七川劇団リターンズ 新説 堀部安兵衛

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作品概要
制作会社 松竹
公開年度 2022年
内蔵助役 ーー
評価 2ツ星


2022年10月博品館。

公演タイトルに「猿之助と愉快な仲間たち」とも「七川劇団リターンズ」ともある。

これ、歌舞伎の若手(なので全員メンズ)を率いる「猿之助と愉快な仲間たち」という市川猿之助が主宰する演劇プロジェクトがあって、劇中で架空の劇団・七川虎之助一座がお芝居を展開するという意味なんですね。

そういうことを一切頭に入れずに出かけてみたら、会場にはもうすでにそういった事情はご承知おきとおぼしき観客(目測9割が女性。平均年齢40・5歳)が客席を占めていた。

これは言ってみれば帝劇でジャニーズジュニアを観るときの感じかなと思って、蓋を開けてみたら、木馬館にいらっしゃるご贔屓筋のおもむきだった 笑。(わざとそういう構成)


今回のお芝居には前日譚があり、かつて存在したという「シアター停車場」で活躍してた役者たち(みな故人)が成仏できていないので、「森の石松」を上演した…というのが半年前に公演やったときのストーリーだったそうです。(前公演の内容を序盤でダイジェストで見せてくれて助かった。)

だが、実はそれでもメンバーが成仏できなかったので今度は「新説 堀部安兵衛」をやろうというのが、今回の内容(そうだったかな?)で、安さんは劇中劇。


タイトルといい、客層といい、内容といい、あたしにはいろんな置いてけぼりを感じる。(<そうは言っても、イヤなアウェー感は無い)


でもあのう〜…劇中劇なら、もうちょっと違うタイトルにしてほしかったな〜…忠臣蔵ファンが出かけるような内容ではなかったのかもな〜…

チケ代8,000円は、コロナ禍で空っ風が吹いてるフトコロには、正直痛かったんだよな〜…


<以下、ネタバレ含みます>

安さんの高田馬場エピソードは、池波正太郎さんの小説と三谷幸喜さんのPARCO歌舞伎の掛け合わせみたいな感じだが、中津川祐見と安さんの関係が新しく(新発田藩での御前試合かなんかで安さんに傷をつけられた祐見が復讐心に燃えて江戸の安さんを訪ねてくるのだが、やがてその心は友情へと変わっていき、力を合わせて村上兄弟たちをやっつける)、真剣味とおかしみのバランスもいいし、ともかく舞台上では歌舞伎界の若手が多いので、そのスキルから見ごたえもある。

全体を通しての芝居のテーマは、「苦しいのは自分だけじゃない。与えられた命を大切に生きていこう。ひとりじゃ生きていけないんだから他人との結び合いや助け合いを大切にしよう。」と言ったところか。


ただ、時々なにを言ってるのかよく聴こえないときがある最後列のわたしの席(しか取れなかった)では、8,000円でバク上げした期待のハードルを飛び超えてくるほどのパワーは感じられなかった…。(こういうとき、ワハハ本舗やももクロだったら通路のすみずみまでメンバーたちが出向いて観客をかまってくれるアイデアがあるんだけど…。あるいは、そこまでサービスしなくても、たとえば勘三郎(18th)の中村座なんかは、「高いチケ代取って切り株なんぞに座らせやがって」と、やはり最後列で集中力を切らしても、六段目で胸ぐらをつかまれ、意識や理性をこえたところで号泣させられる、というパターンも支払いの甲斐を見つけることができる。)

あとねえ、安さんが赤鞘じゃなかったことなど、つまらないこともズッと引っかかってしまっていた(「シン・ウルトラマン」で、カラータイマーの無いウルトラマンを悔やんでた人たちの気持ちがわかった気がした)。そもそも、先述のソースだと、講談や映画など、いわゆるおなじみなアレコレは本作に於いてはあんまり反映されていないんです。だからタイトルにある「新説」は、「異聞」とかにしてもらいたかったかなー。


仲入り後、第2部は舞踊レビュー(安兵衛とは無関係)なのだが、ここでさっき菅野六郎左衛門とシアター停車場の劇場支配人の二役をやってた老役者さんが「夜明けの停車場」を歌い出し、ああ、なかなか石橋正次の特徴をよく捉えていて、細かすぎて伝わりにくいマニアックなハイクオリティだな〜と思って聴いてたら、ご本人だった!

石橋正次さんが出てたのか!最後列はこれだからなあ!遠くてお顔がよく見えねえんだよ!ンまぁ、これで、じゃっかん元が取れたかなと。(なにしろ前もってなにも頭に入れてなかったんで、ならではのお得感)

続けざまに若い衆の「スーダラ節」(もりいくすおの大好きな曲)のダンスもあり、機嫌がだんだん良くなってまいりました。

しまいにはゲストの浅野和之さんが「ゲバゲバ90分」のテーマ(もりいくすおの大好きな曲)でマイムダンス(自分で釣ったマグロを寿司にして客に出したら不味かったダンス)をやってくれて、心の中で「わかったよ負けたよ!あたしのために気遣ってくれてありがとう(妄想)!8,000円は請け合いましょう!」という気分になり、猿之助(は、基本、芝居には出ていない)が昭和枯れすすきで踊ってるころには、すっかりすべてを容赦していた。


カーテンコールのアフタートークで猿之助丈が言うことには、大衆演劇の衣装などの手配やら、今回のような構成をまっとうするには歌舞伎の世界の人たちにはいろいろご苦労があったようで、ベテランスタッフも手弁当でいろいろ頑張ってくれたという。

猿之助も、昼の歌舞伎座に出たあとテレビドラマの収録に行って、夜はラジオでその後飲み会、と忙しいのに博品館に出てる。

…「ンじゃあ、ご祝儀」という気持ちは、湧いてくる。


…でもなー。劇中劇なら、もうちょっと違うタイトルにしてほしかったかな〜…

それでも、出かけてたけど、きっと。笑