元禄美少年記
作品概要 | |
制作会社 | 松竹 |
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公開年度 | 1955年 |
内蔵助役 | 柳永二郎 |
評価 |
「美少年記」なんていうタイトルなので、チャラい映画なのかと思ったが、身分の低い矢頭右衛門七を主人公にすることで、徹底した階級差別を描いたなかなかの力作でありました。
いつもセリフでしか表現されない「若い」「身分が低い」といった事柄が、一体どういうハンデなのかが具体的に示される。
どの忠臣蔵映画も、浪士になったとたんに、たいがいはみんな平等になり、おたがいスマートな関係を保つものだが、この映画では佐野正平(架空?)、寺坂吉右衛門、右衛門七の3人は、いつもお歴々の内密な相談からはハズされ、神崎与五郎など理解者はいるものの「誠心誠意つくしても死ぬまであごで使われる」演出がなされている。(右衛門七も「足軽」と言うことになっている)
主人公・右衛門七を演じるのは17歳当時の中村嘉葎雄。 たしかに、なかなか美少年には違いないのだが、イケメンぶりは特に本編で強調or発揮されることはない。だからといって「元禄階級差別記」と銘打つわけにもいかず、無難なタイトルにしたのかと推測いたします。
講談や映画のように、右衛門七が主税と友達という設定にはなっておらず、義盟に加えてもらうだけで一苦労する。
父・長助の自害と引き替えになんとか仲間に加えてもらえるが、果たしてその甲斐はあったのか・・・
身分の低い3人がいつも悔しい思いをしてるのだが、手柄を立てようとしてもヘマをやり、そこにまた仲間からの中傷がかぶせられるので、また凹む。
この、差別される側の負のスパイラルがうまく構成されており、見ていて一緒にくやしくなる。
終盤、右衛門七がガールフレンドから茶会の日取りをゲットするも、それさえも「ああ、大高から聞いて知ってるよ」的に取り合ってもらえない。
ここらあたりで、佐野が脱盟。
寺坂も討ち入り当日、右衛門七と「裏門の外の警備」という、本人たちが納得のいかない配属をされて最終的に逃亡。
右衛門七は吉良邸に奉公しているガールフレンドの鼓の合図を聴き、持ち場を離れて邸内に飛び込み、音の導きによって炭小屋に吉良がいることを突き止め、最終的に手柄となる。しかしここでも仲間に吉良の居場所を伝えるだけで右衛門七は新見弥七に斬られたガールフレンドを介抱することで一番槍をほかにゆずる。
とはいえ、本懐を遂げたあと、切腹の日には水野家に預けられたメンバーみんなが、右衛門七に敬意を払っていた。
経過が興味深い作品であり、最終的に、辛抱すれば良いことがあると言いたかったのか、差別する側ってこんなにイヤなかんじ(内蔵助を演じる柳永二郎は吉良や柳沢をやってる人だ)って言いたかったのか、人の事を大切にしない組織なんて脱盟するがヨシと言いたかったのか、否、虐げられてる扱いも手柄で変わるということか・・見る側によっていろいろ感じ方がまかされてる気もいたします。