「12時間超ワイドドラマ 大忠臣蔵」の版間の差分

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森村誠一の原作がそうなのか、いろいろ目新しく、面白い作品。
 
森村誠一の原作がそうなのか、いろいろ目新しく、面白い作品。
  
たとえば日食、江戸の藩士の火消しエピソードにはじまり。勅使の前で具体的に赤っ恥をかかされる[[浅野内匠頭|内匠頭]]。[[大野九郎兵衛]]の扱い。[[山吉新八郎]]の存在感。[[不破数右衛門|数右衛門]]の扱い。吉良家の用人と上杉家の派遣社員との関係。幸四郎内蔵助は京都の遊興をしみじみ「楽しかった…」と振り返る。討ち入りはほかの作品には無い浪士たちによる「ののしり誘導作戦」。吉良(芦田紳介)は高家筆頭肝煎の面目を守り、最終的に切腹。墓前にむき出しの生首etc..と、さまざまなオリジナリティで12時間をおもしろくしようと工夫をしている。
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<以下ネタバレ>
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日食にはじまり、江戸の藩士の火消しエピソード、勅使の前で具体的に赤っ恥をかかされる[[浅野内匠頭|内匠頭]]。[[大野九郎兵衛]]の扱い。[[山吉新八郎]]の存在感。'''吉良家の用人と上杉家の派遣社員との関係'''。吉良側の「浪士仲間割れさせ作戦」。幸四郎内蔵助は京都の遊興(めくら鬼ばかりでなく、複数の花魁の股の下を匍匐前進する遊びも出てくる)をしみじみ「楽しかった…楽しかった…忘れられん」と振り返る。討ち入りはほかの作品には無い浪士たちによる「ののしり誘導作戦」。吉良(芦田紳介)は高家筆頭肝煎の面目を守り最終的に切腹。墓前にむき出しの生首。お預けの屋敷の内と外による凧揚げ(泣かせる)。眉毛が薄くアイシャドウが濃い内蔵助etc..と、さまざまなオリジナリティで12時間をおもしろくしようと工夫をしている。
  
 
定石通りじゃないシークエンスが細かく色々あるので、目が離せない、というか油断が出来ない。
 
定石通りじゃないシークエンスが細かく色々あるので、目が離せない、というか油断が出来ない。
  
展開がリズミカルで見ていて心地よく、中だるみもなく、人気番組に恵まれる夜明け前の12チャンネルにしては「開局25周年」ということで相当がんばってるかんじがする。
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よく本サイトに於いて「遊びがない」と批判することがあるが、所謂「遊び」とはこういう事じゃないのかな、と思います。
 
 
ただ、なんというか、画面に華が無いと言うか、[[新春ワイド時代劇 忠臣蔵−決断の時|後年の同局の12時間ドラマの忠臣蔵]]に比べると、なんだか物置を覗いてるような薄暗い気分というか、色で表現すると「群青色」な作品。内容の雰囲気というより、絵作りが?
 
  
ビギナーをテレビの前に釘付けにするにはちょっときついかも。
 
  
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展開がリズミカルで見ていて心地よく、中だるみも少なく、人気番組に恵まれる夜明け前の12チャンネルにしては「開局25周年」ということで相当がんばってるかんじがする。
  
あと、メインキャストが近藤正臣<small>(この時47歳)</small>の内匠頭をはじめ、りくの岩下志麻やあぐりの松坂慶子<small>(この時アラフォー。何度目かの[[阿久里/瑤泉院|瑶泉院]])</small>など、無理矢理ビッグ・ネームを配してるかんじでイメージも'''年ごろも合ってない'''。(ついでに言うと「ええ!?」と思うくらい立花理沙(当時のアイドル)の演技が破綻している。)
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よくビジュアル化される講話より、「[[神崎与五郎|神崎東下り]]」など旅にちなんだ講話に着目しており、特に松本幸四郎の内蔵助と片岡仁左衛門の[[垣見五郎兵衛]]の「東下り」シークエンスは理想的な間合いやアレンジで(旅籠の廊下まで大名駕籠が入ってくるのがいいのかどうかわからないのだが)たいへん結構。
  
で、ルーキーが石原良純で、コメディリリーフが松本竜介というのも苦笑。
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講話よりも[[田中貞四郎]]、[[萱野三平]]、[[高田郡兵衛]]、[[毛利小平太]]ら、脱盟者の各エピソードが豊かに膨らまされているのも特徴。こころざし半ばで死んでいった脱盟者の討ち入りの姿を、死にゆく毛利小平太(史実的にも最後の脱盟者)の幻覚に見せるというエピソードはオリジナリティがある。
  
一方「歌舞伎座百年記念作品」ということでもある作品なので、要所要所のいい役には歌舞伎役者が配されているのだが、彼らの出番が、なんだか浮いて見えると言おうか、映画スターとの釣り合いがどっかギクシャクして見える気がする。
 
  
で、あとはもう、ほとんどが知らない役者さん。
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大事な屋内セットがいやに狭かったり、コメディリリーフが松本竜介ひとりで、彼のおとぼけはカノジョにつねられて顔をヨリ目にするくらいのサービスだったり(ラスト近くに原哲男が出てくるがふざけない)。若い登場人物に薹(とう)が立った(でも超メジャー)役者が無理くりキャスティングされてたり、メジャーなキャラを見たこともない役者が演じてたりするが、それらさえ鼻につかなければかなり見応えある12時間。
  
いろんな分野の人が一堂に会すのも忠臣蔵の醍醐味には違いないのだが、「岩下志麻」「竜介」「立花理沙」「幸四郎」「知らない人」という内容がハーモニーを作っておらず、「オールスター」というより「'''闇鍋'''」感が強い。おかげで内蔵助の影が薄くなり、彼の出番じゃないときの残像の無さもけっこう気になる(<ことによると幸四郎が垢抜けすぎて内蔵助役に合ってないのかも?)。とにかく'''キャスティングがもうひとつ'''。
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個人的には最初、配役に違和感があった。いろんな分野の人が一堂に会すのも忠臣蔵ドラマの醍醐味には違いないのだが、ふつうはそれがうまくいくと「役者の花畑」的な華やかさになるのだが、「岩下志麻」「松本竜介」「立花理沙」「松本幸四郎」「知らない人」という、闇鍋みたいな打ち解けないハーモニーは、花畑というより河原にいろんな種類の花の萼(がく)を放って散らかっちゃってるイメージである。そのためなのかなんなのか、どうも幸四郎の内蔵助の影が薄くなり、彼の出番じゃないときの残像の無さもけっこう気になる。(ま、ことによると幸四郎が垢抜けて都会的すぎて内蔵助役に合ってないのかも?)
  
とはいえ、「戦争と人間」の芦田伸介&高橋悦史親子が吉良と色部又四郎という関係なのは楽しかった。
 
  
  
ただ、このキャスティングに'''慣れれば'''オリジナリティあふれる、構成のちゃんとした、見応えのある作品。
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案外人気の高い昭和最後のテレビ版忠臣蔵。ヤフオクでビデオ(全6巻)が入手しやすい。
  
案外人気の高い昭和最後のテレビ版忠臣蔵。ヤフオクでビデオ(全5巻)が入手しやすい。
 
  
 
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1989]]
 
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1989]]

2009年9月20日 (日) 20:52時点における版

作品概要
制作会社 テレビ東京
公開年度 1989年
内蔵助役 松本幸四郎
評価 3ツ星


ところどころ入る城達也のナレーションがウソもホントも説得力たっぷりに語ってくれる。

森村誠一の原作がそうなのか、いろいろ目新しく、面白い作品。

<以下ネタバレ>

日食にはじまり、江戸の藩士の火消しエピソード、勅使の前で具体的に赤っ恥をかかされる内匠頭大野九郎兵衛の扱い。山吉新八郎の存在感。吉良家の用人と上杉家の派遣社員との関係。吉良側の「浪士仲間割れさせ作戦」。幸四郎内蔵助は京都の遊興(めくら鬼ばかりでなく、複数の花魁の股の下を匍匐前進する遊びも出てくる)をしみじみ「楽しかった…楽しかった…忘れられん」と振り返る。討ち入りはほかの作品には無い浪士たちによる「ののしり誘導作戦」。吉良(芦田紳介)は高家筆頭肝煎の面目を守り最終的に切腹。墓前にむき出しの生首。お預けの屋敷の内と外による凧揚げ(泣かせる)。眉毛が薄くアイシャドウが濃い内蔵助etc..と、さまざまなオリジナリティで12時間をおもしろくしようと工夫をしている。

定石通りじゃないシークエンスが細かく色々あるので、目が離せない、というか油断が出来ない。

よく本サイトに於いて「遊びがない」と批判することがあるが、所謂「遊び」とはこういう事じゃないのかな、と思います。


展開がリズミカルで見ていて心地よく、中だるみも少なく、人気番組に恵まれる夜明け前の12チャンネルにしては「開局25周年」ということで相当がんばってるかんじがする。

よくビジュアル化される講話より、「神崎東下り」など旅にちなんだ講話に着目しており、特に松本幸四郎の内蔵助と片岡仁左衛門の垣見五郎兵衛の「東下り」シークエンスは理想的な間合いやアレンジで(旅籠の廊下まで大名駕籠が入ってくるのがいいのかどうかわからないのだが)たいへん結構。

講話よりも田中貞四郎萱野三平高田郡兵衛毛利小平太ら、脱盟者の各エピソードが豊かに膨らまされているのも特徴。こころざし半ばで死んでいった脱盟者の討ち入りの姿を、死にゆく毛利小平太(史実的にも最後の脱盟者)の幻覚に見せるというエピソードはオリジナリティがある。


大事な屋内セットがいやに狭かったり、コメディリリーフが松本竜介ひとりで、彼のおとぼけはカノジョにつねられて顔をヨリ目にするくらいのサービスだったり(ラスト近くに原哲男が出てくるがふざけない)。若い登場人物に薹(とう)が立った(でも超メジャー)役者が無理くりキャスティングされてたり、メジャーなキャラを見たこともない役者が演じてたりするが、それらさえ鼻につかなければかなり見応えある12時間。

個人的には最初、配役に違和感があった。いろんな分野の人が一堂に会すのも忠臣蔵ドラマの醍醐味には違いないのだが、ふつうはそれがうまくいくと「役者の花畑」的な華やかさになるのだが、「岩下志麻」「松本竜介」「立花理沙」「松本幸四郎」「知らない人」という、闇鍋みたいな打ち解けないハーモニーは、花畑というより河原にいろんな種類の花の萼(がく)を放って散らかっちゃってるイメージである。そのためなのかなんなのか、どうも幸四郎の内蔵助の影が薄くなり、彼の出番じゃないときの残像の無さもけっこう気になる。(ま、ことによると幸四郎が垢抜けて都会的すぎて内蔵助役に合ってないのかも?)


案外人気の高い昭和最後のテレビ版忠臣蔵。ヤフオクでビデオ(全6巻)が入手しやすい。