KANADEHON忠臣蔵
作品概要 | |
制作会社 | 花組芝居 |
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公開年度 | 2007年 |
内蔵助役 | 桂憲一 |
評価 |
かしこまって見ないでいい歌舞伎を心がけてる、「ネオかぶき」の権化・加納幸和が率いる花組芝居が「仮名手本忠臣蔵」を、それも、ダイジェストとは言いながら全段、原作に忠実に(現行の歌舞伎の公演よりも、である…)再現。
とにかく、「まあ、よくやったこと!」と大感心。
全段通しは、ほんとは半日がかりになるのだが、2時間半にまとめることで、前半に出てきた登場人物の再登場が、まだ暖かく、群像劇を素直に楽しめる。
ともかく、物心ついたときから歌舞伎に魅せられている加納さんのやることですから、そつがなく、衣装なんか全部本物だし、梨園以外でこれほど再現度の高い「かぶき」を見たことがない。役者さんがとにかくうまい(鷺坂伴内の谷山知宏さんと、おかるの植本純米さんが好き!)し、この熱量や愛は、本寸法の畑にもダイレクトに伝わるだろうから、それで、これまでのキャリアの中で、衣装全部本物を調達できる人間関係も構築できたんだろうなと。
事程左様に、敬意は青天井なのですが…
なんだろうな…。
たとえば、あたしの務める学校(は、芝居にまったく関係ないんだけど)で言うと、この提出物は、手間のかかった、完成度の高い、優良な、期日に間に合った課題というかんじで、言うまでもなく高い成績で卒業してもらえるし、それこそどこに出しても自慢できるパッケージなのだが、…自慢は〜、しないんですなぁ。
「騙されたと思って一回見てご覧よ!」という興奮が足りなく、拡散がしづらい。
引き合いに出すのは野暮なんですが、たとえば蜷川幸雄が全段やるときって、インスタレーションみたいに劇場空間の居心地で、観客を魅了してるところがあるんで、頭でわからなくてもいいですよって言われてるような感覚的な部分への刺激があるんですが、本作の場合、「わかりやすくしよう」という気やすさと、古典の重みがあんまり良いハーモニーになってなくて、ところどころ入るギャグみたいなものが「余計」に感じるし(<ズバリ、ギャグがことごとく面白くないのだが、かと言って無いと、ただの仮名手本になっちゃうし)、なんていうか、これだけできるなら、もっと別のやり方がありそうかも?と、贅沢をおねだりしたくなっちゃう。
この作品が完成して喜ぶのは、
1に関係者
2にファン(花組芝居、歌舞伎、忠臣蔵ファン)
3〜4がなくて
5に一般観客
というかんじ。