むっちり討ち入り 桃色忠臣蔵

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 たとえば、パッと手に取ったDVD「初祝二刀流」が、見てみたらあんまり面白くなかったと。そう思ったとします。

 でも、制作された時代背景を確認してみると、その作品が生まれたのは戦時中で、映画法がバキバキだった時の作品だったりするわけです。

 それじゃ、しょうがねえやと。

 モノには事情というものがある。


 果たしてこの作品・ピンク映画「桃色忠臣蔵」に、清水大敬監督に、どんな事情があったのだろう。


 本作が上映されたポルノ映画館・上野オークラ劇場は、不忍池のほとりにある愉快なハッテン場であります(要確認)。

 ピンク映画といえば、のちにたいそう出世した人も多くいらっしゃいますから、映画監督の登竜門としては、たいへん良い修練の場。

 鼻息の荒い若い監督が、腕だめしに熱い作品をリリースする中、ベテランの清水大敬監督は、劇場にいらっしゃってる高齢のお客様向けに、ひとつ息抜きの作品を、と思ったのかもしれません。

 それで、本作のような、なんとなく面白そうな空気の中で、奇抜さもハッタリも仕掛けもなにもない作品をお作りになったのかもしれません。


 でもね〜…、せめてピンク映画なんだから、少しくらいはエロい気持ちにさせてほしかった。

 オフィスや印刷工場といった、あたしに言わせりゃ、せっかくのベストロケーションの中で、セクハラシーンもねちっこくなく、OLものとしても、着衣・制服ものとしても、熟年ものとしても、肩透かし…というより、おいしい素材に監督が気づいてないかのような、ひじょうにタンパクで時短な演出(1シーンだけ、アレ?この濡れ場は擬似ではない?という尺のがあったが、それはそれとして、工夫のない演出であることには変わりない)で、自分で用意したお膳立てをスルーしている。

 Tバックのパンツに生足という一本槍も、ご趣味なのかもだが、全体が全体だからテンプレート的な浅い了見に見える。

 清水さんは、最近はAVとか観てマスターベーションとかしていないんじゃないかなあ、などと、刮目すべき部分が無いぶん、観てる最中に気が散って、そんなことばかり考えるのでありました。


 ピンク映画云々以前に、カメラ割りやアングル、カラーコレクションまで、まったくこだわりが感じられず、出演女子が5人でダンスするシーンもあるのだが、持ってるチアーポンポンが異様に小さくてショボイし…。

 作品によるけど、定点で立ち話が長いシーンが多い映画って、アレですよね…。本作、それなんだよなぁ…。立ち話を少し割愛してでも、エロシーンにこだわってほしかったなあ。


「ま、こんなところでいいだろう」という、よく言えば早撮り。悪く言えば諦念に満ちた仕事ぶり。


 あ、内容はですね…

 現代劇。悪らつ極まりない実力者・吉良社長の商社が、弱小の会社をいじめるので、OLたちが奮起して討ち入る話。

 セクハラが激化して、水谷あおいが吉良社長の愛人にされてしまうが(吉良役の役者さん、とっても良い味わいの初老なのにエロい絡みが薄いんだよなあ。)、彼女が吉良の元から逃げ出して仲間に匿われたりであるとか、ムショ帰りの主人公の海空 花(大石)が、過去に吉良の用心棒を過失致死させたことから、新しい勤め先に「この会社には殺人者が働いています!」など嫌がらせのビラが貼られるなど、非常にスリリングな筋を自分で書いておきながら、清水監督、映像化する際に、そのビラが建物に2枚くらいしか貼ってないとか(反社なら建物全体を覆い尽くすでしょう!)、なんかもう、「げんきがない」のであります。

 そう。ポンポンの大きさも含めて、なにからなにまでいろいろ、げんきがないのであります。(ちなみにコメディ映画です)

 脚本、監督、音楽までやってるのに。


 清水監督はもともと俳優さんで、劇団NLTにいらしたそうで、そこを独立してから、黒澤映画の「影武者」に出たりした。

 若い衆を束ねて芝居の公演を打つなど精力的で、そのころ、あたしの従姉妹は清水さんのお芝居に、客演としてお世話になったことがあり、ダンス振り付けと主演格のおしごとをいただいた。

 その後、清水さんはAV監督(&男優)に転身したが、あたしゃ清水監督作品は嫌いではなかった。

 なんか、絡むセクシー女優さんが、向井亜紀子とか、あたし好みなことが多かったのだ。監督ご自身の絡みもねちっこくて好きだった。面白かったし。

 とにかく、いつでも意気軒昂なイメージが強かったのであります。そんな個人的感想。


 よわい72かぁ…。

 コンディションは存じ上げないが、まだ若いので、年齢でおざなりをオミットするのは、監督に対して失礼な気がするんだよなぁ。それが「事情」だったとは思いたくない。

 監督を師事する若手が、本作の脚本で、元気にリメイクを作るっていうのは、ナシかなあ。ストーリー自体は悪くない気がする。


<附言>

 高い評価をしたあとで、日が経つだに不満が大きくなっていくのが駄作の特徴だが、本作が頭に浮かぶときは、不思議とイヤじゃない。コロコロとした海空 花の拙い演技が好感度を持って脳内再生される。

 もしかしたら成功してる作品なのかもなあ。