差分

提供: Kusupedia
移動先: 案内検索

忠臣蔵 花の巻雪の巻

2,627 バイト追加, 2024年2月11日 (日)
編集の要約なし
 娯楽映画を自慢とする、東宝色の強い秀作。東宝ファン向け。30周年記念映画。セットの数は100パイ。
 
 
 
== 東宝カラー ==
 
 この時代の忠臣蔵映画は、どの映画会社びいきかでじゃっかん評価が決まってしまうところもあると思うが、本作品はことあるごとに若い後輩に見せてるが、すんなり入っていけるようです。見れば見るほどわかりやすい。必要なカットばかりでまとめられている。
 三船を内蔵助に推す声も多かったそうだが(でしょうねえ)、「まだ若い(幸四郎の10歳下)。三船くんの内蔵助はこれからいつでも出来る。」と藤本真澄プロデューサーが言っている。(週刊文春'62.7/2号)<small>(註01)</small>
 
 
 音楽が伊福部昭なんで、討ち入りの時「ゴジラ」と「海底軍艦」を混ぜたような曲が流れるのがおもしろい。<small>(註05)</small>
 
 
 
== 特徴 ==
 浅野内匠頭の武士の一分と[[吉良上野介]]の言い分がまことにわかりやすい。東映の橋蔵の内匠頭が孤立無援でイジメに耐えていてすごくかわいそうだったのに対し、'''若大将は超ナマイキ'''なので、喧嘩っぽさが増長され、刃傷までの行程が自然。同輩の[[伊達左京亮|伊達]]くんが同情してくれてたりするのもいい。人間関係に無理が無く、サムライ言葉も極力現代語にしてる感じで21世紀の人間が見ても共感しやすい。
 コミカルな要素もちゃんと入ってるところもエンターテインメントの基本をクリア。スタイリッシュというか都会的と言うか絵柄が清々しくどことなくのびのびしていて品がある。 コミカルな要素もちゃんと入ってるところもエンターテインメントの基本をクリア。スタイリッシュというか都会的と言うか絵柄が清々しくどことなくのびのびしていて品がある。( 人気お笑い俳優ユニット、脱線トリオが出ているが、ちょうど八波むと志が由利徹と仲をたがえたあとで場面が別。)
 撞木町で遊びほうける内蔵助のシーンも独特。他作品なら、なにかっつうと「う〜き〜さ〜ま〜、こ〜ち〜ら」って鬼ごっこ(めくら鬼)しかやらない遊興シークエンスを、幇間の三木のり平の踊りや、モノボケ(アイテムを使っての一発芸「見立て」)で色取り、退屈しないのであります。
 人気お笑い俳優ユニット、脱線トリオが出ているが、ちょうど八波むと志が由利徹と仲をたがえたあとで場面が別。 原節子出演映画の最後の作品でもある(ほとんどアップが無い)。[[大石りく]]のイメージには自分の柄が合わないということで、けっこう出演を拒んだと言われているそうだ。史実ではイメージぴったりなんだけどなぁ。   あ、あと、女性のカツラがいちいち元禄っぽいのもビジュアル的に気持ちいい。
 原節子出演映画の最後の作品でもある(ほとんどアップが無い)。[[大石りく]]のイメージには自分の柄が合わないということで、けっこう出演を拒んだと言われているそうだ。史実ではイメージぴったりなんだけどなぁ。
 音楽が伊福部昭なんで、討ち入りの時「ゴジラ」と「海底軍艦」を混ぜたような曲が流れるのがおもしろい。<small>(註05)</small>
 あ、あと、女性のカツラがいちいち元禄っぽいのもビジュアル的に気持ちいい。== 当時の評価 ==
-----
註01…このへんの話は古い週刊文春にあるのだが、藤田進、小林桂樹などがこぞってやりたがった役が、有島一郎のやった 註01…ちなみにこのへんの配役については古い週刊文春にあるのだが、藤田進、小林桂樹などがこぞってやりたがった役が、有島一郎のやった[[多門伝八郎]]だったという。有島の多門は監督の推しだったそうだが、やりたがってる役者がいるならやらせてあげて、個人的には有島一郎あたりには[[堀部弥兵衛]]をやって欲しかった。(ちなみに有島はのちに[[大忠臣蔵(NET)|ミフネ版]]で弥兵衛を演じる。)
 本作で[[堀部弥兵衛]]を演じている小杉義男は黒澤映画にも本多猪四郎作品にもご常連のベテランなのだが、大部屋さんの印象があり、東映では薄田研二さんがやってる役どころを、名バイプレイヤーの小杉さん(好きだけど)…というのは、もりいが忠臣蔵ビギナーだった頃からの違和感。ふだん東宝映画に貢献している東野英治郎や左卜全が出演していないが、彼らあたりでどうにかならなかったのだろうか?(こういうことでで悩むのが、好き)  …<附言>ただ、小杉さんは、同じく東宝の「[[四十八人目の男]]」で、[[堀部安兵衛|安兵衛]]を演じてることを思うと、父子両方を演じためずらしい役者になる。
 
 「そこはやっぱ三船でしょう。若いったってねえ、翌年に『赤ひげ』撮ってるんだし(公開は延びて'65に)」と春日太一さんとご一緒したときおっしゃってた。ちなみに氏のごひいきは「[[赤穂浪士 天の巻・地の巻]]('56)」。(この「花の巻雪の巻」は「雑」と言ってた笑。何シーンか討ち入りが昼間だし、東宝歌舞伎のことがあってしょうがないけど白鸚キャスティングにも一過言。)
 ちなみに東宝娯楽映画といえばクレージーキャッツの映画シリーズも忘れてならないが、1本目の「ニッポン無責任時代」が本作と公開年が同じで、その後人気シリーズとして屋台骨を支えるものの、この時点では東宝映画への貢献は無いのでクレージーのメンバーの出演はない。数カ月後に本作の公開が控えてるので宣伝を意識してか、「ニッポン無責任時代」には「忠臣蔵」というワードが数回出てくる。
「大石東下り」は未だに気になる上に、あるシーンで大幅に削除されたことが伺える。
大石内蔵助は、[[垣見五郎兵衛]]でも[[立花左近]]でもない、尾花光忠という、忠臣蔵ファンには聴いたこともない人物の名を語って東下りをするのだが、本物の尾花光忠が現れて「いつもの」パターンになるのではなく、尾花と面識のある地元の役人が会いに来る。これを宿屋の主人であるモリシゲが間に入って、大石に会わせまいとするのだが、その手管(実際にご覧になってご確認ください)と、大石をかばおうとする根拠が、ちょっと弱い。でもない、尾花光忠という、忠臣蔵ファンには聴いたこともない人物の名を語って東下りをするのだが、本物の尾花光忠が現れて「いつもの」パターンになるのではなく、尾花と面識のある地元の役人が会いに来る。これを宿屋の主人であるモリシゲが間に入って、大石に会わせまいとするのだが、その手管(実際にご覧になってご確認ください)と、大石をかばおうとする根拠が、ちょっと弱い。(やはり、「大石東下り」は、似た風格の武士ふたりの短い対決が見もののシーンなのであります。)
まんまとごまかされて宿屋をあとにする役人だが、その際になぜかみな、酔っ払っている。おそらく、たらふくごちそうをされて煙に巻かれたのだろうと予想できるが、そのシーンが無い。
そればかりではなく、「あ、この後、なんかあったな」と想像させる、役者がセリフを言おうと息を呑んだところでカットになるシーンも多く、また、南部坂の三次浅野家屋敷内には侍女に藤山陽子がいるが、いるだけでセリフが無い(要確認)。適度なランニングタイムにするために相当な削除がなされていると想像できる。そればかりではなく、本作には「あ、この後、なんかあったな」と想像させる、役者がセリフを言おうと息を呑んだところでカットになるシーンも少なくなく、逆に、たとえば安兵衛が玄蕃を酔い潰そうとしたであるとか、そのとき赤穂浪人の悪口を言ったであるとか、セリフだけでは不自然な、「この前になんかあったな?」と思わせるシーンもある。南部坂の三次浅野家屋敷内には侍女に藤山陽子がいるが、いるだけでセリフが無いし(ま、この人は黙ってたほうがいいのかも…w)。適度なランニングタイムにするために相当な削除がなされていると想像できる。 <附言>…2022年7月。国立映画アーカイブ(長瀬記念ホール ozu)の「東宝の90年 モダンと革新の映画史」で上映されたとき、ほかの観客(東宝映画やスターをこころえていて、金語楼や脱線トリオが出てくるだけで笑える世代)と一緒に見ていると、このシーンの印象はかなり違った。「森繁が"東下りみたいなことをしている"」ということで用意されたシチュエーションを観客は素直に受け入れ、忠臣蔵的な理屈を超越したなにかが場内で成立していた。これはお茶の間でDVDで見ているだけでは見つからない機能である。(あと、旭堂南湖先生の「大石東下り」に近衛関白の直筆、というものが権威あるアイテムとして登場してたんで、この映画のシチュエーションもあながち「設定が甘い」などと言えないのかも) また、あにはからんや、劇場の大スクリーンで見ていると、萱野三平のシークエンスのすべてが、泣けた。
註05…・Wikipediaでは、劇伴にゴジラのテーマのモジリがあると、わざわざ説明しているが、そんなこと言ったら本作のBGMなんて東映映画「徳川家康」註05…・Wikipediaでは、劇伴にゴジラのテーマのモジリがあると、わざわざ説明しているが、ほんのちょっぴりフレーズがかぶる箇所があるだけ。ほかの伊福部作品の似た部分には触れてない。そんなこと言ったら本作のBGMなんて東映映画「徳川家康」('65)のメインテーマ曲にモジリでもなんでもなく、'''ほぼ'''まんまのメロディが使われてるのがありますし、伊福部昭先生は使い回しは日常なのであります。(そもそもゴジラのテーマは喜劇映画「社長と女店員」('49)のテーマ曲である)のテーマ曲である)(ジョン・ウィリアムズでさえ「大地震」と「タワーリング・インフェルノ」で同じフレーズを使いまわしておりますし。劇伴ってそういうもんなのでしょう。)
画像:Hananomaki.jpg|thumb|海外版ポスター(2014年フランス、ナントのサムライ展より)
画像:bunsyun62.jpg|thumb|週刊文春'62.7/2号より 佐藤允の役に誤記。
画像:match.jpg|thumb|ノベルティのマッチ♡。
</gallery>

案内メニュー