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中村仲蔵

9,829 バイト追加, 2021年6月30日 (水) 03:49
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中村仲蔵(落語)
歌舞伎役者の若き中村仲蔵(初代)の逸話。
血筋が役者でない割にはイイ筋で、創意工夫もいいので団十郎から目を掛けられ出世するが、ある日「仮名手本忠臣蔵」上演の際、肌の合わない演出家から「血筋が役者でない割にはイイ筋で、創意工夫もいい仲蔵(三遊亭圓生6thはそのエピソードも語る)は団十郎から目を掛けられ出世するが、ある日「仮名手本忠臣蔵」上演の際、肌の合わない演出家から「[[斧定九郎|定九郎]]」というショボい役をもらい苦悩する。」というショボい役(当時)をもらい苦悩する…。(あるいは、座頭から期待をかけられてキャスティングされる。)
この話は自信を持って仕事をしてるところを、いやな上司からショボい仕事をあてがわれて、どう下がったテンションやモチベーションを持ち上げるか、という点が現代人にもリアルで、産みの苦しみのあとでいいアイデアがひらめいたときの心地よさがなんとも言えない話であります。
ただ、そのアイデアを芝居にかけると思ってた客の反応とあまりにも違うので仲蔵は大失敗したと落ち込み、上方へ去ろうとするが…この噺は自信を持って仕事をしてるところを、'''いやな上司からショボい仕事をあてがわれて、どう下がったテンションやモチベーションを持ち上げるか'''、という点が現代人にもリアルに共感でき、'''産みの苦しみのあとでいいアイデアがひらめいたときの心地よさ'''がなんとも言えないのであります。
ただ、そのアイデアを芝居にかけてみると、思ってた客の反応とあまりにも違うので仲蔵は大失敗したと落ち込み、上方へ去ろうとするが…
何度かいろんなヒトのを聴いてるが、思い出深いのは林家正蔵(元・彦六のほう)のCD。三遊亭円楽のテレビ。立川志らくのライブであります。実話とされているが、真相がある。「[[斧定九郎]]」の項目をご参照ください。
正蔵の仮名手本忠臣蔵・五段目の描写は、現在の五段目の内容と大きく違い、聴いてるほうが戸惑うが、歌舞伎とは姉妹演劇である(原作である)文楽の仮名手本忠臣蔵・五段目を見ると合点がいく。おそらく文楽はオリジナルに近いカタチなのでしょうな。正蔵の落語は昭和40年の録音だが、おそらくその時点で歌舞伎の手は平成に見る仮名手本・五段目と変わらないんじゃないかと思うが、正蔵はあえて昔から受け継がれてる、古いほうの演出内容で噺している。んまあ、噺のバックグラウンドが江戸時代なんだから当たり前といえば当たり前ですが。
 == 中村仲蔵(落語) ==  何度かいろんなヒトのを聴いてるが、思い出深いのは林家正蔵(8th。のちの彦六のほう)のCD。立川志らくのライブ。別格が立川志の輔単独ライブであります。 正蔵の仮名手本忠臣蔵・五段目の描写は、現在の実際の歌舞伎の五段目の内容とは大きく違い、聴いてるほうが戸惑うが、歌舞伎とは姉妹演劇である(原作である)文楽の仮名手本忠臣蔵・五段目を見ると合点がいく(ついでに言うと、仮名手本のことを描いた錦絵とも合致する)。おそらく文楽はオリジナルに近いカタチなのでしょうな。正蔵の落語は昭和40年の録音だが、おそらくその時点で歌舞伎の「手」は平成に見る仮名手本・五段目と変わらないはずだが、当然のことながら噺のバックグラウンドが江戸時代だから正蔵は古いほうの演出内容で噺している。 ところが、あたしと2つしか年の違わない志らく師匠は歌舞伎のディティールは現在の仮名手本・五段目でやっちゃってる(少なくとも09.3月現在。ネタおろしではそうでした)。歌舞伎を知ってるほうとしてはそのほうがわかりやすいのだが、もとの噺といまの歌舞伎ではじゃっかんちぐはぐな点が出てくるから、ここら辺は「いまはこうですが、昔はこうだったそうで」と入れてもイイかもですな。でもテンポが崩れるか。そもそも、たぶん志らく師匠は人形浄瑠璃のほうは知らねえな、きっと。ま、聴いてるほうもどうせあんにゃもんにゃだから、全体も出来が良ければようがす。3月現在。ネタおろしではそうでした)。いまの演出に慣れてるほうとしてはわかりやすいのだが、じゃっかんちぐはぐな点が出てくる。ま、聴いてるほうもどうせあんにゃもんにゃだから、全体も出来が良ければようがす。
あたしゃ彦六師匠は「ふうん」て聴くけど。志らく師匠のじゃあ、泣きますからね。
だから古典落語って、現代人がわからない状態ででも「まんま」受けつぎゃいいのか、現代人に伝わるようにアレンジしていって継承すべきなのか、なやましゅうござんすね。オリジナルを理解しててそっちとアレンジとを両方を弟子に教えるのがいいんでしょうな。林家染二(3rd 上方落語)は、定九郎の初お披露シーンを鳴りものの入った独自の演出でやるが、安定している芸ではあるものの、見たのがNHK「日本の話芸」だったため、時間に収めようとしているのか、ともかくメイン場面の、笛や太鼓、太棹三味線などはめものが入る「せっかくの」定九郎初お披露シーンをたっぷりやる為に、前後が大あわてでダイジェストを聴かされているようでせわしなく、たとえば仲蔵とミムラシンジロウとの出会いにも、感動が無い。あらかじめ内容を知ってる玄人向け。文化庁芸術祭賞大賞を受賞。 この番組は、講談の「[[前原伊助|槍の前原]]」でも、障がい者の設定を健常者に変更させるなど、演者に無理をさせる傾向がある。  ちなみに立川志の輔師匠の「中村仲蔵」(TBS赤坂ACTシアターのライブ)はとびきり良くて、話芸というか構成力がすごく、題材をよく調べており、わかりやすく(<わかりやすさは特に師匠の持ち前)、「[[斧定九郎|定九郎]]」像が出来上がって行くさまの興奮ったらなかった。 もともとこのハナシの感動はたいてい仲蔵が芝居が終わったあと上方に逃げる道すがら自分のアプローチの成功を知るシーンにあるが、志の輔バージョンはもっと手前の土砂降りのそば屋でモデルとなる浪人に出会った「運命のとき」に最初の感動バルブが開放になり、ラストに向けて感動と涙が出玉大放出。舞台上の定九郎はうつくしく、凄い。
とにかく、ものつくりの方にはオススメのお話。
 
 
 
 
== 中村仲蔵(講談) ==
 
 
(ネタバレあり)長唄師匠の奥さんが船頭の甥っ子を養子にもらう(のちの仲蔵)ところから始まって笑い無しで團十郎のヒイキ〜作家の意地悪〜配役〜開発…。
 
落語にもある、自分の工夫を失敗したと勘違いして江戸を後にしようとしたときに世間の評判を小耳に挟むくだりをカットしてダイレクトに師匠から褒められるとする先生もあるが、好みではない。
 
宝井琴調版(4th)では林家正蔵(8th)のバージョンのような会話が、まんま、ある。
 
 
神田松之丞バージョンが別格(2018念12月現在。現・神田伯山先生のこと)で、以下は松之丞版についてオハナシいたします。
 
芝居が大好きな七つの頃の仲蔵少年と、大部屋の先輩役者(だったかな)の会話から始まる。松之丞版はあとにすごく良い所で再び少年時代の回想が出てくるのがドラマチックだったが、コレを始めとして「pen+」誌「一冊まるごと神田松之丞」によると松之丞氏の工夫がそこかしこに入っているようでございます。
 
さて内容は、通常版よりも、血統主義、門閥主義に泣く、"血の無い"仲蔵の苦労がひときわで、仲蔵の出世に対する周囲のやっかみがすごい。
 
「楽屋雀め、見ていやがれ」という意地と根性と才能で「シン・定九郎」を考案に至らしめる仲蔵像は良い意味で重たく、「弁当幕」の客の静まり返ったリアクションも数日に及ぶ<small>(註釈01)</small>。コレいわゆる「客に蹴られた」と仲蔵が誤解し絶望感に浸る場面だが、水を打ったように静まり返る場の緊張感に赤ん坊が急に泣き出すシーンもなかなか圧巻。<small>(註釈02)</small>
 
仲蔵は落語ではカミさんと相談して上方へ旅にでようとするが、松之丞バージョンは首をくくろうとする(ちなみに独身。これらは仲蔵の生き様を強調するためのアレンジだそうだ)。
 
心理描写や状況描写を落語よりもずいぶんと引っ張るので、松之丞さんの芝居がかったパフォーマンスと相まって、静まり返った五段目の上演が何日か経った超満員の客席から、最初に大向うから声援が飛んだのを皮切りに場内が沸き返るような騒ぎになるシーンでは、張り詰めた弓が急に緩んだように、こちらの涙がドバーッと出る。
 
この話ではお手本となる浪人を目撃はしてもコンタクトをしないので、念願の [[「此村大吉」もの|此村大吉]]のエピソードに触れられるのか!?と思ったが、なんにもなかった。<small>(註釈03)</small>
 
いろんなシチュエーションが陰気臭いにもかかわらず、すごくドラマチックで傑作。
 
 
 
 
註釈01…落語(彦六版)では、仲蔵は定九郎の開発について周囲の役者にごちそうして急な変更の挨拶をして口裏を合わせて協力を得るが、この講談版の仲蔵は、周囲全部を敵に回す。これは落語版の「見ていやがれ」の対象が、しょぼい役を振った師匠に当てられているのに対して、講談版は周囲のライバルに向けられているので、ここんところが変わってくる。
 
 
註釈02…赤ちゃんのオリジナルは、三遊亭圓生(6th)じゃないかしら。ちなみに圓生版では、団十郎が感動するところでエモ。
 
 
註釈03…講談の登場人物で、映画にもなってる此村大吉は、こっちじゃなくて「旗本五人男」という30席以上ある長編講談の登場人物。冒頭で捨て子だった仲蔵(船頭の甥っ子じゃねえのかよ)の逸話
が触れられ、大吉が仲蔵に目撃されるのは蕎麦屋ではなく土手を走っているシチュエーションになっている。
 
== 関連作品 ==
 
* [[「此村大吉」もの|朱鞘罷り通る]](東映)
 
* 大型時代劇スペシャル 忠臣蔵うら話・仲蔵狂乱(ABC朝日放送)2000.12
 
少年時代から定九郎開発までの仲蔵のお話。市川新之助時代の海老蔵(11th)が若き仲蔵を演じる。泡沫のもらわれっ子仲蔵が差別されながらも役者を続け、雨で困ってる浪人をヒントに新しい定九郎像を思いつくのは定石どおり。落語に出てくる芝居小屋の様子(人足=稲荷町の楽屋がお稲荷さんの脇にあったとかそういうの)やむかしの定九郎の様子が映像で再現されてて愉快。(残念ながら五段目の演出は「白い手」になっちゃってる。)
 
新旧定九郎の変身よりも、V6の坂本昌行演じる仲蔵の親友・三太郎が年を取ると小林稔侍になるという大胆でアバンギャルドな変身のほうがエキセントリックだった(笑)。

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