10,734
回編集
差分
新作落語いろいろ
,編集の要約なし
噺家の師匠たちは忠臣蔵を題材にいろいろなお話しを作ってらっしゃいます。
'''忠臣ぐらっ'''…立川志の輔
各エンターテインメントに忠臣蔵はあるのに、実は落語だけ無い。というコンセプトから作ったお話し。たしかに、落語の忠臣蔵ものは艶笑小咄の天川屋義平を除いては、芝居の[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]を扱ったものばかりで、芝居好きの誰それがどうしたというハナシばかりである。(附言:忠臣義士たちの落語、無いわけではないが、ややこしくなるので、それにつきましてはこのサイトの[http://www.kusuya.net/%E3%81%8F%E3%81%99%E3%81%8A%E3%81%AE%E5%BF%A0%E8%87%A3%E8%94%B5%E4%BD%9C%E5%93%81%E8%A9%95#.E9.96.A2.E9.80.A3.E4.BD.9C.E5.93.81 古典の項目「古典落語」の項目]をご参照ください。)
志の輔師匠が題材にしたのは[[岡野金右衛門]]の絵図面取り。
ただ、なんとなく台詞が安く、まるでその場で思いついて喋ってるかのような完成度だったのが残念。でもアイデアは面白かった。
(附言:志の輔師匠で忠臣蔵といえば、「[[中村仲蔵]]」が有名。<左記リンク「古典落語」の項目を御覧ください。)
30分強の噺だがあっという間。コレ、1時間ぐらいのロングバージョンで聴けないかなあ。
'''[[梶川与惣兵衛]]'''
講談『梶川の屏風回し(「掛け軸回し」)』のアレンジ。そもそもオリジナルがコミカルなのでブラック師匠が落語にするとほんとに笑える。
松の廊下で[[浅野内匠頭]]を取り押さえた褒美をもらってイイ気になっていた梶川は老中方からおおいに嫌われ「お江戸日本橋亭や上野広小路亭が快楽亭ブラックにしたように"出禁"じゃ!」よわった梶川が松の廊下で一緒に浅野を取り押さえたが褒美を拒否して評判のいい[[関久阿]]にアドバイスを求めると「謝罪会見を開いて、事の次第を"お話しくだされ梶川殿"。」
…というオチ。
ネタバレ御免だが、師匠が名古屋公演でかけたときに客がポカンとしてたから。ということで、師匠も冒頭にオチを晒す。笑(ちなみにこのネタは2023年、休館前のお江戸日本橋亭で披露された。)
喬太郎師匠がどっかで読みかじったなにかの一節から「男色」ネタを思いついたそうで、大好きな12chの「[[つか版・忠臣蔵]]」の風間杜夫のモノマネで内匠頭を演じている、サービス満点の作品。
<附言>浪曲の玉川奈々福師匠が本作を原作とした「 BL浪曲「シン・忠臣蔵」」という作品をかけていらっしゃる。
ウルトラマン生誕50周年「ウルトラ喬タロウ」での新作落語(師匠は新旧ウルトラマンのガチヲタ)では、ウルトラ怪獣のアダ名で呼び合ってた小学生時代の同窓会のハナシで、目立たなかったサイゴくんがいま芝居をやっており先日も浅野内匠頭を演ったというエピソードが出てくる。「なにせ敵がキーラだから」…という、もう、どの客を見込んでのギャグなのやら(笑)、キョンキョンはまっすぐにあさっての方向へ高座を駆け抜けた。
「ウルトラ仲蔵」は、「中村仲蔵」のスト−リーラインを見事に初代マンの世界観になぞらえてアレンジしたパロディ。活躍が認められて地球のバルタン星人討伐に派遣されたウルトラ仲蔵が工夫して相手を倒すが、その見事さに感動して言葉も出ない科特隊。「ああ、これはしくじったな」と上方へゴモラ退治に出かけようとするが…。たまんない内容ですな!笑
それを見た、ネズミやゴキブリたちは…
もともと忠臣蔵にぞっこんだったのか、どうなのか。忠臣蔵はネタ的にいじりやすいということから、ウィキペディアとか見ながら構成したと師匠は教えてくれた。
---------
[[画像:sakana.jpg|thumb|完結編チラシ。]]
'''サカナ手本忠臣蔵'''…玉川太福(浪曲)
[[浅野内匠頭|アサリ内匠頭]]と[[吉良上野介|ボラ上野介]]がサンゴの廊下でいざこざになる場面から始まり、[[田村右京大夫|サワラ右京太夫]]邸で切腹(すると、貝柱が切れてむき身になる)するまでが描かれた、純粋に面白い浪曲劇。
「食(しょく)さそう 醤油の香り 我はバター 半分残し 酒蒸しにせん…」辞世のレシピ
註01…2021.3.13 江戸東京博物館小ホールでのネタおろしに配られた口上書と、トークより。
---------
'''元禄女太陽伝'''…春風亭小朝
脚本家の金子成人原作。
みずから吉原に飛び込んで女郎となったお熊というめずらしい女性(名が体を表す眉毛が繋がったお顔立ち)が、たまたま客で来た[[大石主税]](「男にしてやろう」と意気込む[[堀部安兵衛|安兵衛]]と[[不破数右衛門|数右衛門]]に連れられてやってきた)。彼の筆おろしをしてあげる。
討ち入りのあと、お熊は江戸中で大石主税を男にした女郎としてバズり、吉原いちばんの売れっ子になるというハナシ。
「お前は運が良い女だな。まるで鬼の首を取ったみたいだ」「いいえ、取ったのは吉良の首」というサゲもあると、某サイトにあった。
同じ原作(脚本)&タイトルで萩本欽一さんが道楽で作った(としか言いようのない笑)短編オムニバス映画「欽ちゃんのシネマジャック(1993)」で映像化されているらしいが、成績は不調だったという本作はソフト化もされておらず、2023年現在確認ができない。
'''殿中でござる'''
初代国立劇場さよなら公演「歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵」
ということで、小朝師匠の落語「[[中村仲蔵]]」と中村芝翫(8th)丈の[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|5〜6段目]]が合体した公演。2022年秋。
この[[赤穂義士外伝の内 荒川十太夫|2ヶ月ほど前に歌舞伎座で、講談と歌舞伎のコラボ]]があって、そのときは神田松鯉&神田伯山&尾上松緑の鼎談があったんで、今回もそういうような趣向なのかと思ったら、幕間を挟んで前半落語と後半で歌舞伎が完全に分離してて、トークも無く、もしや企画が先走って、演者さんたちはおたがいを執着してないのかな?と、邪推してしまう印象の舞台だった。
落語も歌舞伎も、もともと知ってる古典の演目なんで出かける予定がなかったが、開口一番で小朝師匠の「殿中でござる」というのがあるというんで、新作なら聴かねば!とお出かけ。
最近映画やテレビで忠臣蔵をやらなくなったのは「昔なら大衆は『赤穂四十七士』の忠義に心を打たれていたものを、最近は『討ち入りはテロでは?』となってきた。テロという認識が多数派だと容認できないから、メディアも忠臣蔵を扱えなくなってきてるんじゃないか」という師匠の説のもとに「ほんとに吉良が悪いと思います?」という論調で、浅野内匠頭を悪く言う(ケチでイラチ)視点で赤穂事件のあらましを討ち入りまでおさらいをするだけの内容だった。
とはいえ、台詞が出来てて「さすが」と思ったものだが、実はこれも菊池寛の「吉良上野介の立場」という短編を落語調(原作に時事ネタなどを挟み込むなどしてアレンジしている)にしたネタだとあとから知って、じゃあ「さもあろう」だった。
テロの話で口火を切った割には、討ち入りのテロ性には触れないんでヘンだなと思ったが、要は師匠は「昔とはちょっと変わったところで、忠臣蔵を見てみよう」的な視点で観客のご機嫌を伺うアプローチを計ったようである。
師匠が下がって「え…五段目関係ないじゃん」とか「え…なんでタイトルが"殿中でござる"なの…」とポカンとしていると唐突に太神楽が始まって(曲芸のスキルはすごいのだが、ひとつも忠臣蔵とは関係ない)、それが終わると引き続き師匠が戻ってきて落語「中村仲蔵」が始まる。
35分の幕間のあと、五段目フィーチャーしてるライブな割に、芝翫さんは勘平…(中村歌六が貫禄のある定九郎)。で、六段目がたっぷり。
たまたま(なのか連動しているのか)NHKの「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」の再放送があったので、それを見た友人は今回のライブを楽しんだようだった。