東海道四谷怪談
『仮名手本忠臣蔵』のスピン・オフの怪談。
欲望、裏切り、DV、連続殺人など、ネガティブ要素をふんだんに構成して、こみ入ったコワイ話に仕上げた鶴屋南北のものすごいストーリー。
それでいてなぜかところどころユーモラスという、南北の脳みその稀代ぶりが発揮されている。
元・塩谷藩士、民谷 伊右衛門は舅を殺してまで復縁にこぎ着けた奥さん、お岩も死に至らしめ、その後いっぱい殺す。
ので、いろいろ呪われ発狂する。最後はお岩さんの妹の夫である佐藤与茂七に仇を討たれる。
とにかくお岩さんがかわいそうなのだが、これを演じる役者さんは相当な演技力や体力その他、スキルが要求される。
こわいけど、美しい、で、かわいそうですさまじいという演技はなまなかでは難易度が高そう。
産後の肥立ちの悪いお岩さんの所作には、死に至るまで踊りのような美しさがあり、目が離せない。
また、お岩さん担当の役者はほかに小仏小平、佐藤与茂七と計3役の早替わりをこなさねばならない。
「四谷怪談」というと映画製作にまつわる怪奇現象の都市伝説ばかりがクローズアップされがちだが、舞台のほうはとにかくストーリー、役者のグレードのほかにも、工夫されまくってる仕掛けなど、とにかく観客を楽しませようというサービスのてんこ盛り。
ホラーの基本である(?)、大量のネズミというアイデアなど、ともかくいろいろと、まったく現代(や、海外)にも見劣りしない大傑作であります。