ラスト・ナイツ

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作品概要
制作会社 GAGA
公開年度 2015年
内蔵助役 クライヴ・オーウェン
評価 4ツ星


中世をイメージした架空世界の騎士道でアメリカ、イラン、韓国などいろんな国の俳優さんを集めてちゃんっと忠臣蔵をしている作品。大真面目な変わり種。

忠臣蔵物語をたった2時間にまとめたのもすごいし換骨奪胎も見事。

画面に写ってるのがよその国で、英語喋ってても「ああ!恋の絵図面取り」「山科…」「おお右衛門七!」「一学だ!」と大いにはしゃげるストーリーライン。

今回、宣伝にちょっぴり首を突っ込んだので、贔屓で四つ星なのではと自問したが、劇場に金払って出かけてもやっぱり面白かった。


監督はもともと映像表現に定評のある日本人。『CASSHERN』『GOEMON』の紀里谷和明氏。

今回はこれまでの作風から一転、ロケやセットで撮った落ち着いたトーンでコラージュみたいなCGの中で人間が何十メートルも宙を舞ったりしない。また一皮剥けた「世界ベース」を感じさせる素敵な見応え。ワンカットワンカット、構図やカメラワーク、光などを大切に撮ってるなーとタメ息。そこに、アカデミー賞受賞者や候補者たち俳優陣が完成度を確かにしている。

目の前の銀幕で展開されてることを面白がってる最中にフと「あ、これ、忠臣蔵なんだよな」と我に返るととたんに胸が躍る。


もともと脚本を書いたカナダ人二人はゴリゴリの「日本時代劇」での映画化を希望していたという。

しかしハリウッド映画作るのに英語喋れる日本人を集めて映画にすることの限界や、かと言って外国人役者に着物を着せる不自然を考えたら、黒澤がシェイクスピアを戦国時代に置き換えるような、あの逆をやるのが得策だというダイレクトなコンセプトを思いつくにいたり、日本の時代劇でやらなかったという(「メイキングオブ・ラスト・ナイツ」「港区歴史フォーラム」より)。

一方で、監督にお会いしたおりにあたしに概略次のように話された…

「自分を殺して大切なもののために犠牲になる精神は形こそ違え、どの国の人も持ってる。

" こうでなければいけない "というような一つのことにこだわるのは違うと思う。そうした考えが動脈硬化を起こす。反体制の物語を描かなきゃいけないのにロックで無くなってしまう。

日本の題材で各人種全部でやれて良かった。」

監督は「名誉を守る」という本質に着目し、烏帽子大紋や黒装束にこだわらなかった。おかげで面白い形で「オールスター共演(各国の)」という忠臣蔵らしい定番のお膳立てがひさびさにかなった。


忠臣蔵のストーリーやテーマを現代にスッと伝えるには、あたしはもう、地元じゃ名君と言われてれる実在の人物をカタキ役に引っ張りだして染めなおしを続けるのはぼちぼち限界に来てるような気がしていた。こうなったら仮名手本忠臣蔵が作られた時のように、設定も登場人物の名前も変えちゃったりする大胆な脚色しか、今後は手が無いのかもと、ちょっぴり思っていたところだったのだ。

この点で紀里谷監督は「どっかの国の多民族混合ヨーロッパ騎士道風忠臣蔵」というアプローチでそれをクリアしてくれた。


このサイトの信用のために(?)マイナスポイントもあえて申し上げると、ものすごく苦慮してシーンを削除して2時間にまとめたためにいろんな歪(本来、本作は3時間ほどはあってしかるべきと思います)すなわち「このシークエンスはもうちょっと念入りでもいいんじゃないか」というようなことがちょいちょいあった。特に浪士たち銘々のパーソナリティやシーンでもっと膨らませられたであろう部分が物足りない場合があり、そのことがこっちのガイジンの人相が判別できないのと重なって「えっと、このひとって、なんだったっけ…」(平兵衛とか)という戸惑いを産んだ。

ディレクターズカット完全版作ってほしいと監督に言ったら「それは無理だろう」とおっしゃってた。う〜ん。


さて、

あたしにとって赤穂事件、忠臣蔵&義士伝は「正義のお話し」である向こう側で、町民もお武家さんも将軍も?公卿までも?が、おじいひとりに「逝ってよし」とした独特で異様なお国柄むき出しの同調現象…というイメージがあります。そしてその同調に千差万別の価値観や思いが交錯している…

ここには民族性、歴史背景、景気、お天気、文化などが微妙にからんでいると思う。

この理解できるようなできないような課題にクリエーターがどう取り組むかにわたしはキュンキュンする。

大満足に仕上がった本作だけに「元禄時代の日本でも見てみたかった」というおねだり感が、もう星一個を出し渋り、そう、いつか日本発で「忠臣蔵」を紀里谷監督が撮られる時までその星一個、とっておきます。



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