ザ・カブキ

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作品概要
制作会社 東京バレエ団
公開年度 2008年
内蔵助役 後藤晴雄
評価 4ツ星


初演は1986年。世界中で公演しているだしもの。

「忠臣蔵が大好き」という故・モーリス・ベジャール振り付けの創作バレエ。かれは内蔵助にヨーロッパの騎士道精神を見ている。忠臣蔵オタクのベジャールはすごくいろんな実験をこの作品の中でやっている。

あたしはこれまでバレエはほとんど行ったことが無かったし、この作品を見に行った日は徹夜明けだったので、とにかく見てる最中に退屈になりはしないか、眠くなりはしないかと心配していたのだが、どうしてどうして、なんとも素晴らしいひとときでした。


唄やセリフが無いので全編ダンスだけなのだが、仮名手本忠臣蔵をまんまバレエ版に再現した見事な作品。

踊りだけで苦痛や喜びを伝えるわけだが、だからこそキャラの強調が不可欠で、お軽なんかはすごくかわいらしく、鷺坂伴内はかなり印象的に演出されていた。ウン、伴内良かったなあ。より明解でわかりやすい。

「まんま」といってももちろん全部やってたらとても1日じゃ終わらないのでいろいろカットするわけだがそこにも腐心の後が見える。とはいえ切るばかりでもなく、一力茶屋と与市兵衛やおかるの関係などは補足する意味で新たに場面が加えられている。

切ったり張ったり自由にバレエの世界用に変化させているにもかかわらず、定九郎が刀をしまうところとかお軽が体を反り返らせて鏡越しに後ろを見るところとか、オリジナルで印象的な振り付けはちゃんと踏襲(&強調)してるのもワクワクするし、イノシシの着ぐるみをわざわざマンマ登場させるであるとか、とにかくファンは終止目が離せない。こだわりが随所にうかがえる。そういう抜け目無いところがとにかくしびれる

よく聞かれるのだが、衣裳はバレエそのものです。シンプルなぴったりフィットの衣裳に羽織り、とかウチカケ1枚羽織るって感じ。だから着物から裸が覗くみたいなエロティックさもある。

みながら何度も心の中で「おもしれえ!うわ!おもしれえ!」と叫んだ、そして歌舞伎で泣くところはバレエでも泣いた。

討ち入りのダンスは華麗で見事。ヘンな話、ここで眠たくなった。

退屈してたんじゃなくて眼前に繰り広げられてる四十七士のうつくしさにほれぼれして夢心地になるのだ。チャンバラは一切無い。討ち取ったあとがまた見事な幕引きだった。

仮名手本との比較ばかりのハナシになってしまったが、素人の私にはなんともいえないが、ダンス構成も見事だったんだと思う。

バレエダンサーの首藤康之氏は15歳の時に初めてコレをみて「47人もの男性ダンサーが舞台上で一気に踊る事がこんなにもダイナミックなのか」と衝撃を受け、2週間後には東京バレエ団の門をたたいていたと言う。


さて、以上ベタボメなんですけれども、これってオリジナルの「仮名手本忠臣蔵」を知らない人にはどう写るのだろうと、ちょと心配した。なにせさっきも言ったようにセリフが無い。イメージ、想像するにしても仮名手本のストーリーやキャラの相関関係はたぶんイメージの限界を越える。

唯一手がかりがあるとすれば各エピソードの冒頭に仮名手本の義太夫が一部流れるが、こりゃぜったい聞き取れないと思うし、かりに聴き取れても、たとえば「鯉口ちゃん」って歌詞でも主税は刀を持ってなかったりと、歌詞と状況が必ずしも一致していない。衣装も現代風にアレンジしてるので初めて見る人にはキャラの区別もむずかしいと思う。なにしろ仮名手本は登場人物が多い(桃井寺坂はカットされてても、である)。

そしたら休憩時間に、うしろの主婦が「ナニが言いたいんだろうと考えながら見てた」と一緒に来てた姑らしき人物にこぼしていた。(「なにがいいたいか」とはまた難しい質問である…)。お姑氏は言った「歌舞伎の仮名手本忠臣蔵をもとにしてるのよ」「ああそうなんだ」

やはりまったくのノンケにはちょっとわかりにくかったのね。


それはそれとして、わたしにはブラボーな作品でございました。