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中山安兵衛

713 バイト追加, 2021年6月24日 (木) 04:27
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前回の日活における敗戦の色が濃くなってきたときに公開されたアラカン安兵衛と、この新東宝の戦後GHQ安兵衛(7年差)には、戦前と戦後でオープニングから如実な相違がある。[[初祝二刀流「高田馬場前後」改題|前回の日活における敗戦の色が濃くなってきたときに公開されたアラカン安兵衛]]と、この新東宝の戦後GHQ安兵衛(7年差)には、戦中と戦後でオープニングから如実な相違がある。
戦争孤児のありようを意識しているのか、安さんは史実の家庭環境ではなく親の愛情に恵まれなかった身寄りのない設定になっており(おじさんのちぎりを交わした菅野はいるが、[[ 酔いどれ二刀流|安さんを育ててくれた恩義という設定も他にあったりして、みなしご設定]]は珍しくない)、シングルマザーの家系を助けるために神社の飴売りをして働く子供・コウメちゃんにやさしく声をかけ、長屋に帰ると近所の風邪引いてる子供にその飴玉をあげたりする。は珍しくない)。
長屋ではシングルマザーの家計を助けるために神社で鳩のマメ売りをして働く子供・コウメちゃんに、やさしく声をかけ、長屋に帰ると近所の風邪引いてる子供に飴玉を見舞いにあげたりする。(鞍馬天狗が当たり役のアラカンには、子供とのショットがよく似合う。)
やがておなじみの高田馬場のシーンとなるが、おじさんが果たし状を受けた仔細を下男から聞いた安兵衛はふつうに準備しておかげで前半は、優しくてかわいい雰囲気が漂う。  やがておなじみの高田馬場のシーンとなるが、おじさんが果たし状を受けた仔細を下男から聞いた安兵衛は、ふつうに準備して'''果たし合い会場におじさんと一緒に出向く'''。
長屋の連中とわっしょいわっしょいと走っていくシークエンスも有名だが、このパターンも講談にあるっちゃあ、ある。そもそも史実では一緒に出かけているそうである。
さてこの決闘シーンには特徴があり、安兵衛の奮闘もあって見事おじさんは村上をやっつけるが手傷を負ったおじさんもまもなく息を引き取る。この死んでいく過程にゆっくり時間を取ってあり、また累々と遺骸が横たわる馬場に駆けつけた村上兄弟のお父さんが死んだ息子の手を取り泣き崩れ、闘いや死の無常観をあおるBGMがかかる中、安兵衛は呆然と馬場を後にする。そしてこのシーンにもタップリと時間をとっている。戦前まではチャンバラ映画で人の死をこうまで重たくリアルに扱った映画は無い(要確認)。さてこの決闘シーンには、さらに特徴があり、アラカンの殺陣は華麗で評判なのだが、ここではおじさんの決闘をサポートするために、[[中津川友範]]や村上(弟)を相手に、おじさんの方をチラチラ気にしながらやっつけるので、それほど魅力的には仕上がってない(というか、リアリティ追求?)。 やがて安兵衛の奮闘もあって見事おじさんは村上をやっつけるが、手傷を負ったおじさんもまもなく息を引き取る。この死んでいく過程にゆっくり時間を取ってあり、また累々と遺骸が横たわる馬場に駆けつけた村上兄弟のお父さんが、死んだ息子たちの手を取り泣き崩れ、闘いや死の虚無感をあおるBGMがかかる中、安兵衛は呆然と馬場を後にする。そしてこのシーンにもタップリと時間をとっている。戦前までは安兵衛モノで、人の死をこうまで重たくリアルに扱った映画は無いのではなかろうか(知る限りでは)。
大きくなる評判をよそに安さんは村上家を訪ね、焼香をする。
前半愛嬌のあった安さんがたった1日で人殺しを経験し、苦悩し、悩み、なんだか後悔する。 唐突に居酒屋の女にコクって、フワ〜ッと終わっちゃう。前半愛嬌のあった安さんがたった1日で、たくさんの死と向き合い、苦悩し、悩み、なんだか後悔の色さえも垣間見える。
時代背景を把握してないと相当の「なんだこりゃ」感が残る。で、唐突に居酒屋の女にコクって、フワ〜ッと終わっちゃう。
時代背景を把握してないと、そこそこの「なんだこりゃ」感が残る。
当時は「チャンバラ禁止令」と呼ばれた占領軍の検閲の厳しさから自粛ムードが高まっていたそうだが、本作はめずらしく(?)のびのびとチャンバラをやっている。そのかわりに、見たチャンバラを台無しにするかのような後味の悪いエクスキューズで徹底的に決闘のあとに表現される"虚しさ"が安さんを包み込む。
これじゃその後どのツラ下げて吉良を討ちに行くのか、じゃっかん辻褄に「?」となる。当時は「チャンバラ禁止令」と呼ばれた占領軍の検閲の厳しさから、自粛ムードが高まっていたそうだが、人気の安兵衛モノにあえて史実に基づくようなリアリティを強調することで、あるていどの殺陣を許してもらったのかもしれない。その上で、わざと後味の悪いシークエンスを持ってきて、徹底的に決闘にまつわる"虚しさ"や"厭戦感"を観客にアプローチする狙いだったのではなかろうか。
でも、これじゃあ、どのツラ下げて、その後吉良を討ちに行くのか、じゃっかん辻褄に「?」となる。
この戦中戦後のアラカン安兵衛の映画を私は「中山安兵衛 戦争前後」という二部作としたい。

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