決算!忠臣蔵

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作品概要
制作会社 松竹×よしもと
公開年度 2019年
内蔵助役 堤真一
評価 3ツ星
公開当時のフライヤー

 看板にいつわり無し。

 トレイラーから受ける印象から決して逸脱すること無く、期待をはずさない仕上がりの愉快なコメディ。

 ひじょうに楽しそうに忠臣蔵を遊んでて、いや、正確には、山本博文先生の「忠臣蔵の決算書」を器用に遊んでて、好感度の高い完成度。


「喧嘩上等」にこだわった赤穂藩士の描き方は、現代人にわかりやすく表現され、史実に沿った予算系エピソードをいろいろ絡めながら、おもしろおかしく討ち入りまでのなりゆきを説明してくれる。

 ライムスター宇多丸さんがこだわる、忠臣蔵の「ケイパーもの」としての魅力も、これならイケてるんじゃないだろうか。


 製作発表当時、配役だけ聞いた時に心配だった役者さんたちは、見事にお芝居をクリアしていて、役者ってすごいなと思った。

 ナイナイの岡村さんは、見事に彼の矢頭長助を完成させている。声も、顔も、演技も良かった。100点。

 特に荒川良々の堀部安兵衛は配役を最初に聞いた時は「は?」だったが、この作品では彼じゃないといけない。お見逸れいたしました。

 そんな中、竹内結子さん(りく)が出番や役回りにもったいない感じがしたのと(註01)、妻夫木聡さん(菅谷半之丞)の入れ方には、じゃっかん強引さを感じた。…が、オールスター系の忠臣蔵って、そういうもんなのかな。


(以下ネタバレ)

 本作はあたしには本来苦手な、数字(笑)にまつわるお話だが、ドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』みたいな、画面への文字の入れ方のおかげでわかりやすかった。

 が、それでも前の座席の女性が映画が終わって退席するとき「むずかしかった」と言っていた。(マスコミ試写なのに、である)

 おそらくこれは、数字のほうじゃなくって、江戸時代のお家問題(ご本家筋と分家の立場。家の取り潰しや再興のことなど)とか、やっぱり人物の関係性が理解しにくかったのではないか。

 吉良のビジュアルも出てこないから、なにを相手にした騒動なのかもわからない人もいると思う。(それで言うと夫婦でいるところが1場面もないから、瑤泉院が何者なのかわからない人もいるかもしれない。)(註02)

 それくらい、いま忠臣蔵はマイナーコンテンツになっているのだ。


 だから、討ち入りで締めくくらなかったのは、どうだったのかなあ~。

 討ち入りをあえてラストに入れない理由は構成上、わからないでは、ない。いやむしろ、そのほうが良いとさえ思っている。

 でも、このご時世に、折角じゅうぶんに観客に、討ち入りにまっしぐらな浪士たちの理念や立場をロンダリングして説明できたと思うのに…。(註03)


 かつて、しおりんは私に言いました。「チュウシングラという言葉自体を聞いたことがない」と。

 令和以降に作る忠臣蔵映画は、漫然と見ていると置いて行かれるような「おもしろアレンジ」「斜め読み」「新解釈」なリブートばかりではなく、一周回って、明治や大正、昭和の人達が手放しで喜んだ活劇を、原点回帰して「命がけで何かをなし遂げる人たち」のハナシとして、シンプルに作ってくれないかと切に思う。


 最後に、殿さまへの執着を語るのに、「あの笑顔は忘れられへん」とか、そんな薄っぺらなことじゃないだろ。そもそもあんたが生きているのは、いや、あんたの家族(人によってはご先祖代々)が生きているのが殿様のおかげだろう!(註04)

 もうさ~。こういうたいせつな君恩について、近頃の忠臣蔵は語れないでいるのが、ほんと残念。


(附言)

誰も言わないけど(要確認)CGによって、平屋の赤穂城が再現され、瀬戸内海から上空からというアングルで見られたのは革新的印象。



註01…竹内さんは、東日本大震災の時に他の俳優らと監督の自宅に行ったりする(いきさつ不明)古いお付き合いで、中村組なのでしょう。


註02…監督も「前の忠臣蔵映画から何年も経ってますし、なるべくならちょっと、サラってから行くといい。」とオススメしている。(2019.11.14 中村義洋×濱田岳『決算!忠臣蔵』小説刊行&映画公開記念トークイベントより)


註03…「こないだ、あらためて堀部安兵衛にかかった金額を算出したら2500万円にもなった。今回の作品での大石内蔵助の敵は、こいつら(家臣や家来)なんだと。笑」と、監督は言っている。また、プロデューサーから「感動も入れてくれ」と言われたのに、笑いに徹しようとした監督は「それだと、オーソドックスな忠臣蔵にすぐ戻っちゃう」と、つっぱねたとか。やはり独自路線をこだわって、「ああいうふうに」終わらせたかったことがうかがえる。(2019.11.14 中村義洋×濱田岳『決算!忠臣蔵』小説刊行&映画公開記念トークイベントより)


註04…史実では「朝夕、ご尊顔を排していた頃のことが、片時も忘れられない」と、熱い思いを語り、主君のアダを打ちたいと母親に手紙でひたむきに語っているのは、だれあろう大高源五である。実際には理路整然と討ち入りの必要性を語れる前向きな義士を、この映画では、エロをご褒美にしてもらうことで討ち入りのモチベーションを上げている人物にアレンジしているが、このことは一部忠臣蔵ファンをがっかりさせてるに違いない。