峠の群像
作品概要 | |
制作会社 | NHK |
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公開年度 | 1982年 |
内蔵助役 | 緒形拳 |
評価 |
「わしが迷っていてなぜ悪いのかぁっ!」
堺屋太一原作
ストーリーは「倒産後も経営存続できますか?」という点が大きく取り上げられている。
松の廊下事件までの経緯が非常に印象的。これまでのマジメで病弱な浅野内匠頭像とうってかわって、隆大介の浅野は骨太で、何年も前から塩のことなどで吉良(伊丹十三)と正面からやりあって折り合いが悪く、空気が悪い。いつ刃傷沙汰になってもおかしくないかんじで自然に「ケンカ」がもりあがっていく。浅野の「短慮」ぶりが最も上手に演出されてるドラマではなかろうか。
大河ドラマ(連続ドラマ)は総集編で見るとどうしてもリズムが独特になってしまうので、作品の善し悪しの判断がつきにくいが、それにしてもこの作品、残念ながら一本調子で抑揚がなく、そのムードが首尾一貫しており、キャラも豊かに膨らんでいない。
浅野と吉良の喧嘩シーンがリアルだったまでは良かったが、以降一定のテンションなのだ。暗く重苦しい画作りの中で、みんなが無表情で思案し、悩み、相談かもめごとを繰り返すばかり。そしてときどき怒鳴る。
しかし、この「もっとも暗い忠臣蔵」は、当時としてはかなり斬新なアプローチだったのではなかろうか。これまでは絢爛な画作りがスタンダードだったわけだが、わざと人間臭くとらえた演出は、お茶の間にはリアルに写ったかもしれない。リアリティを追求したら肝心な「面白味」が欠落した。
当時のジャニーズアイドルがいっぱい出ている(よっちゃんとかニッキとかヤックンとか2番手ばかりだが)のも特徴だが、彼らも静かな調子。
ラッキー7の関武志(大石の家僕役)が救い。なんにもしないが、彼は存在感だけでホッとさせてくれる。
役者っぷりがいいのは吉良の伊丹十三。
この作品はほかの忠臣蔵をかなりいっぱい見た末に見たが、どうやら四十七士っていうのはクールに描くだけじゃ魅力が発揮されない。どこかお間抜けな部分も併せ持った田舎侍たちが、迷ったり躊躇したりしながら不器用に働き、貧乏生活を元気にやけくそに乗り越え、見事あの大義を全うしたところにものすごさがあるのではないか。