女間者
女間者…スパイ。
柳沢が放ったり、上杉家(千坂兵部または色部)が放ったり、江戸組の浪士が吉良邸に放ったりする(「忠臣蔵 花の巻雪の巻」の水野久美)(「忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻」のひばり)。
「忠臣蔵(大映)」「ミフネ版大忠臣蔵」「忠臣蔵ー花に散り雪に散りー」のようにスパイと言えども彼女達のシークエンスがたっぷりオリジナルで用意されてる作品も少なくない(多くもないけど)。
片岡源五右衛門の娘が吉良邸に侵入する「女間者秘聞 赤穂浪士」という作品もある。
大佛次郎の小説「赤穂浪士」に大変よく書けている謎な美女間者、お仙(千坂側)というキャラが出てまいりまして、これが男臭い物語にいいアクセントとなっている。聡明で運動神経にも長けており、度胸がすごい。俯瞰で見ているような立ち位置は右往左往してる男達より「一枚上手」なイメージ。それでいてどこかに「もろさ」も持っており、ひじょうに使い勝手のよい登場人物となっている。
"ゾッとスゴイばかりの美人"という記述にあるように、映像のほうでは「私生活が想像できない」系のヒトがキャスティングされると安心する。そのほうが得体が知れなくミステリアスなのだ。
赤穂浪士(テレビ朝日)では、お仙を中島ゆたかが演じ、演技はともかくビジュアルのイメージはよかった。
たとえば今(H21現在)なら中島美嘉、香椎由宇、黒木メイサ…あたりのを推挙するものであります。
「元禄繚乱」などは、これを真似したがってるのではないかというような、お順という女スパイが出てくる(あのキャラ原作の『新・忠臣蔵』にあるのか?)。血気にはやる浪士たちと、冷めた目で彼らを見るお順のコントラストが印象的で、ある時は保母さんのような高い視点、ある時はオッカケの小娘のような低い視点に自在に変身し、浪士たちを翻弄した。
演じた高岡早紀はしたたかさはあるものの「美貌」には欠けていた。彼女のような愛嬌のある庶民的な面構えはホッとすることはあってもドキッとすることは無い。やはりこのポストは妖艶な人が当てられるのが、もはや伝統なのではないだろうか。
あくまで「化かす」彼女たちはタヌキというより狐のイメージであるべきなのだ。