俵星玄蕃
俵星玄蕃【たわらぼし げんば】…元・尾張家の家来の浪人。
吉良家の近所(横網町)で道場をやってる槍の名士で、土(とか砂)の詰まった俵を槍で突いてポイポイ放り投げる「曲突き」という特技を持っている。
腕を見込まれて吉良家側から千坂兵部(とか小林)にスカウトされるが、そばやに身をやつしている杉野に同情を寄せてるので断る。杉野はなにを聞いても白状はしないが、玄蕃は彼のことを赤穂浪士と見込んでいたのだ。
現場が吉良側についてはたまらんと杉野は事情を内蔵助に話す。内蔵助は原惣右衛門にそう言って玄蕃の道場まで偽スカウトにやり、吉良の用人になることを避けさせる。
討ち入りの夜、陣太鼓の音を聞いて飛び起きた玄蕃は吉良邸へ討ち入りに駆けつける。そこでユニフォーム姿の杉野と再会。
杉野との再会のあと助勢を申し出るが、内蔵助から丁重に断られるので両国橋で上杉勢を単身、通せんぼする。
…というエピソードがオーソドックスだが、浪曲の内容によっては、偽スカウトの時もらった大金を元手にチンピラを集めて黒装束10人組の急ごしらえの助太刀隊を編成し訓練し、討ち入りの夜に駆けつけるが活躍しないで見てる(加勢を断られるから)というストーリー展開もある。
この自警団みたいなものについては、ほかでもいろんなユニットが組まれており、計7~800人が吉良邸の周囲や両国橋近辺に至るまで見張りをしていたとのこと。
その正体は浅野本家筋であるとか、加藤近江守からとか、松平大炊頭の一門、池田玄蕃のユニットであるとか、堀内道場の門人だとか、諸説あるが真相は謎。。
「大星由良之助」の「星」と俵を放る妙技から来た「俵」をくっつけちゃった名前。文化2年の刊行物にすでにその名が出ているというから、けっこう古いキャラクター。
三波春夫や柳亭市馬の十八番「元禄名槍譜 俵星玄蕃」。
浪曲の「前原伊助」にも出てくる。
映画やドラマで玄蕃と仲良しになるのはヤスベエだったり岡嶋だったりしてなぜか杉野が描かれない。
内弟子は中村藤馬。
関連作品
「血槍無双」1959(東映)