「酔いどれ二刀流」の版間の差分
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− | + | [[堀部安兵衛]]の「高田馬場の決闘」のバリエーションだが、[[堀部安兵衛|安兵衛]](長谷川一夫)のケンカの強いところ、飲んべえなところが上手にまとめて描かれており、コミカルな職人益田喜頓や、おとなりさんの軽業師の女の子に、いるだけで色っぽい若尾文子といった脇役がお互いのキャラを高めあってて、かなりオリジナルなお話が付加されてるにもかかわらず楽しくまとめられて、それでいて、定番である叔父さんの決闘周辺の緊張感はきちんと高められる。 | |
− | + | ビギナーが堀部安兵衛像を知ろうとする場合はかなり手頃な作品。 | |
− | + | 飲んだくれていて、おじさんからの手紙を読まない安兵衛がじれったいし、やっと気づいたときはちゃんと「走れ!安!」っていうキモチになる。 | |
− | + | 現場に着いたときは「やっちまえ!」と思うし、チャンバラもイイ(黒沢以前の華麗な殺陣。構えたままチョンチョンチョンと横移動するバンツマ的オマージュも?)。 | |
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− | + | 決闘のあと、安兵衛がスターダムにのし上がり、[[堀部弥兵衛]]がしつこくスカウトに来るエピソードもコミカルでおもしろいし、[[浅野内匠頭|内匠頭]]が安兵衛をぐでんぐでんにしてから腕試しに襲いかかるシーンも良い。<small>註01</small> | |
− | + | めでたく?仕官するところで映画は終わるが、長屋暮らしのエピソードがたっぷりしてるから名残惜しさも伝わる。このあとの[[畳屋|畳替え事件]]を想像すると、立派になった安兵衛が町に帰ってきて「なんとかしてくれ」って頼んできたら、コレは断れないだろうなあとイメージしやすい。 | |
− | + | とっても'''長谷川一夫を大事に、魅力的に演出している'''。 | |
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+ | 元禄時代なのに益田喜頓が「かんかんのう」を歌ってるのは時代的にへんてこだが、基本的に「元禄」という時代を描くことにはあんまり一生懸命になっていないのでシャレとしてアリ。 | ||
− | + | しっかし、入江たか子がすげえ美人で、若尾文子がビックリするほどかわいい(26歳だがあどけない)上に色っぽいが、そこに[[ホリ|お幸]]の三田登喜子のおしとやかな美しさが安さん争奪にがっぷり四つに組んで見応えたっぷり。昔の女優さんのポテンシャルってあなどれない。 | |
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+ | 註01… 似たシーンが「[[堀部安兵衛(日活)]]」にもある。そこでは内匠頭の槍をかわす妙技を、「[[薄桜記]]」の雷蔵のような寝そべった状態で酔拳なみに黒川弥太郎が披露している。で、ややこしいんですが、「薄桜記」はこの「酔いどれ二刀流」と同じ森一生監督なんですな。 | ||
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+ | ちなみに森監督は非常に「かわいいもの」の入れ方が見事。本作も女子の良いところを引き出して、子どもや動物もうまく入れてるし、「薄桜記」でもヒロインがお雛様遊びをしていたりと他の作品では見られない「かわいい」魅力を演出に加えている。 | ||
[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1954]] | [[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1954]] |
2020年8月7日 (金) 11:00時点における最新版
作品概要 | |
制作会社 | 大映 |
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公開年度 | 1954年 |
内蔵助役 | −−− |
評価 |
堀部安兵衛の「高田馬場の決闘」のバリエーションだが、安兵衛(長谷川一夫)のケンカの強いところ、飲んべえなところが上手にまとめて描かれており、コミカルな職人益田喜頓や、おとなりさんの軽業師の女の子に、いるだけで色っぽい若尾文子といった脇役がお互いのキャラを高めあってて、かなりオリジナルなお話が付加されてるにもかかわらず楽しくまとめられて、それでいて、定番である叔父さんの決闘周辺の緊張感はきちんと高められる。
ビギナーが堀部安兵衛像を知ろうとする場合はかなり手頃な作品。
飲んだくれていて、おじさんからの手紙を読まない安兵衛がじれったいし、やっと気づいたときはちゃんと「走れ!安!」っていうキモチになる。
現場に着いたときは「やっちまえ!」と思うし、チャンバラもイイ(黒沢以前の華麗な殺陣。構えたままチョンチョンチョンと横移動するバンツマ的オマージュも?)。
決闘のあと、安兵衛がスターダムにのし上がり、堀部弥兵衛がしつこくスカウトに来るエピソードもコミカルでおもしろいし、内匠頭が安兵衛をぐでんぐでんにしてから腕試しに襲いかかるシーンも良い。註01
めでたく?仕官するところで映画は終わるが、長屋暮らしのエピソードがたっぷりしてるから名残惜しさも伝わる。このあとの畳替え事件を想像すると、立派になった安兵衛が町に帰ってきて「なんとかしてくれ」って頼んできたら、コレは断れないだろうなあとイメージしやすい。
とっても長谷川一夫を大事に、魅力的に演出している。
元禄時代なのに益田喜頓が「かんかんのう」を歌ってるのは時代的にへんてこだが、基本的に「元禄」という時代を描くことにはあんまり一生懸命になっていないのでシャレとしてアリ。
しっかし、入江たか子がすげえ美人で、若尾文子がビックリするほどかわいい(26歳だがあどけない)上に色っぽいが、そこにお幸の三田登喜子のおしとやかな美しさが安さん争奪にがっぷり四つに組んで見応えたっぷり。昔の女優さんのポテンシャルってあなどれない。
註01… 似たシーンが「堀部安兵衛(日活)」にもある。そこでは内匠頭の槍をかわす妙技を、「薄桜記」の雷蔵のような寝そべった状態で酔拳なみに黒川弥太郎が披露している。で、ややこしいんですが、「薄桜記」はこの「酔いどれ二刀流」と同じ森一生監督なんですな。
ちなみに森監督は非常に「かわいいもの」の入れ方が見事。本作も女子の良いところを引き出して、子どもや動物もうまく入れてるし、「薄桜記」でもヒロインがお雛様遊びをしていたりと他の作品では見られない「かわいい」魅力を演出に加えている。