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通し狂言 仮名手本忠臣蔵

1,154 バイト追加, 2010年9月4日 (土) 01:41
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== 全段〜内容ご紹介〜 ==
 == '''口上人形'''== 
裃姿の人形が首を回してエヘンエヘン言いながら主演者の説明をする。わりと悲劇が続く仮名手本なのにめちゃめちゃ愉快。元が人形浄瑠璃だった名残(ちなみに文楽では口上は人間がやる。)。
 == '''大序(だいじょ)''' == 「鶴ヶ岡八幡宮の場」。
鶴岡八幡宮のリフォームを祝ってのイベント中、偉いじいさん[[吉良上野介|高師直]](こうのもろなお)と接待係の[[桃井若狭助|桃井]]君がヘンな空気になる。最初は、いじめられるのがあとで刃傷を起こす[[浅野内匠頭|塩冶判官]]ではないという、興味深いアレンジ。
'''二段目''' 
桃井 館の場。お使いに来た大星由良之助の息子== '''二段目'''  == 「桃井館の場」。 お使いに来た大星由良之助の息子[[大石主税|力弥]]を[[加古川本蔵|加古川]]さんちの娘[[小浪]]がむかえて恥じらいの接待。若いカップルの仲良しぶりがここで出てくる(力弥使者)。
そして殿様の桃井君が側近の[[加古川本蔵|加古川さん]]に「おれ、あいつヤルから」と高師直をやっちゃうことを告白する(松切り)。「力弥使者」のほうは平成20年中村座に於いて三十ウン年ぶりに公開された。DVD未収録。
 == '''三段目''' == 「足利館の場 同殿中の場」
[[加古川本蔵|加古川さん]]が桃井君に内緒で高師直に詫びを入れて仲を取り持つ(進物の場)。高師直はいじめの矛先を[[浅野内匠頭|塩冶判官]]に変える。松の廊下で喧嘩〜刃傷(喧嘩場)。DVDの尾上梅幸と尾上松禄のケンカはオーバーアクションであるにも関わらず刃傷までのイライラの高ぶり、持っていきようが見事。
 == '''四段目''' == 「塩谷館の場」。
判官切腹。慣用句?として使われる「おそかりし、ゆらのすけ〜!」って実際セリフにあるのかと思ったら実際は「由良之助か、待ちかねたわやい〜」だった。「通さん場」といって劇場のお客さんの出入りが許されない大事な段。
'''五段目鳥本宿 蜂の巣の場'''  北陸のほうで出張中の[[寺坂吉右衛門|寺岡平右衛門]]が居酒屋で一杯やってると、百姓たちが蜂の大合戦を見て騒いでるのを居合わせた坊さんが「こういう稀代は京か鎌倉の諸侯方に凶事があるのでは?」と不吉なことを言う。平右衛門は鎌倉の殿様のところへ走る。
山崎街道、鉄砲渡しの場。お家の大事にデートで駆けつけられなかった塩冶判官の家来、検索しても出てこないようなマイナーな場でありますが、コレは昔の書物より引用。 なんとなく七段目との因果関係が成立してて、去ればあった出来持ちのいいエピソードでございます。  == '''五段目'''  ==  「山崎街道、鉄砲渡しの場」。 お家の大事にデートで駆けつけられなかった塩冶判官の家来、[[早野勘平]]が[[お軽|カノジョ]]の実家で狩人生活。イノシシと間違えて[[斧定九郎|人]]を誤射する。うたれて死ぬのは強盗の[[斧定九郎|定九郎]]。
[[もりいくすお|あたし]]はそもそも落語の「中村仲蔵」において初代仲蔵(歌舞伎役者)の苦心の工夫の末、生まれた「[[斧定九郎|定九郎]]像」がどんなだろうと興味を持って仮名手本忠臣蔵を見たがったのが、思えばコレが忠臣蔵にハマっていくきっかけのひとつだった。実際見ると歌舞伎の演出が落語とずいぶん違う。とはいえたしかに不気味でかっこいい〜(出番は超短いが)。
 == '''六段目''' == 「与市兵衛内の場」。
[[早野勘平|勘平は]]誤射した死体からお金を奪って仇討ちの連名に加わるために[[神崎与五郎|友達]]に軍資金を払ってホッとして帰宅。すると[[与市兵衛|舅さん]]の遺体があとから運び込まれる。自分が撃ち殺してしまったのは舅でその死体から泥棒したのかと勘違いして大ショック。切腹する。(早野勘平 住家の場)
'''七段目''' 
祗園一力の場。けっこう上演され、見る機会が多い幕。== '''七段目''' == 「祗園一力の場」。 けっこう上演され、見る機会が多い幕。
五段目で舅が強盗に取られた大金はカノジョのおかるが御茶屋に身を売った代金。実家での泥棒〜切腹騒ぎなど知らず、おとなしく御茶屋で奉公するおかるだったがひょんなことで討ち入りのリーダー[[大石内蔵助|大星由良之助]]の密書を読んでしまう。おかるの兄、[[寺坂吉右衛門|寺岡平右衛門]]は秘密を知った妹おかるを殺すことで由良之助に忠誠を証明しようとする。
'''八段目''' 
道行旅路の嫁入り。二段目に出てきた小浪と== '''八段目''' == 「道行旅路の嫁入り」。 二段目に出てきた小浪と[[戸無瀬|お母さん]]が押しかけ女房しに、幸せな夫婦生活などをあれこれ想像しながら大星家へ行く道のり。平成20年の中村座で初めて見たが、「原作に忠実」が建前なためか錦絵に見る女馬士おやまや奴角助が出てこなかった。文楽でもこの母子ふたりきりだった。
昭和61年国立劇場開場20周年のときのビデオを見たら、うかれた奴(やっこ)の吉平と運平の踊りがあり、その間母子は舞台袖に下がっていた。奴の二人はいわば息抜き的な陽気な役割だった。イヤホンガイドによると「江戸の浄瑠璃の清元や常磐津で演じるときや、ほかに女馬子とか伊勢参りの旅人や商人が絡むこともございます」というからいろいろとゲストにバリエーションがあるようであります。
 == '''九段目''' == 「山科閑居の場」。
上記の二人が嫁入りに来たのに、大星家では[[大石りく|奥さん]]から自分の殿様のケンカを止めちゃった加古川さんの娘と、うちの息子と結婚なんてさせられませんと、けんもほろろに断られる。加古川さん本人が出てきて死を以て詫びを入れる。後半がちょっと長い印象。(山科閑居の場)
'''十段目''' 
== '''十段目'''  == 「天河屋の場」。 討ち入りのための武器調達をした豪商、[[天野屋利兵衛|天川屋義平]]のはなし。義平の忠義を試すために浪士がいろいろ詰問するが、義平は口を割らない。あたしが見たのはCSで放送された1959年2月歌舞伎座の中村吉右衛門劇団、市川猿之助一座、中村時蔵参加による「忠臣蔵」通し上演。昭和61年、国立劇場開場20周年のときの全段通し。〜以上の録画。近年ではこれらと2009〜2010大阪の新春大歌舞伎でしか上演されていない。(見に行けなかった…のはなし。 義平の忠義を試すために浪士がいろいろ詰問するが、義平は口を割らない。あたしが見たのはCSで放送された1959年2月歌舞伎座の中村吉右衛門劇団、市川猿之助一座、中村時蔵参加による「忠臣蔵」通し上演。昭和61年、国立劇場開場20周年のときの全段通し。〜以上の録画。近年ではこれらと2009〜2010大阪の新春大歌舞伎でしか上演されていない。(見に行けなかった…)
前後があってこそ引き立つ段だから、単独じゃ客入りが見込めないんで上演回数が少ないのかと思ってたが、ものの本で加賀山直三氏が「この一段はつまらない。愚作」と一蹴。義平の侠気はかっこいいし、ハッピーエンドだし個人的には大好きだが、たしかに九段目までの貫禄の由良助が、つづら(長持ち)の中に潜んで義平にドッキリをしかけるという趣向はなかなか「浮いてる」かも。人を試して結局謝るという、かっこわるいかんじだし。ちなみに国立劇場開場20周年ではつづらから出てこないで後ろの戸を開けて出てきた。
そのほかにも離縁した天川屋夫婦の復縁まで世話をするなど、討ち入り直前にしては手の込んだ「よけいなこと」をしすぎで、たしかに異色作。でも武器調達のキャラを入れようというセンスが素晴らしい。文楽では「天河屋」となっていた。(天川屋見世の場)DVD未収録。そのほかにも離縁した天川屋夫婦の復縁まで世話をするなど、討ち入り直前にしては手の込んだ「よけいなこと」をしすぎで、たしかに異色作。でも武器調達のキャラを入れようというセンスが素晴らしい。文楽では「天河屋」となっていた。 ちなみに、昭和初期の脚本を見ると由良之助ではなく[[不破数右衛門|数右衛門]]が長持ちから飛び出すバーションもあるようで、「最近の型」と紹介している。
(天川屋見世の場)DVD未収録。
'''十一段目''' 
「討ち入りの場」。この場だけいちいちアレンジが違うそうですな。昭和52年版== '''十一段目''' == 「討ち入りの場」。 この場だけいちいちアレンジが違うそうですな。昭和52年版(DVD)ですごく意外だったのは、史実において吉良邸討ち入りのときにわりと応戦してきて手こずったと言われる[[牧野春齋|小坊主]]が本作品においてビジュアル化されていることであります。この幕はキャラクターがいろいろ出てきて楽しいのだが、H20平成中村座、H21顔見世ではカットされてました。(大広間の場)
吉良邸の庭(奥庭 泉水の場)での殺陣は見応えがあり、特に竹森喜多八([[武林唯七]]がモデル。[[勝田新左衛門|勝田]]だったりすることも)と小林平八([[小林平八郎]]がモデル)の、ダンスのような一騎打ちは目を見張り、DVDで初めて見たときはテレビに向かって拍手しちゃいました。
つかみ合いとか雪の投げ合いとかが逆に新鮮。歌舞伎って池とかに落ちた人が這い上がってきた時の演出がかわいい。
「引き上げの場」一同が菩提寺の光明寺に向かう。その途中両国橋で == '''大詰''' ==  「引き上げの場」。 一同が菩提寺の光明寺に向かう。その途中両国橋で[[服部市郎右衛門|服部逸郎]]という役人が労をねぎらう。メンバーが花道を引き上げてどんじりの[[寺坂吉右衛門|寺岡平右衛門]]がさわやかにかけやを担いで胸はって大いばりで去っていき(特に有名じゃない役者さんがやるときはそういう演出はないが、どちらにしろ彼だけ衣裳がベスト姿で目立つ)、馬にまたがって隊列を見送る服部が「あっぱれ」とエールを送る。ひじょうに後味のいい幕引き。
歌舞伎の寺坂はなんだか無邪気でかわいいから好きであります。

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