「忠臣蔵 花の巻雪の巻」の版間の差分
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2015年10月11日 (日) 11:19時点における版
作品概要 | |
制作会社 | 東宝 |
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公開年度 | 1962年 |
内蔵助役 | 松本白鴎 |
評価 |
娯楽映画を自慢とする、東宝色の強い秀作。東宝ファン向け。
この時代の忠臣蔵映画は、どの映画会社びいきかでじゃっかん評価が決まってしまうところもあると思うが、本作品は最近若い後輩に見せたところ、すんなり入っていけたようです。見れば見るほどわかりやすい。必要なカットばかりでまとめられている。
明らかに他社と毛色の違う、新しい作り方の「東宝的な」忠臣蔵を作ろうとしてる印象で、それは成功しているように見える。東映が老舗のイタリア料理ならこっちはこしゃくな和風フレンチという感じ。
東宝時代劇となると東映よりじゃっかん堅い作りこみだが、当時の黒澤映画や社長シリーズやお姐ちゃんシリーズ、怪獣映画でおなじみの東宝スター勢揃い。無理くり総出演させてる割にキャスティングがうまくいってて、そういった意味で華やか。
んま、それを言うと素晴らしい存在感の主人公・松本白鴎がアウェイに感じるかもだが、どのシリーズの人でもない彼をひっぱってきて内蔵助としていただいたのは正しかった気がする。偏らないから。
余談だが東宝娯楽映画といえばクレージーキャッツの映画シリーズも忘れてならないが、1本目の「ニッポン無責任時代」が本作と公開年が同じで、その後人気シリーズとして屋台骨を支えるものの、この時点では東宝映画への貢献は無いのでクレージーのメンバーの出演はない。
変わったアプローチがいくつもあるのも特徴で、まずオープニングからしてお公家さんたちの下向途中の宿、という独特な変化球*1。プロローグを宿屋の主人のモリシゲにまかせて良い掴み。
その他にも、あまりほかの映画では描かれないシーンがいくつか(赤穂城開城にあたって、戦争になるかもと恐れをなして逃げる民衆のモブシーンなど*2)あってすごく個性的。
萱野三平(現・中村吉右衛門)の最後や「大石東下り」、高田郡兵衛や寺坂吉右衛門の人生などにオリジナルアレンジが加わってるが、これは賛否両論だろうなあ。東宝の持ち味を出すにはこうしたアレンジがよかったのかなあ。あたしは定石通りやってほしかったっす。
浅野内匠頭は「赤穂の若大将」加山雄三(ちなみに彼をかばう多門伝八郎は若大将のお父さん役・有島一郎)。
浅野内匠頭の武士の一分と吉良上野介の言い分がまことにわかりやすい。東映の橋蔵の内匠頭が孤立無援でイジメに耐えていてすごくかわいそうだったのに対し、若大将は超ナマイキなので、喧嘩っぽさが増長され、刃傷までの行程が自然。同輩の伊達くんが同情してくれてたりするのもいい。人間関係に無理が無く、サムライ言葉も極力現代語にしてる感じで21世紀の人間が見ても共感しやすい。
コミカルな要素もちゃんと入ってるところもエンターテインメントの基本をクリア。スタイリッシュというか都会的と言うか絵柄が清々しくどことなくのびのびしていて品がある。
撞木町で遊びほうける内蔵助のシーンも独特。なにかっつうと「う〜き〜さ〜ま〜、こ〜ち〜ら」って鬼ごっこ(めくら鬼)しかやらない遊興シークエンスを、幇間の三木のり平の踊りや、モノボケ(アイテムを使っての一発芸「見立て」)で色取り、退屈しないのであります。
ラスト、討ち入り前はそば屋で仲間を待つ浪士たちのシークエンスにたっぷり時間を取ってるのも独特。
人気お笑い俳優ユニット、脱線トリオが出ているが、ちょうど八波むと志が由利徹と仲をたがえたあとで場面が別。
原節子出演映画の最後の作品でもある(ほとんどアップが無い)。
音楽が伊福部昭なんで、討ち入りの時「ゴジラ」と「海底軍艦」を混ぜたような曲が流れるのがおもしろい。
あ、あと、女性のカツラがいちいち元禄っぽいのもビジュアル的に気持ちいい。
ただしこの作品は公開当時の興行成績がかろうじてベストテンに入っているものの下位で振るわず、これまで他社(東映や大映)が首位だったのもあり、東宝三十周年の独参湯にはな
らなかった。『キネマ旬報』誌上では「柄にもない」「まともすぎる」と酷評されていたそうである。
- 1、2…オープニングが勅使下向だとか、モブシーンとかは8年前の「忠臣蔵 花の巻・雪の巻 (松竹)」でも、あるっちゃあ、ある。それにしてもまったく同じ題名で特徴的なシーンがかぶるというのはなにかのご縁でござるかな?