赤穂浪士(NHK)
| 作品概要 | |
| 制作会社 | NHK |
|---|---|
| 公開年度 | 1964年 |
| 内蔵助役 | 長谷川一夫 |
| 評価 | |
テレビが「電気紙芝居」と言われ、映画陣から蔑視されてた頃の作品(※註01)。初期のNHK大河ドラマ。(当時はまだ、「大型ドラマ」という言い方をしていたみたい。)全52回。
現存するビデオは第47回「討ち入り」と総集編のみ(※註02)。で見たのは第47回のほう。総集編のほうをリリースしてくれよぉ!
1本しか見てないからイイも悪いもないが、延々とチャンバラですがさすがにこのころは殺陣がしっかりしてて見栄えがいいですな。ほかの作品と見比べても見劣りいたしません。知的なおじいちゃん役ばっかりの志村喬(古い映画ではマヌケじじいが多い)が槍をつく姿を見て「あ、そう言えばこの人、七人の侍のリーダーだった」と思い出すのでありました。
(まったく感想になってないが、討ち入り回は内容がほとんど、無い。でも、いまどっかいっちゃったDVD探して今度もう一回見てみます。)
平均視聴率は40%で、この「討ち入り」は70%という空前の記録をしめしたとか(週刊平凡S40.1.7号)。
本作は全体的に、原作にある赤穂浪士の抵抗や堀田隼人の虚無と過激さ(=歴史への批評性)を、脚本の村上元三がお茶の間向けにそうとうソフィストケイトして脚色したんだそうであります。(「近代日本と「忠臣蔵」幻想」P233 宮澤誠一 青木書店)
「最初の打ち合わせのとき大佛先生から"自由に脚色してください"と言われたが、かえって難しい仕事になった。赤穂事件は手紙をはじめ参考書が揃ってる。こだわると自由に脚色できないから講談のネタも取り入れたし、原作にない人物をずいぶん創作した。ただし事件に関しての解釈は原作を忠実に守っている。」と、村上氏は概略そのように話している。(「NHK」S39.6.15発行号NHK広報室)
前年に放送したドラマ「花の生涯」(S38.4〜12月放送)放送中に成功の見通しがついて、8月頃に「次、どうしようか」と議論を重ね、9月に「赤穂浪士」やろうってなってからキャスティングに入って、当時の歌舞伎界、映画界、新劇界、テレビタレントまで揃えるのだから、なんとなく時代の気合を感じる。
それでもやはり、「かくて国鉄まがいのダイヤならぬ、明細なスケジュール表が作られ、七夕さまのように、全員ばったり顔を合わせる、貴重な一時をねらって深夜のビデオどり」と、なったとか(週刊朝日S39.2.28号)。
映画式に同一セットで五回分ほどをまとめて抜き取り収録。(井上博D「NHK」S39.6.15発行号NHK広報室)
徹夜で録って朝を迎えると、またみんな自分の畑仕事に去っていき、四十七士は半分くらいになっちゃうという、そんなすったもんだに、長時間全部を付き合ってた長谷川一夫もいいかげん(穏やかに)苦言を呈したという(「実録テレビ時代劇史」野村康一 ちくま文庫)
そのほかにも、日本画家の新井勝利先生にお伺いを立てながら気を使ったはずの時代考証も(新井先生は本作のオープニングタイトルの絵もご担当)、浅野家の家紋(違い鷹の羽。の入った小道具でしょうか)が、運んでる途中で180度ひっくり返って、左上のぶっ違いになって放送し、視聴者から怒られたとか、雨のヘリコプターの飛来で、羽音が入ったまま、千坂兵部と小林平八郎(実川延若と芦田伸介)の釣りのシーンがオンエアになった(週刊朝日S39.2.28号)とか、黎明期のテレビの現場は、なかなかてんてこ舞いだったようす。
註01…映画界がテレビを下に見ていたのもあるが、ドラマに自社のスターが出てしまうと映画への客足に響くと、恐れてもいたと言う。(「大河ドラマの黄金時代」春日太一NHK出版新書)
ただ本作においては、会社をすっ飛ばして、紀尾井町の長谷川一夫邸に直接オファーして奇跡的に"ふたつ返事で"承諾を得ている(当時映画スターは天上人あつかい)。「テレビに出れば地方にいる人達にも毎週見てもらえる」概略そのような回答だったとか。(「実録テレビ時代劇史」能村庸一 ちくま文庫/「大河ドラマの黄金時代」春日太一NHK出版新書)
註02…都市伝説?最近のWikiには「このころに総集編は無い(次回作「太閤記」以降とされる)」と書かれている。(2025.11月現在)
しかし、いくら高級品(1時間100万円ほど(「テレビ屋独白」関口宏 文藝春秋刊))とは言えビデオテープを残していないというのはいかにも残念。土曜午後1時15分の再放送までは確実にあったようだが…。
<余談>
さて、音楽の芥川也寸志のテーマ曲は有名なんですが、放送当時は「あんな現代風なものではぶち壊しだ」という意見もあったとか。(週刊平凡S40.1.7号)
あたしが小学生のみぎり、映画「八つ墓村(松竹 1977)」のサントラのドーナッツ版レコードのB面「落武者のテーマ」聴いてたら(これも芥川作曲)、親が「赤穂浪士じゃん」て言うんで「八つ墓村だよ」と水掛け論を繰り広げたのをおぼえてます。
ものすごく似てて、40年くらい同じだと思ってました。
ちなみに「八つ墓村」本編でこのソックリ曲は流れません。きっと野村芳太郎監督は「赤穂浪士じゃん」って言ってボツにしたのかもですな w。
(ちなみに「赤穂浪士」のテーマ曲は、ガッツリと、映画「たけくらべ」(1955)の主題曲の使い回しです。)
余談が続いて恐縮ですが、のちの大河「武蔵坊弁慶」(芥川作曲)も似たオスティナート法であります。

