松本竜介」「立花理沙」「松本幸四郎」「知らない人」という、'''闇鍋みたいな'''、具が打ち解けないハーモニーにはセンスが感じられず、そのためなのかなんなのか、どうも幸四郎の内蔵助も、もうひとつ映えず影が薄くなり、出番じゃないときの彼の残像の無さもけっこう気になった。(ことによると幸四郎が垢抜けて都会的すぎて内蔵助役に合ってないのかも?)
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案外人気の高い昭和最後のテレビ版忠臣蔵。ヤフオクでビデオ(全6巻)が入手しやすい。
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[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1989]]
 
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1989]]

2018年2月2日 (金) 07:31時点における版

作品概要
制作会社 テレビ東京
公開年度 1989年
内蔵助役 松本幸四郎
評価 3ツ星
役者絵:松本竜介

ところどころ入る城達也のナレーションがウソもホントも説得力たっぷりに語ってくれる。

森村誠一の原作がそうなのか、いろいろ目新しく、面白い作品。

<以下ネタバレ>

日食にはじまり、江戸の藩士の火消しエピソード、朝廷の使者の前で具体的に赤っ恥をかかされる内匠頭大野九郎兵衛の扱い。山吉新八郎の存在感。吉良家の用人と上杉家の派遣社員との関係。吉良側の「浪士仲間割れさせ作戦」。幸四郎内蔵助は京都の遊興(めくら鬼ばかりでなく、複数の花魁の股の下を匍匐前進する遊びも出てくる)をしみじみ「楽しかった…楽しかった…忘れられん」と振り返る。討ち入りの際出てくる浪士たちによる「ののしり誘導作戦」。吉良(芦田紳介)は高家筆頭肝煎の面目を守り最終的に切腹。墓前にむき出しの生首。お預けの屋敷の内と外による凧揚げ(泣かせる)。眉毛が薄くアイシャドウが濃い内蔵助etc..と、さまざまなオリジナリティで12時間をおもしろくしようと工夫をしている。

定石通りじゃないシークエンスが細かく色々あるので、目が離せない、というか油断が出来ない。

よく本サイトに於いて、低く評価をした作品に対して「遊びがない」と批判することがあるが、所謂「遊び」とはこういう事じゃないのかな、と思います。


展開がリズミカルで見ていて心地よく、中だるみも少なく、人気番組に恵まれる夜明け前の12チャンネルにしては「開局25周年」ということで相当がんばってるかんじがする。

サイドストーリーの、それも旅にちなんだ「神崎東下り」など講談の要素に着目しており、特に松本幸四郎の内蔵助と片岡仁左衛門の垣見五郎兵衛の「東下り」シークエンスは理想的な間合いやアレンジで(旅籠の廊下まで、あんぽつ駕籠で入ってくる凝った演出)たいへん結構。


田中貞四郎萱野三平高田郡兵衛毛利小平太ら、脱盟者の各エピソードが豊かに膨らまされているのも特徴。こころざし半ばで死んでいった脱盟者たちの討ち入りの姿を、死にゆく断末魔の毛利小平太(史実的にも最後の脱盟者)の幻覚に見せるというオリジナリティがある構成は秀逸。


気になる点といえば、大事な屋内セットがいやに狭かったり、コメディリリーフが松本竜介ひとりで、彼のおとぼけはカノジョにつねられて顔をヨリ目にするくらいのサービスだったり(ラスト近くに原哲男が出てくるがなにもふざけない)。

また、若い登場人物に薹(とう)が立った(でも有名人)役者が無理くりキャスティングされてたり、比較的メインのキャラクターを見たこともない役者が演じてたりする部分。

それらさえ鼻につかなければかなり見応えある12時間。

個人的には最初、配役にはだいぶ違和感があった。いろんな分野の人が一堂に会すのも忠臣蔵ドラマの醍醐味には違いないのだが、ふつうはそれがうまくいくと「役者の花畑」的な華やかさになるのだが、「岩下志麻」「松本竜介」「立花理沙」「松本幸四郎」「知らない人」という、闇鍋みたいな、具が打ち解けないハーモニーにはセンスが感じられず、そのためなのかなんなのか、どうも幸四郎の内蔵助も、もうひとつ映えず影が薄くなり、出番じゃないときの彼の残像の無さもけっこう気になった。(ことによると幸四郎が垢抜けて都会的すぎて内蔵助役に合ってないのかも?)


案外人気の高い昭和最後のテレビ版忠臣蔵。ヤフオクでビデオ(全6巻)が入手しやすい。