討ち入り〜8人の志士たちの挑戦〜
作品概要 | |
制作会社 | TBS |
---|---|
公開年度 | 2008年 |
内蔵助役 | 浜田雅功 |
評価 |
バラエティ番組「リンカーン」で2週にわたって放送されたコント。出演:浜田雅功、雨上がり決死隊、キャイ〜ン、さまぁ〜ず、ぐっさん。
これたぶん、作家さんが忠臣蔵をステータスとしてやっておきたかったんじゃなかろうか。ドリフもひょうきん族も通ってきた道だから。
ただ、やるならちゃんとやれば良かったのに、お歴々が出演してるこの番組で、コントに松ちゃんが不在(なぜ?)という時点でまず残念。これにかぎって松っちゃんがいないという状況に、シリーズ末期の「空飛ぶモンティパイソン」においてジョン・クリーズが出演拒否したのが想起される。松っちゃんも内容を評価しないから放棄したのかな?と邪推をしてしまう。ココでまず見る側の期待が半減。
また、見かけは忠臣蔵だが、実は内容が忠臣蔵ではない。こういうときは夕やけニャンニャンでさえ下敷きはちゃんと忠臣蔵でやるのに、なにかワケでもあるのか、おかげでコント史においてはいささか浮いた存在。
そんな不完全なこの作品を、わざわざ辛い点をつけてまで引き合いに出すのは、お笑いファンとして悔しかったから意地悪く見せしめにしたかったのと、同時にこの豪華なメンツで忠臣蔵的なことをしてもらった事への単純な喜びと感謝の気持ちから。
おはなしは主君の仇討ちならぬ、亡き友(松本人志)の仇討ちという設定。忠臣蔵の裏側で、もうひとつの吉良家への討ち入り計画があったというサイドストーリー(コレだけ聞くとすごくおもしろそう(w)。
そういう設定は一応説明され(そのいきさつはナレーションのみで語られ、コントに入る前にわざといちいち繰り返される。そのOPの説明Vはメンバーひとりひとりの昼間の顔をシリアスな時代劇のワン・シーンのように凝って撮っててクオリティが高い。要は後半のズッコケコントとの緩急、温度差で面白くしようとしている)、そのあと吉良邸の門前でおこなわれるドタバタコントがメイン。
「8人で討ち入りに来たのはいいけどハシゴが無いから吉良邸の塀を越えられないで困る」というのがきっかけで、そのあとのどうするのかが、オモシロどころなのだ。
で、どんなギャグやボケのオンパレードになるのかなーと思って見ていると、とりあえずメンバーの無計画性に対してリーダーの浜ちゃんがキレて、仕方なく6人が人間ピラミッドして「重い重い」「痛い痛い」言う。邸内の人間が騒ぎに気づいて「ダレだ!!」って声がするんでみんなちりぢりに逃げて1本終わり。コントと言っても以上のような計3分ほどの「塀越え」に挑戦するショートコントが説明Vとともにくりかえされる趣向。
だから「2週にわたって」とは言ったものの別に続き物ではなく、メインコーナーとメインコーナーの間にちょいちょいブリッジ的に入れられる、計3回のバリエーション。
ほんとは浜ちゃんの、使えない部下達への切れ方の見せ所であり、ごっつええの「ゴレンジャイ」みたいなトコロに落ち着けばもっと面白かったのかもしれない。
それにはみんなの置かれてる状況や、メンバーの個性が際立ってないと成立しない。
今回の場合、浜ちゃんもこの背景でどうふくらましてダレに怒ってイイか困ってるようで、あげくいじりやすい宮迫ばかりを責めるから二人コントになってしまって、返しも「なんで叩くんですか」系の繰り返しで薄い。ほかの何人もがただ「居るだけ」。(番組レギュラーの芸人さんたちは特に当時としては共演が珍しいメンツだったがそれがかえって強くツッコめなかったり抜きん出てボケたり出来ない遠慮も生んでおり(なのか?)、それがそのまま消化不良なコント作りに反映されていると見え、きっと、作家や演出家が、狙った通りには膨らんでいないと見受けられる。)
とはいえこの討ち入り、コント自体はつまらないわけではない。
長い前フリ要らないからもう2〜3回ギャグシチュエーションを増やして全5回くらい、ふざけ続けてくれたら後味も変わったと思う。
結局レギュラーメンバーで討ち入りをやるには人数が足りないから設定を新しくしたのではないかとも思われるが、ドリフだって5人しかいないわけだし、この数年も前に「はねるのトびら」で忠臣蔵を扱ったときに、人数がたりなくても若手(当時)たちは忠臣蔵コントをまっとうしてるし、「笑う犬の生活」にいたってはウッチャンひとり(!)でやっているのだ。それを考えると(前述の番組と構成作家はかぶってる人もいるのに)、リンカーンのコレはいかにも惜しい。
いきあたりばったりの、芸人同士の化学反応にばかりに寄りかかった、工夫のない構成で済まそうと言うなら、いつも無駄に大勢芸人を出すクセの番組なんだから、ひとつ思い切って47人芸人をズラリとそろえてしまえば良かったのだ。内容がつまらないなら、見かけでカバーできたはずである。
ともかく、これだけの手練れメンツでロケまでして「このくらい」なかんじの"企画倒れ"っぽい不器用な有様は、この番組の特徴とも言え、いつも違和感をかもしだしていた。
この「星ひとつ」はコントや出演者よりも、この番組自体のセンスやクオリティへのじれったさへの評価な気がしてきた。なんか、言い過ぎてスイマセン。
出てた人達は、みんな大好きなんだがなあ。