堀部安兵衛(日活)

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作品概要
制作会社 日活
公開年度 1936年
内蔵助役 市川小文治
評価 4ツ星


大映の雷蔵=内匠頭の「忠臣蔵」で多門伝八郎をやってた、顔の長い役者さん、黒川弥太郎の主演映画。この人、ピンで看板張るような方だったんですね。

高田馬場の決闘からいきなり始まって討ち入りで終わるという構成。

ところどころの撮り方や構図にものすごく大胆なところがあり、無声映画時代っぽい名残?がある。


前半の婿に入るまでが愉快でわかりやすくコンパクトで、「あ、喜劇なんだな」と思ってみてると、お家の凶変以降、シリアスな映画になる。一粒で2度おいしい。

あたしのキャラ図鑑には、安兵衛像についてあれこれ書いているが、これはほとんど講談ネタを寄せ集めたのだが、この映画はこれらの要素が欲張りにもてんこもりに入ってて驚いた。ふつう、どっかをとったらどれかをはしょるのに、である。それでいてやりすぎていない。とにかく全体的にスマートでよろしい。

後年(特に終戦前後)の安兵衛ドラマはぐず安の「グズ度」がどんどん甘くなって実に優等生になってくのだが、本作品の安兵衛は、義父弥兵衛が切腹したくなるほどの醜態をさらす。安兵衛を手放したくない長屋の連中の気持ちと、堀部になりたくない安兵衛の抵抗がわりとうまく書けていて、見ていてほかの作品では味わえない気持ちにさせてくれる。


松の廊下事件の描き方が知るかぎりもっともスピーディ。「吉良どの、ご勅使は…ええ一い!おぼえたか!」くらいのスピードに感じる。


糊屋のばばあが演技うまい。