おしゃれ大作戦

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作品概要
制作会社 東宝
公開年度 1976年
内蔵助役 由美かおる
評価 2ツ星
公開当時のパンフレット


内容

 あらすじ:女生徒ばかりの洋裁専門学校「浅野文化ドレメ学院」が企画していたファッションフェスティバルが、学校の出資者・吉良豪蔵(藤村有弘)の陰謀で、スポンサー業者が辞退。再開に必要なカネを出してほしかったら…と浅野多恵子主事に言い寄る吉良。妻がねとられたと思い込んだ失意の中、自動車事故で死ぬ学長・浅野卓郎。

 その後釜に入ったのは吉良。夫も学校も失った多恵子はショックで入院。

 学校は「花嫁養成所」としてリニュアルされることとなり、気に入らないスタッフや生徒は容赦なくクビにするという。

 人気デザイナー講師の大石由里子(由美かおる)は、彼女を慕う46人の生徒たちとともに学校の奪還を画策する。


 喜劇映画。クレージーキャッツや若大将の映画シリーズで有名な古沢憲吾が監督した最後の作品。約20年後に亡くなるまで映画を撮っていない。脚本はTVドラマ「池中玄太80キロ」('81)の松木ひろし氏。


 面白かったか、なかったかと言われれば、面白かった。


よいところ/アレなところ

 同じく女子ばかりが活躍する後年の「OL忠臣蔵」よりもはるかに忠臣蔵しているし、話の流れや、役者に重ねた忠臣蔵の登場人物のオマージュ加減もそこそこ良くて、そこに古澤監督のテンポの良いタッチが、そこそこかろやか。


 キャスティングもなかなか。当時東宝の新しい特撮映画で活躍の由美かおるや、テレビでおきゃんJKだった岡崎友紀もチャーミング。技巧派・沢田雅美のべらんめえでケンカっ早い呑兵衛ヤスも頼りがいがあるし、東映映画で女番長(スケバン)シリーズをやってた杉本美樹を持ってきたり、「ハレンチ学園」の児島美ゆきなどかつて人気シリーズをささえた(<彼女たちが活躍したテレビや映画のシリーズは本作出演時ですべて過去のコンテンツ)そうそうたるお転婆スターたちにズラッと「来てもらった」かんじ。

 そこに若手も導入して、グラマーなホーン・ユキ、東宝ドラマで人気の長谷直美など、こたえられないラインナップ。

 中でも、かつて「スーパーロボット レッドバロン」で健康的なパンチラアクションをお茶の間に披露した牧れい演じる萱野三子(サンコ、と読む。このほかにもシンコよも子げん子スケコなど、ネーミングが乱暴w)が、興奮するとすぐおしっこがしたくなるキャラを好演してるのがフェティッシュでピカイチだった。

 特に潜入捜査で机の下に隠れてる時、東八郎扮する大野事務長の足がおっぱいにあたって「はてな」と靴のつま先でまさぐられ「感じる〜」と言うシーンは素晴らしい。

 本田みちこさん(小野寺幸江)というひとがかわいくて、パンチラのハイキックのポーズ(Y字開脚)でトラックをヒッチハイクするのだが、もう、あたしには思い出。

 ことほど左様に、ほどよく品のない作品なのであります。


 これだけのメンツを揃えたのだから、彼女たちの往年のご活躍をオマージュできるようなパロディも入れてもよかったんじゃないかと思う。本作では杉本美樹は不良っぽくもなければ拷問もされない。児島美ゆきのスカートはめくれない(パンツ姿だし)。牧れいもアクション係ではない…。必ずしもパロディが良いなどとは思っていないが、言いたいのは、せっかく来てくれたのにどちらさんも類型的な個性を与えられ「出てるだけ」…というのがいかにも、もったいない。(もっとも昔の日本喜劇はストーリーラインの妙よりも、"出てるだけ"でうれしい俳優の織りなす妙を、たよりにしていた感じはある。)

 あと、ファッションにもっとこだわればよかったのに…と思う。ファッションほどセクシャリティを雄弁に語るアイテムもないのに、洋裁学校が舞台にもかかわらず、当時の流行に押されるまま(<タートルネックにオーバーオールとか、丈の長いワンピやロングスカートといういでたちがもっぱら)、ホッパンやタイツなど、美脚やボディラインが強調されるファッションも皆無で、それがお色気コメディを狙った割にはいたずらな制限を与えており、画面がさみしい。(つまり、ファッションの流行とお色気をからめるなら、企画自体が10年遅い!)


 ついでに言うと、本作のお色気シーンはたいがい、男性陣によるセクハラなどによる「行為」でのみ表現されている。パーツがクローズアップされることも無いので、ホーン・ユキも宝の持ちぐされ。(もっと言えば、前述の東八郎と牧れいのシーンにしても、特撮ファンの間では貧乳で高名な彼女に、わざわざそのシーンを当てるのもどうかと思う。)

 せっかく用意したお膳立てや道具で、うまく遊べていないのであります。


考察

 こうしてみると、やはりこうしたジャンルは東宝の「品の良い」お家芸から遠い。


 映画史にさん然と輝く「しっかりした喜劇映画」をかつてリリースしてきた東宝としては、このような「他社(東映)のような」やんちゃな芸風の喜劇作りは徹底的に苦手だったのではと思う。時代が許してるのに、頑なにカルト的なノリに手を出さなかった?(そもそも「忠臣蔵×お姐ちゃん」という発想自体が、当時としてもすでに硬いし、古い…。)

 こうした消化しきれない板挟み感において、右っぽい古澤監督は、こんな軟派な風潮が今後も続くようならもう、いやんなっちゃったということで本作を最後に、メガホンを置いてしまってるのじゃないだろうかなんて勘ぐった。(附言:でも、この翌年にテレビの「小さなスーパーマン ガンバロン」の監督やってるから、シンプルに需要の問題か…。)


 検討稿ではメインで暗躍するはずだった先述の大野事務長も、公開時の出番は、当時テレビで人気絶頂のマジシャン・伊藤一陽の清水一学秘書に出番をあらかた取られており、伊藤はひんぱんに登場しては流行語「なにかごしつもんは」を連発している。

 タモリが「空飛ぶモンティ・パイソン」でデビューし、「欽ドン」が東村山音頭としのぎを削っていたこの頃、もはやテレビの人気者に力を借りないと笑いが取れなかったのかもしれません。(これまでも、脱線トリオや藤田まことのような人気者が端役で出て、作品を助けることはあったが、この作品における伊藤ほど出ずっぱりではなかった。<(附言)でも、エノケンや堺駿二などコメディリリーフが、出ずっぱりで「大したことのない」作品を助けていたというような、喜劇映画の特徴があると言えば、ある。)

 テレビで人気絶頂のドリフターズが、本作公開前年(1975年は洋画興行収入のほうが、邦画興行収入を越えた年だそうであります。)にシリーズ映画の幕を下ろしている。そのかわり?に翌77年にフジテレビで「ドリフ大爆笑」が開始。

 そのドリフ映画を併映していた「男はつらいよ」シリーズだけがつまづきながらも頑張っている(個人的には森川信の死後は75年の「寅次郎相合い傘」までが、なんとか全力疾走できてた気がする。ン〜「夕焼け小焼け」までかなっ)。そんな時代背景。日本喜劇映画ひん死の時代であります。


 つらいところだったでしょうが、東宝も忠臣蔵も、そしておねえさんも好きなもりいには、ラブリーなパッケージでありましたww。


余談

検討段階の台本

この作品については、まず「大喜劇ウーマンリブ じゃじゃ馬忠臣蔵」なるタイトルの東宝の脚本を2009年に手に入れたことが、項目を設けるキッカケになりました。

ところが、その本は製作者と松木氏のみクレジットされてるが、監督やキャストはまるっきり空欄のままであるなど不完全な「検討稿」で、作品についての詳細を知りたくて、ネット検索してみたものの、まったく記録が見つからなかったんで、本作はてっきりお蔵入りになったと思いこみ、「大喜劇ウーマンリブ じゃじゃ馬忠臣蔵」のタイトルのまま幻の作品として拙サイトにてしばらく紹介するにいたりました。

それからしばらく経って、なんと由美かおる主演で改題され、立派に公開されておりましたことを、おタレコミによって知ることができました。ありがとうございました。2011年に加筆、訂正。

2014年、某氏のご厚意により鑑賞がかないました!それは夢のように嬉しかったです!\( ^▽^ )/