薄桜記

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作品概要
制作会社 大映
公開年度 1959年
内蔵助役 −−−
評価 4ツ星

【はくおうき】

伯父さんの仇討ちに走る中山安兵衛(カツシン)が道すがらバッタリ出会った旗本・丹下典膳(市川雷蔵)と運命の出会いを果たし、その後もろもろの皮肉な運命…


いやもう、この映画はもう、あたしがなんだかんだ言うまでもなく、ちゃんとした良い作品でございまして、忠臣蔵スタンスからよけいなことを言うと、そうとう的外れなレビューになりますれば、気になった方は各々ご購入、またはレンタルなどしてご覧なさればよろしいかと存じます。

途中までズ〜〜ッと丹下左膳と安兵衛の話だと勘違いしながら見てたときは、血槍無双みたいな娯楽作品だと思ってたんですが、なんだか「別格」でありました。だってオープニングのテンポとか、娯楽映画的にグイグイ引っ張りこんでくれるんですもの。

そもそも左膳は大岡越前の頃のキャラとされていて、時代もメチャクチャ違うわけでもないし、てっきり「丹下左膳/エピソード1」かと思っちゃったら興奮しちまったものだが、「薄桜記」の作者・五味康祐は連載に先がけて「典膳は赤穂浪士にもっとも恐れられていた刺客だったから、のちに無頼な丹下左膳のモデルにされてしまった」と洒落を言って典膳に実在感を持たせたコメントをしていたそうで、林不忘の「丹下左膳」をモチーフにしていることは間違いないようであります。


この、評判の作品を最初に見ちゃうとこれがスタンダードになってしまうが、ほかの「薄桜記」(テレビドラマ)を見ると本作には相当アレンジが加えられているものと見えます(原作を読んでみなくちゃなあ)。

典膳が破門になった同門の連中とのいざこざがメインで、典膳の妻・千春をめぐっての安さんや典膳のエピソードなどもチラッと混ぜながら、うまいこと110分に整理している。

でまた、いいオトナの千春の雛人形遊びするとか独特。子犬が唐突に挿入されたりと監督(森一生)は可愛い素材を入れるのがうまい。


あるシーンの殺陣がいいので原作を読みたくなったのだが、それは「一体どう表現するとこういうシーンになるのか」と思ってのことだったが、そのシーンはどうも映画のオリジナルだそうで、さすがビジュアルの専門家のなせる技なのだなと感心しました。

監督も、そして雷蔵もものすごいいきごみで作ったらしく、ものすごい昇華を遂げた。

とはいえ映画のプレスに「妖気をはらんだ五味康祐の評判小説」とあるから、やっぱりちょっと読みたい。五味康祐って柴田錬三郎とかわりばんこに「ほんものは誰だ?!」のパネラーで出てた人ですよね。

映画としては五つ星です(忠臣蔵ものとしては星四つ)。

忠臣蔵がサブでも、こっちが忠臣蔵スタンスで見ていると、すごくもりあがってるメインの壮絶さや悲しさよりも、やっぱり茶会の日取りがわかったところでグッとくる。「忠臣蔵モード」って不思議です。ヒイキってこういうことなんでしょうか。


雷蔵が光り輝いてるが、この翌年、カツシンが「不知火検校」で新しく生まれかわります。



秘剣破り

2年後に倒産してしまう大映の上記「薄桜記」のがんばったリメイク。市川雷蔵を病気で失った穴を東映から松方弘樹(丹下典膳)を借りてこないといけないお家事情の大映だが、安兵衛の本郷功次郎の魅力もじゅうぶん光っている。脚本はオリジナル(は10年前)と同じ伊藤大輔。1969年作品。

構成はマンマだが、セリフが足されたり引かれたりしてすごくリーズナブルにわかりやすく生まれ変わっている。


ハナシが見えやすくなったぶん、雷蔵版では彼の存在感で見えにくくなっていた「なんだかつまらない行きがかりでソンばかりしてる、強いのにいいところナシの哀れな丹下さんのハナシ」というストーリーラインが浮き彫りになってしまって見えたのが特徴。


しかし、完成度が非常に良いのに会社の立て直しには貢献できなかったとなると、当時の映画界の客離れはシャレにならない落ち目ぶりだったのだなあと思う。



時代劇スペシャル忠臣蔵外伝 薄桜記 丹下典膳と堀部安兵衛~孤高の武士 丹下典膳の生涯〜

同じ原作で1991年秋に杉良太郎を典膳に迎えドラマ化された。(テレ東)

テレビサイズにいいかんじにコンパクトに整理されており、演出にも小技が利いていて杉サマの貫禄も良く、好感が持てる作品。

映画と違ってカラッとしており、浪人した典膳が大工さんの用心棒になるエピソードなどがあって(原作読んでないんで恐縮ですがNHK版にもこのエピソードはあるのでこっちがホントらしいですな?)、大映版のあの印象的なラストとは違う感じになっている。


ところでこの当時ってキャスティングに「?」と思うことがしばしばある。安兵衛役の竜雷太はファンだが、なにも当時51歳の彼を20代前半の安兵衛に当てなくても…。4年後に別のドラマで安さんの伯父さんの菅野六郎左衛門を演るヒトですよw。

どういう事情なのかと思っていたが、チャンネルが違うがこの2年ほど前にやはり忠臣蔵外伝「用心棒日月抄」をやったときにも竜雷太や佳那晃子を主要な役に置いて共演している。Wikipediaによれば、このころの杉良太郎には共演者に常連がいるそうで、年格好のリアリティよりも一座?全体のありさまで楽しんでもらおうというねらいなのかもです。



NHK BS時代劇 薄桜記

役者絵:オードリー春日

2012夏にNHK BSプレミアムにて放送の11回の連ドラ。


むかし矢頭右衛門七経験してる山本耕史が30代半ばとなって、彼の丹下典膳を完成させていて良かった。

説得力のある構成から、幾度も典膳の「生き方」についていろいろ考えさせられた。


むかし早野勘平経験してる高橋和也の堀部安兵衛はコレまで表現されてきた安兵衛像の中でも相当滑稽な部類に入るくらい軽妙でまっすぐなキャラだが、これもすごくイイ感じに作ってて、典膳とのコントラストをわかりやすくしている。

ちなみに、高橋氏は安兵衛の故郷・新発田のおまつりに参加して、なかなかちゃんとしてる方であるが、高橋氏もこの安兵衛役は楽しかったのではないかな。


脚本のジェームス三木のおかげなのか、内容はすこぶる良かった。

セリフの中には新鮮に「かもねえ」「だよなあ」「それほんと?」とワクッとする箇所が毎回あり、とにかく見てて楽しかった。

主役の典膳が吉良側なので吉良家の場面が多く、上野介もだいぶスマートな粋人にえがかれてるので、義士ファンとしてはいささか分が悪く感じるときがあったが(内匠頭がオードリー春日というのもアレだしw。そもそも原作の扱いが暗君だとか。)、それでもジミーは一方に比重が行かないように、双方のキャラをバランスよく魅力たっぷりに整えている。

近年の視聴者は頭が良いので、対立する「言い分」の両方に納得してもらうように構成するのは骨が折れると思います。


決め手はキャラの持つ「哲学」や「価値観」。


最終回はコレをキレイにまとめて幕は下りる。


こういうていねいなドラマは、お茶の間はすごく歓迎でございます。

評判が良かったようで、すぐ地上波の放送が決まった。

※放送当時の忠臣蔵ぶろぐ>>http://blog.kusuya.net/?eid=624