忠臣蔵(明治座)
| 作品概要 | |
| 制作会社 | 日本テレビ |
|---|---|
| 公開年度 | 2025年 |
| 内蔵助役 | 上川隆也 |
| 評価 | |
まずあの、映画「20世紀少年」で、浦沢直樹原作の漫画をリスペクトして、木南晴夏さんという、奇跡の「原作そのままの人」をスターダムに押し上げた堤幸彦さんの演出だと聞いて、さぞかし登場人物の個性にはこだわって、豊かに膨らましてくれるのだろうと、多大な期待を寄せました。
結果は、その期待を大きく超えることはありませんでしたが、ガッカリもしませんでした。
とにかく、鳴り止まぬカーテンコールに
「2日目ソワレで、まだ先が長いんです!とっとと帰ってください」
と冗談を言って一丁締めを決める、主人公役の上川隆也氏の好感度がひじょうに高く(ちなみに、芝居の内容はいたってシリアスで感動的。)
また、帰り際に小学生が
「思った以上に飽きなかった。なんなら、もっと見ていたかった」
と、じいじに(気を使ってたか?)言ってたのを含めての、星3つですかな。
<以下ネタバレ>
内容は、ほぼ正調忠臣蔵。
最大の特徴は、登場人物みんなの立場を肯定的に扱っている点で、それが令和版としての矜持になっている感じがした。
円山会議で「審問返し」みたいなことをするが、決して討ち入り参加は強制や同調で決めてほしくない旨、大石はみんなに明確に言い渡す。令和だなあ。
討ち入りシーンでも(殺陣はなかなかすごかった)、吉良も、炭小屋から出てきて、いじめの理由を語る。
ふつうは吉良に死に際になにか言わせると、見てる側としては、赤穂と吉良のどっちに感情移入していいのかブレるものだが、今回は「浅野を死に追いやったのはお上であってわしではない」みたいな責任転嫁みたいなことを、”死に際”で主張しなかったのが良かった。
「浅野の、時流に流されない澄んだ目が怖かった」
「自分の生きがいが、いかに虚しいものかを思い知らされる」
それがくやしくていじめぬいたが、浅野は挑発に乗らなかった。
最後、松の廊下で、家臣家来をなじったところで、ついに内匠頭は切れたと言う。
実は、さかのぼって松の廊下のシーンでは、吉良が浅野になにを言ったかが、音響とLEDスクリーンステージ効果(マッピングもあったかな)であえて「謎」に演出している。
語るだけ語った吉良は、大石と一騎打ちをして果てます。令和は、怯えながらジッと身を潜めている老人を槍で突いたりしない。
エンディングは豊岡。
寺坂吉右衛門から一切を聞いた りくが、息子・主税のことを思うシーンも泣ける。
討ち入りを含め、ラストに行くにつれて、いろんな要素がうまいこと集約されて、キャラも立ってくるし、こりゃたしかに小学生も喜ぶかもなと思いました。
細かくは
サムライでもない寺坂吉右衛門がみんなと意外に同等に扱われてる。とか、
堀部安兵衛がちょっとチンピラみたい(&演じる藤岡真威人くんの発声が宝塚みたい)とか、
源五と源五右衛門が、どっちがどっちだかわからなくなる(そりゃあたしの勝手)とか、
明治座の客層に合わせてなのか、妙に山科(大石夫婦)のシーンが多いなとか、
セットを組まないでLEDスクリーンのみで表現してると、祇園の放蕩シーンがやけにさみしいとか、(それで思い出したけど、この芝居、衣裳もそこまで豪華ではない。)
…と、いろいろ気になることは、あるにはある。
が、最後まで見れば、いろいろ相殺される。
総じて、堅実で、今の時代にあった「ちゃんとした忠臣蔵」でした。
<附言>
日テレさんが主催というだけあって、「殿がお利口すぎるので家来は役に立たない」とか、「かつおぶしじゃ」〜刃傷事件後、殿様の鎧兜に話しかけるとか、大高源五のスタンスや両国橋で宝井其角が駄句を褒めちゃうとか、ちょいちょい「里見版」を思わせる場面もあり、土台にしているのだろうなと感じました。