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赤穂浪士 天の巻・地の巻

サイズ変更なし, 2021年9月1日 (水) 12:30
編集の要約なし
 さて、本作をあらためて見てみますと、非常に丁寧な作りの、ただしい、品の良い作品で好感度が高い。
 東映創立5周年の本作はカラーの忠臣蔵第1号<small>(註01)</small>で、第1号=お初と言えば、「松田正次の東映時代劇(畠剛 で、第1号=お初と言えば、「松田定次の東映時代劇(畠剛 著)」を読んで「たしかに!」と膝を叩いたのが、ここで[[大石内蔵助]]を演じる市川右太衛門は十八番の「旗本退屈男」に見るオーバーアクションやメイク(彼には関西歌舞伎出身らしい派手さがあった)を一切取り払って、「これが主税の釣った鯛?ほんとにお前が釣ったのか」なんつって、それは'''事件さえなければひじょうに一般的で平凡なおっさん'''という内蔵助像を作り上げている点で、それはこれまで表現されてきたやり方とは一線を画す「お初」と言えるでしょう。
 右太衛門はエッセイの中で「本作は'''在来の忠臣蔵に比べると吉良側や幕府側、また一般側にも出番がある新しい角度で描いてる'''」というようなことを言っていて、この点は松田監督と相談ずくだそう。たしかになるほどそれは、21世紀になってまとめて手当たり次第にDVDで見ていては気づかないところ。
(昭和初期のサイレント映画?には本原作を元にした「[[堀田隼人]]」なるスピンオフもあるようだが(千恵プロ1933)大佛作品の「赤穂浪士」を忠臣蔵映画として扱うという点では初めてなこころみ。)
 で、クレジットされている脚本の新藤兼人は原作の主要キャラクター堀田隼人たちに重点を置いてホンを書いたが、「忠臣蔵」の大事なところが書けてへん&オールスター映画向きではない。と、大幅にボツにされたとか。(実際は助監督の松村昌治がほとんど書いたらしい。<small>(「大友柳太朗快伝」/「松田正次の東映時代劇」共にワイズ出版)(「大友柳太朗快伝」/「松田定次の東映時代劇」共にワイズ出版)</small>)
 何割、進藤さんの働きが残っているかわからないが、原作の内容はひじょうにそつなくコンパクトにまとめられて、講談エピソードもうまく調和している。
 新しい新しいと言いながら決してアヴァンギャルドではなく、出来上がりは良い意味で「地味」。松田定次監督的にとってもじっくり撮ったお気に入り作品<small>(「キネマ旬報No.1072」/「松田正次の東映時代劇」ワイズ出版)1072」/「松田定次の東映時代劇」ワイズ出版)</small>) であるそうだが、これがそのままビギナーにはおとなしく写ってしまうのだろうなと思った。内匠頭の東千代之介も堀田隼人の大友柳太朗も他作品に比べるとなにか一服盛られてるんじゃないかと思うほどローテンションの抑え気味の演技で、これがプラスに働いて良い結果にはなっているのだが、作品全体に働くものがなしさを生んでいる。
 中村錦之介は、それまで「紅孔雀」でヒーローだったのに、本作で打たれっぱなしで脱盟者の小山田庄左衛門となり、ファンが戸惑った<small>(出典:1944年生まれのおともだちの感想)</small>。

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