忠臣蔵松の廊下

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作品概要
制作会社 フジテレビ
公開年度 1979年
内蔵助役 −−−
評価 3ツ星
役者絵:志村けん

「ドリフ大爆笑」の5分くらいのコント。純粋におもしろい。


教えを乞うために加トちゃんの内匠頭が、去って行こうとする志村けんの上野介の長袴の裾を引っ張ってひっくり返す。しまいに刃傷に及ぼうとするが、通りがかった梶川与惣兵衛はその場を(まるで気づかないかのように)スルーするという単純に笑える天丼コント。


松の廊下コントが「大爆笑」で初お披露目されたのは1978年に左とん平の吉良と、志村けんの内匠頭バージョンだが、まだ笑いどころが定まらない感じで、廊下がなんとなく滑るので仲本工事の梶川与惣兵衛と3人でアイススケートのマネをしたり、いざ刃傷におよぼうとすると短刀が無くて、仲本が代わりを持ってきてくれるが木刀だった、というオチのゆるいものだった。(とはいえ仲本の「両家ご安泰」というパンチラインがすがすがしい。)

「大爆笑」では何度もネタに忠臣蔵が取り上げられているが、上記の加トケン版「松の廊下」(1979年)には神が降りており、後年、メンバーが選ぶ傑作選にも出てたし、150回放送記念にも('81の再演版)、ドリフターズ結成45周年番組でも再放送され、市販のDVDにも収録されてるらしいし、加藤茶芸能生活50周年でも、ドリフ大爆笑35周年番組でも放送。90年代のオープニングタイトルにも使用('81の再演版)されており、ことあるごとにひっぱりだされるほど身内に愛され、ドリフ大爆笑のアイコン的な扱いを受けている傑作コント。。


加トちゃんの内匠頭が刃傷におよぶのは志村上野介に「高木ブーでも、あの、あのいかりや長介でさえも女房がおるわい」とプライベートを揶揄されたのがキッカケ。いかりやと比べられるのはまだしも、高木ブーより劣ると言われたことが遺恨となった。


注目部分

ここで興味深いのは志村けんの吉良が「36にもなって嫁はいるのか?」と問いかけたとき、加トちゃんの内匠頭は「いまだ参上つかまつりませぬ」と答える点。返答として日本語的にはおかしなセリフであり、そのほかにも「なにとぞ教えて願いたい」など侍言葉が曖昧な加藤茶のアドリブの限界かとも一瞬イメージされ、その場で志村も「嫁が参上したりするかバカタレ」とつっこむが、実はこの「いまだ参上つかまつりませぬ」というセリフは言うまでもなく仮名手本忠臣蔵四段目における、切腹中の判官の「由良之助はまだか?」の問いに答える大星力弥の有名なセリフであり、歌舞伎ファンの加トちゃんがソレをとっさに引用したのだとすれば、意外に密度の濃いパロディになってるのかなとも伺える。

また、意識してるのかしてないのか、志村けんのセリフ回しは月形龍之介そっくりで、なにげない馬鹿げたコントも彼らの無意識の引き出しがクオリティを高くしている。


ちなみにこれが放送されたときのテーマは「戦争」で、このコントのあとは「巌流島」となっており、あろうことか梶川与惣兵衛はここで唐突に再登場して志村けんの佐々木小次郎を「殿中でござる!」とはがいじめにして怒られる(<ちなみに両コントでの梶川は大部屋俳優さん)。


再演/再放送

「傑作選」などでこの松の廊下コントが放映されるときはこの「巌流島」や、オリジナルにあった「頭がバカ&短足だから結婚できない」という身体的欠陥を吉良=志村がなじるくだりはカットになっている。

近年における放送では、46歳差という「年の差婚」で話題をさらっている加藤茶に配慮してか、「35周年番組」でのリピート放送では、吉良=志村が「嫁がいない」となじる部分がまるごとカットになっており、勅使を迎える際の居場所を教えてくれないから刃傷になるという超ショートバージョンに編集されている。


さて、どういうわけかこの「神がかった」79年の時だけ衣裳がいささかヘンで、カトちゃんは烏帽子かぶってるのに着物が長裃という具合。(<昔の歌舞伎の浮世絵にそういうコスがよくあるが、意外に赤穂事件の新解釈かもしれない?)。

78年版や同番組で再演されたとき('81の再演版)はセリフも衣裳もちゃんとしている。ちなみに再演の時は「いかりや長介などは2度も結婚しておるわ!」というなじり方になっており、ドリフメンバーのプライベートの変遷が伺える。

蛇足だが「8時だヨ!全員集合」でも同じ「松乃廊下」コントを何度かやっているが、たいがいふたりとも直垂大紋に長袴。しかし烏帽子をかぶっていなかった回もある。烏帽子をかぶらないで刃傷事件が起これば吉良の脳天は真っ二つになっちゃうんだけど…(笑)。

89年の森光子とのジョイント・コント番組の時も衣裳はちゃんとしてるが、劇中劇と言うこともあり、内容は軽く流しているかんじでそんなに笑えない。


ドリフ大爆笑における「忠臣蔵」コント

「ドリフ大爆笑」ではたびたび忠臣蔵がコントの題材になっている。以下、放送順ではなく忠臣蔵のストーリー順に紹介。


田村邸の別れ。BGMを別の曲に置き換えるオムニバス・コントで波止場での恋人の別れに電線音頭を持ってきたり幽霊が登場する時にカルメン77がかかったりする中で、橋幸夫の内匠頭が切腹をする時に「ポン!」という効果音が鳴ってズッコけるという内容だった(BGMじゃないじゃん)('77)。

無念!!内匠頭切腹!。介錯人の志村が「介錯つかまつる」というのを合図に内匠頭のカトちゃんにピンスポが浴びせられ、『セレソ・ローサ』(『タブー』ではない)の曲に併せてストリップのように着物を脱ごうとするので「早く死ねよオメエ!」と志村けんが突き飛ばし、カトちゃんが短刀を腹に突き立てる前に志村は斬首してしまう。奇しくも、腹を切る前に介錯するというのは当時の一般的な切腹を再現しております。('84バラエティ忠臣蔵で放送後90年時代劇スペシャルでも放送)


赤垣源蔵徳利の別れ。長さんの源蔵が羽織に向かって別れの挨拶をしているとたびたびお杉(由紀さおり)がジャマに入ってくるので、何事か聞いたらお兄さん(カトちゃん)はお風呂にいた。「着物持って行っちゃうんだもん!ヘックシュン!よっ源ちゃん!」で顔オチ。('78)


出陣。再演時の「松の廊下コント」のあとには討ち入りのコントが後に続く。

ナレーション芥川隆行が四十七士の名前を朗々と読み上げるのに合わせてカメラの前をいったん横切ったメンバーがかがんですぐに横切り直し、さも大勢行進してるように見せるギャグで、カメラがルーズショットに切り変わり、仕掛けが丸出しになるので5人が怒るというオチ('81)。ちなみにこれは「旅」がテーマだったときの参勤交代の大名行列のときにやったコント('80)のアレンジである。


吉良邸。門前で太鼓を忘れた内蔵助(けん)に浪士のカトちゃんが「持ってきました」と言っては落語の出囃子の太鼓を叩いたりドラムマーチやお祭りの太鼓を叩いて内蔵助=けんを翻弄する。バンドマン加藤茶のドラム・テクが見もの。大騒ぎするので吉良(いかりや)や用人がバラバラと出てきてしまうんで二人は切腹してごまかす('79)。このコントはリメイクもあり、1994年の150回記念特集でも放送され、晩年の同番組のタイトルロールにも利用されるほど「松乃廊下」の次に気に入られている。


討ち入り。吉良邸の門前〜吉良邸内と2シーンに渡ったコント。内蔵助に長さん。主税にカトちゃん。ほか数名を大部屋さん。寝所に到達すると主税がふとんに腕をツッコミ「まだ暖かい。…しめっておりますぞ!」めくると黄色いシミがあって、そこへ掛け軸の裏の壁穴から吉良(志村)が現れ「ごめんなさいナイショにしといて。パンパース買うから」と泣きを入れる。みんな背を向けて「おおい寝小便したぞっ!」と大声で叫びながらハケる。絶望する吉良=けん('82)。(<あたたかい〜寝小便のギャグは「志村けんのバカ殿様2003お年玉SP」内の忠臣蔵劇でも使われた。)

邸内乱入!吉良をさがせ!!。上記のコントとシチュエーションは同じだが、内蔵助の長さんが寝所のふとんに手を突っ込み「あたたかいっ!すごくあったかいっ!!ちょっと寝よう!」と言ってふとんに入ってしまい一同ずっこける。「さむい!すぐ起きる!」。('84バラエティ忠臣蔵で放送後90年時代劇スペシャルでも放送)


1984年師走の放送では「バラエティ忠臣蔵」と題して田村邸の切腹、討ち入り、泉岳寺までコントをたっぷりやっている。配役はコントごとに変わる。

以前の焼き直しもあるが、たとえば吉良邸門前コント(79)の再演などは太鼓のバリエーションのほかに竿にぶら下げた巨大なウンコを主税(加藤茶)が持ってくるような微妙なアレンジが加わっている。

新作の炭小屋コントは同じシチュエーションで複数のショートコントのバリエーションで見せ、楽しい。

引き揚げのコントでは吉良邸の門前で勝ちどきを上げていると警察(仲本)がやってきていかりや内蔵助は逮捕される。「殺人並びに死体遺棄。不法侵入、器物破損。凶器準備集合、不法所持、騒乱罪の現行犯で逮捕する!」・・

最終的に泉岳寺ではお参りする墓を間違えて小野小町の霊にしかられる(研ナオコ)。

とにかくもう、たっっぷりでファンには欣喜雀躍のサービスでございます。('84)


補足(蛇足)

●「8時だヨ!全員集合」には内容の違う松乃廊下コントもあって、仲本の吉良に対して短刀を抜く加藤茶の内匠頭を制止する志村の梶川が、加藤を投げ飛ばしたり壁にたたきつけたり一斗缶で殴るので、加藤が「役を変えてくれ」と言って仲本と役を交代。仲本が内匠頭になって短刀を抜くと志村は「お逃げくだされ!」と言って相変わらず加藤の吉良にばかりに乱暴をする。仕舞には廊下が客席側に倒れて加藤が放り出されるというものだった。

長い歴史のある「全員集合」にはきっと、もっといろんなバージョンがあるのだろうなあ…。


●「大爆笑」の加トケンによる吉良&内匠頭コンビは松の廊下コント以外にも登場しており、「旅」がテーマだった時も陸蒸気の車内で刃傷事件を起こしている('80)。


●「マツケン版忠臣蔵」や三谷幸喜の「吉良ですが、なにか?」で吉良上野介を演じているのは伊東四朗氏。下町出身のざっかけない雰囲気が持ち味の彼が高家筆頭というキャスティングにいささか疑問があるが、「ドリフ大爆笑80」の「仇討ち」のコントでも吉良上野介を演じている。峠の茶屋の前でいろんな仇討ちのユニットが出てきては明治時代の長さんのお巡りさんが「仇討ちは禁止になった」と間に入るコントで、大石内蔵助は前川清。