「大忠臣蔵(NET)」の版間の差分
細 |
細 |
||
| (同じ利用者による、間の19版が非表示) | |||
| 48行目: | 48行目: | ||
映画界やテレビ界、演劇の世界から人気者を集め、おそらく史上最高の贅沢な顔合わせではないだろうか。たとえば東映「[[赤穂浪士]]」の萬屋錦之助の[[脇坂淡路守]]と東宝「[[忠臣蔵 花の巻雪の巻]]」の市川中車の[[吉良上野介]]が(それぞれその役で)同じ画面で拝めるんだヨお立ち会い。 | 映画界やテレビ界、演劇の世界から人気者を集め、おそらく史上最高の贅沢な顔合わせではないだろうか。たとえば東映「[[赤穂浪士]]」の萬屋錦之助の[[脇坂淡路守]]と東宝「[[忠臣蔵 花の巻雪の巻]]」の市川中車の[[吉良上野介]]が(それぞれその役で)同じ画面で拝めるんだヨお立ち会い。 | ||
| − | + | このクロスオーバーはたとえば、DCコミックとマーベルコミックというライバル出版社の2大スター、スーパーマンとスパイダーマンが共演した伝説の『Superman vs The Amazing Spider‑Man』(1976年)のような豪華顔合わせなのであります。 | |
| + | |||
世代的にうれしかったのは、武器調達のかどで拷問にあってる[[天野屋利兵衛]]を釈放する粋(イキ)な大阪のお奉行さんを中村梅之助が特出で演じてるとこ。彼は当時江戸町奉行「遠山の金さん捕物帳」放送中で大人気だったのだ!このサービスには当時のお茶の間はさぞ喜んだことでしょう。(さらに付け加えると天野屋を演じた[[元禄忠臣蔵 前篇・後篇|前進座]]のスター・中村翫右衛門は梅之助のお父さん。…まさかと思って天野屋と一緒に石を抱かされる子役を確認したが中村梅雀ではないようだw) | 世代的にうれしかったのは、武器調達のかどで拷問にあってる[[天野屋利兵衛]]を釈放する粋(イキ)な大阪のお奉行さんを中村梅之助が特出で演じてるとこ。彼は当時江戸町奉行「遠山の金さん捕物帳」放送中で大人気だったのだ!このサービスには当時のお茶の間はさぞ喜んだことでしょう。(さらに付け加えると天野屋を演じた[[元禄忠臣蔵 前篇・後篇|前進座]]のスター・中村翫右衛門は梅之助のお父さん。…まさかと思って天野屋と一緒に石を抱かされる子役を確認したが中村梅雀ではないようだw) | ||
| − | + | また、「#38 大石東下り」では、日野家の長持を何者かに勝手に運び出された[[立花左近]]がいろいろ推理しながら犯人([[大石内蔵助]]たち)一行の足取りを追うちょっとしたミステリー仕立てになっているのだが、この立花左近が本作放送の数年前から他局(フジテレビ)で始まった鬼平犯科帳シリーズのTV版初代鬼平・松本白鸚(放送当時松本幸四郎8th)ときてる。「かならず取り押さえて、その正体を暴いてくれる!」などと言いながら、彼があれこれ推理している様子が鬼平とかぶって面白い。また彼は、この番組の10年ほど前の映画「[[忠臣蔵 花の巻雪の巻|花の巻雪の巻]]」の大石内蔵助でもあり、その時に[[俵星玄蕃]]だったミフネ(まだわかいからと大石役を逃している)と対峙するのだから興奮いたします。(この回のお話はすごく良い(脚本:柴 英三郎)) | |
| − | + | そのほかにも、当時「大江戸捜査網」(三船プロ系。他局)でおきゃんなスリを演じてた岡田可愛が、似たようなパーソナルでカツシンの[[俵星玄蕃]]の回に出てるのも、「[[あゝ忠臣蔵]]」でも駕籠人足を演ってた小松方正を丑五郎で登板させてるのも、居酒屋主人といえば木田三千雄とか、酔っぱらいなら三井弘次といったように、これでもかというほどふんだんに提供される、当時のお茶の間には"おなじみ"または"なんか見たことある"役者を配したシェアワールド的なキャスティングがいちいちうれしい。 | |
| − | + | 10話に1回くらいのペースで当時人気のお笑い芸人(Wけんじ。ケーシー高峰。牧伸二。玉川スミ。島田洋之介・今喜多代コンビなど←Wikiが網羅してないメンツをチョイスしましたw。)が登場するのも気が効いた工夫で、捨て回みたいなとき、ほかのドラマだと妙な間延びがあって興ざめするものだが、芸人の愛嬌で余白を埋めるというサービスはなんとも心憎い。 | |
ともかく、「楽しませよう」という心意気がこうまでキャスティングに活かされてる作品は珍しいと思う。(いや、無い!) | ともかく、「楽しませよう」という心意気がこうまでキャスティングに活かされてる作品は珍しいと思う。(いや、無い!) | ||
| − | + | 「テレビ・メイト」<small>(大忠臣蔵 特集号(昭和45年12月1日発行 第15号12月号))</small>によると、当初はおかるには実際に演じた山本陽子ではなく、企画当初はなんと吉永小百合がキャスティングされて発表されていた。吉永降板は映画「戦争と人間第二部」に出るためだろうか。 | |
ついでに言うとこの同誌によれば[[毛利小平太]]は高橋悦史ではなく平幹二朗がキャスティングされている。 | ついでに言うとこの同誌によれば[[毛利小平太]]は高橋悦史ではなく平幹二朗がキャスティングされている。 | ||
また、友人のウワサによれば[[土屋主税]]には石原裕次郎が当てられていたというウワサがあったそうだが、それはなんとしても実現してほしかったなぁ〜! | また、友人のウワサによれば[[土屋主税]]には石原裕次郎が当てられていたというウワサがあったそうだが、それはなんとしても実現してほしかったなぁ〜! | ||
| + | |||
| + | 五社協定崩壊後、「黒部の太陽」('68)以降、垣根を超えた四大スター(三船、勝、錦之助、裕次郎)の映画共演時代が続いていたのだから、決して不可能なハナシではなかったが、このころ石原裕次郎は自社の映画2本に出たあと、肺結核で入院中だったのである<small>(「市川雷蔵と勝新太郎」中川右介 KADOKAWA刊)</small>。激務と病気でアウトだったのだ。 | ||
| + | |||
| 73行目: | 77行目: | ||
== 欠点 == | == 欠点 == | ||
| − | + | 気がかりだったのは、調子に乗っていろんな人たちを浪士として豪華にキャスティングしたのはいいが、肝心な討ち入りの時にこのそうそうたる顔ぶれが一堂に会せるのか?ってコト。 | |
| + | |||
| + | そしたら案の定、[[小野寺十内|伴淳三郎]]、[[堀部弥兵衛|有島一郎]]をはじめ[[赤埴源蔵|フランキー堺]]、[[岡野金右衛門|中村嘉葎雄]]、など何人もの大事なメンバーがドッサリと'''討ち入りのときに不在'''(ていうか、ラスト何回かはいなかったことのようにかき消える)!しょぼーん。制作費10億円でも全員集合は無理だったかぁ〜。 | ||
そんなわけで、あれだけ「おなじみエピソードは全部盛り込む」をコンセプトにしていたわりに、肝心な「勢揃い」「討ち入り」に、じゃっかんの肩透かし感が漂う。(そこに居ない有島一郎の、代役の背中ばかりを写して、アフレコで有島一郎の声だけかぶせるというシーンの苦しいことと言ったら…) | そんなわけで、あれだけ「おなじみエピソードは全部盛り込む」をコンセプトにしていたわりに、肝心な「勢揃い」「討ち入り」に、じゃっかんの肩透かし感が漂う。(そこに居ない有島一郎の、代役の背中ばかりを写して、アフレコで有島一郎の声だけかぶせるというシーンの苦しいことと言ったら…) | ||
| 81行目: | 87行目: | ||
このことは、予算もさることながら、スケジュール調整も難しかったのではと思う。 | このことは、予算もさることながら、スケジュール調整も難しかったのではと思う。 | ||
| − | + | ||
| + | あらためて作品を見てみると、討ち入り前にも、多くの赤穂組メンバーが勢揃いしていなければいけない場面において「全員欠席」シーンがある。たとえば、グッとさかのぼって、城明け渡しの前の、最後の評定なのだが、三船大石が吉良を討つ存念を一堂に打ち明ける際に(けっこう大事なシーン)、その場にいるのは"知らない人"ばっかり(大部屋俳優さんたち)なのである。 | ||
| + | |||
| + | もちろん、70名近いメンツはこのあと脱盟していったりするわけだから、その場に知らない人が残ってても差し支えないのだが、それにしても、討ち入りまでは残るべき俳優陣(それこそ先述のフランキー、伴淳、中村ら)がひとりもいないのは、じゃっかんの違和感があった。(補足すると、同エピソードに出番のあった[[大石主税]]と[[吉田忠左衛門]]だけは、いる) | ||
| + | |||
| + | とはいえ、討ち入りに比べれば「ただ大石のハナシを聞いてるだけ」のために、巨額のギャラを払ってまで名優を一堂に会すのはさすがに贅沢がすぎるし、討ち入りの無断欠席に比べれば、見ている方としては実は重たくは気にならない。 | ||
| + | |||
| + | ほかにも、細かくは、石坂浩二の三平と山本陽子のおかるで、前後編の2回にわたって山崎街道の悲恋ドラマが展開されるのだが、よく見ると一緒にいるはずの三船敏郎が、石坂と山本両所と同フレームに収まってるシーンがひとつもない。編集で上手に見かけの辻褄を合わせている。もそっと遡ると、そもそも石坂の三平は、松乃大廊下事件のあと、早駕籠に乗ってなきゃいけないのに、そのシーンでは後ろ姿ばかりでセリフの無い代役さんで間に合わせている。 | ||
人気スター勢揃いという高いこころざしも、スケジュールの都合という難題には、すでに序章から振り回されていたようである。この番組の自慢がそのまま自分の首を絞めるようなことになっている。(憶測だが、柳生一党の親玉・柳生俊方の仲谷昇さんは名優だが、彼の登場&活躍する#39「暁の江戸潜入」は、ホントはもっとビッグネームを当てたかったんじゃないかなと思うキャラとストーリーだった。ほかにも実現しなかったキャスティングもありそうな。) | 人気スター勢揃いという高いこころざしも、スケジュールの都合という難題には、すでに序章から振り回されていたようである。この番組の自慢がそのまま自分の首を絞めるようなことになっている。(憶測だが、柳生一党の親玉・柳生俊方の仲谷昇さんは名優だが、彼の登場&活躍する#39「暁の江戸潜入」は、ホントはもっとビッグネームを当てたかったんじゃないかなと思うキャラとストーリーだった。ほかにも実現しなかったキャスティングもありそうな。) | ||
| − | + | スケジュールと言えば、有名なエピソードとして、不幸にも最終回よりも前にお亡くなりになってるメインキャストがいるのも珍しい。人生のスケジュールをしくじった市川中車(8th)丈([[吉良上野介]]役。討ち取られる前の逝去が残念)である。 | |
| + | 彼の死後は弟さん・市川小太夫 (2nd)が代役を務めたが、お兄さんの演じ方をなぞるわけでもなく(ビデオの無い時代でサクッと確認も難しかったろうし、急難を救ってくれた相手に強い演出もできなかったのか)、"彼なりの吉良"像を演じているので、キャラ変が凄まじい。(兄は臆病な権威主義者。弟は「ザ・悪役」といったかんじ。) | ||
| 99行目: | 113行目: | ||
| − | + | ●デジタル放送になって以降の忠臣蔵映像作品は、DVDよりBSやCSで見るほうが映像が綺麗に感じられることが多いが、どういうコンディションなのか本作の場合は、DVDのほうが画質が良いように思える。どういう素材、またはコンディションで放送されているかは不明だが、本作に限ってはDVD鑑賞はオススメ。また、放送の場合は差別用語がカットになってたりする(特に#29「浪花に散った恋」なんかは音声が穴だらけ)。 | |
| + | ただ、BSとかは字幕がつくことがあるので、これもおろそかにできない。(もちろん字幕は不完全になったセリフを反映する形になる)(加筆:関東ローカルで再放送の時は映像が綺麗で字幕が無いので、DVD素材を使って流してる?) | ||
| 107行目: | 122行目: | ||
●ノンケの人が見てもすぐ引き込まれるという作風ではなく、あくまで昭和の時代劇ファン、三船ファン向けかな…と思っていたが、過日まったくノンケの後輩が「南部坂」だけ見てたちまちハマり、最初に遡ってイッキ見していたのでやはり魅力たっぷりの連ドラなのかもしれない。 | ●ノンケの人が見てもすぐ引き込まれるという作風ではなく、あくまで昭和の時代劇ファン、三船ファン向けかな…と思っていたが、過日まったくノンケの後輩が「南部坂」だけ見てたちまちハマり、最初に遡ってイッキ見していたのでやはり魅力たっぷりの連ドラなのかもしれない。 | ||
| − | |||
| − | |||
| − | |||
2025年12月16日 (火) 15:43時点における最新版
| 作品概要 | |
| 制作会社 | NET |
|---|---|
| 公開年度 | 1971年 |
| 内蔵助役 | 三船敏郎 |
| 評価 | |
最高傑作。
やさしい昼行灯がいざというとき豹変するイメージの大石内蔵助を、いつも臨戦態勢みたいな三船敏郎がどう演じるのかさっぱりイメージがわかなかった。ミフネに「家臣」「家来」という役は想像しにくい。
ところがどうしてどうして。腹の底に何かをグッと飲み込んで目的に向かって一直線の剛直な家老、ミフネ内蔵助が意外にもいい感じに仕上がっているのでした。
「椿三十郎」にはお城勤めは無理っぽいが、「隠し砦の三悪人」の真壁六郎太や「風林火山」の山本勘助をイメージするとすんなり行く。そういう内蔵助(はあと)。リーダーシップに重厚な安定感がある。
テコでも動かぬ頑固さには、それを押し通す際に払う犠牲への考えや配慮が見られたり、若い衆から理屈のあった説得には柔軟に対応するなど、矛盾のないミフネ内蔵助の好感度は高い。
ストーリー展開
<以下 ネタバレ含みます>
刃傷沙汰のきっかけは「塩づくりの秘法」を浅野から教えてもらえなかった吉良のイジメのエスカレート。ハラハラする松の廊下のシークエンスが見事。市川中車の吉良上野介は自然に「こんなくそじじい、死んじまえばいいのに」と思わせてくれる、イイ出来。
秘法を命がけで守ってただけに「お家断絶、領地没収」という裁決が見ていてショッキング。
ストーリーが進んでも中だるみもかなり少ない(ほとんど無いと言っていい)。
1年をかけての連ドラとなると、どういう架空エピソードで「もたすか」が課題になってきて、NHKだとメロドラマなどを合間に入れてくる。この「民放初の大河ドラマ」(<という言い方をしてるのを読んだが、)はチャンバラざんまいという作戦に打って出た。
「東軍流の剣の使い手」という部分を膨らませたミフネ内蔵助を頭にいただくことにより、自然に浪士たちも全員腕っ節がよいというながれになって(例外的に中村嘉葎雄の岡野金右衛門のようなヘナチョコもアクセントで出てきて、これも良い)、なにかと言うとすぐ斬り合いになるのも本作の特徴。架空の間者やシタッパ侍が登場しては斬り殺され、自刃などもあって最終回までに相当な人死にが出ます。
同時に、大石と上杉と幕府の知恵比べにも見応えがある(吉良側はいっこうに頼りない笑。)
あと、めずらしく講談などの架空エピソードも(いささかのアレンジがあるものの)いちいちしっかり映像化している。実際の赤穂事件のいきさつに、後年にあとからあとから作られたいろんな銘々伝、外伝を、つじつまを合わせてドラマのエピソードに盛り込んでおり、腐心の後がうかがえる。NHKの大河みたいに原作ありき(でもないか)じゃないぶん縛りが無いのかも。(あとで読んだ「実録テレビ時代劇」能村庸一著によると、原作使わない&おなじみエピソードは全部盛り込む…は企画立ち上げ当初の条件だったそうである)
また、オリジナルストーリーにしてもすこぶる「講談調」の展開だったりする。
配役
最も注目すべきは、出演陣の豪華さ。五社協定の垣根を越え(ていうか、この初回放送年に協定は消滅してるので、それを反映した?)「こんな人も出てるのか」とおどろくような顔ぶれなのがとにかく楽しい。そうして出来たキャラクターの相関関係や活躍と言ったらない。
映画界やテレビ界、演劇の世界から人気者を集め、おそらく史上最高の贅沢な顔合わせではないだろうか。たとえば東映「赤穂浪士」の萬屋錦之助の脇坂淡路守と東宝「忠臣蔵 花の巻雪の巻」の市川中車の吉良上野介が(それぞれその役で)同じ画面で拝めるんだヨお立ち会い。
このクロスオーバーはたとえば、DCコミックとマーベルコミックというライバル出版社の2大スター、スーパーマンとスパイダーマンが共演した伝説の『Superman vs The Amazing Spider‑Man』(1976年)のような豪華顔合わせなのであります。
世代的にうれしかったのは、武器調達のかどで拷問にあってる天野屋利兵衛を釈放する粋(イキ)な大阪のお奉行さんを中村梅之助が特出で演じてるとこ。彼は当時江戸町奉行「遠山の金さん捕物帳」放送中で大人気だったのだ!このサービスには当時のお茶の間はさぞ喜んだことでしょう。(さらに付け加えると天野屋を演じた前進座のスター・中村翫右衛門は梅之助のお父さん。…まさかと思って天野屋と一緒に石を抱かされる子役を確認したが中村梅雀ではないようだw)
また、「#38 大石東下り」では、日野家の長持を何者かに勝手に運び出された立花左近がいろいろ推理しながら犯人(大石内蔵助たち)一行の足取りを追うちょっとしたミステリー仕立てになっているのだが、この立花左近が本作放送の数年前から他局(フジテレビ)で始まった鬼平犯科帳シリーズのTV版初代鬼平・松本白鸚(放送当時松本幸四郎8th)ときてる。「かならず取り押さえて、その正体を暴いてくれる!」などと言いながら、彼があれこれ推理している様子が鬼平とかぶって面白い。また彼は、この番組の10年ほど前の映画「花の巻雪の巻」の大石内蔵助でもあり、その時に俵星玄蕃だったミフネ(まだわかいからと大石役を逃している)と対峙するのだから興奮いたします。(この回のお話はすごく良い(脚本:柴 英三郎))
そのほかにも、当時「大江戸捜査網」(三船プロ系。他局)でおきゃんなスリを演じてた岡田可愛が、似たようなパーソナルでカツシンの俵星玄蕃の回に出てるのも、「あゝ忠臣蔵」でも駕籠人足を演ってた小松方正を丑五郎で登板させてるのも、居酒屋主人といえば木田三千雄とか、酔っぱらいなら三井弘次といったように、これでもかというほどふんだんに提供される、当時のお茶の間には"おなじみ"または"なんか見たことある"役者を配したシェアワールド的なキャスティングがいちいちうれしい。
10話に1回くらいのペースで当時人気のお笑い芸人(Wけんじ。ケーシー高峰。牧伸二。玉川スミ。島田洋之介・今喜多代コンビなど←Wikiが網羅してないメンツをチョイスしましたw。)が登場するのも気が効いた工夫で、捨て回みたいなとき、ほかのドラマだと妙な間延びがあって興ざめするものだが、芸人の愛嬌で余白を埋めるというサービスはなんとも心憎い。
ともかく、「楽しませよう」という心意気がこうまでキャスティングに活かされてる作品は珍しいと思う。(いや、無い!)
「テレビ・メイト」(大忠臣蔵 特集号(昭和45年12月1日発行 第15号12月号))によると、当初はおかるには実際に演じた山本陽子ではなく、企画当初はなんと吉永小百合がキャスティングされて発表されていた。吉永降板は映画「戦争と人間第二部」に出るためだろうか。
ついでに言うとこの同誌によれば毛利小平太は高橋悦史ではなく平幹二朗がキャスティングされている。
また、友人のウワサによれば土屋主税には石原裕次郎が当てられていたというウワサがあったそうだが、それはなんとしても実現してほしかったなぁ〜!
五社協定崩壊後、「黒部の太陽」('68)以降、垣根を超えた四大スター(三船、勝、錦之助、裕次郎)の映画共演時代が続いていたのだから、決して不可能なハナシではなかったが、このころ石原裕次郎は自社の映画2本に出たあと、肺結核で入院中だったのである(「市川雷蔵と勝新太郎」中川右介 KADOKAWA刊)。激務と病気でアウトだったのだ。
欠点
気がかりだったのは、調子に乗っていろんな人たちを浪士として豪華にキャスティングしたのはいいが、肝心な討ち入りの時にこのそうそうたる顔ぶれが一堂に会せるのか?ってコト。
そしたら案の定、伴淳三郎、有島一郎をはじめフランキー堺、中村嘉葎雄、など何人もの大事なメンバーがドッサリと討ち入りのときに不在(ていうか、ラスト何回かはいなかったことのようにかき消える)!しょぼーん。制作費10億円でも全員集合は無理だったかぁ〜。
そんなわけで、あれだけ「おなじみエピソードは全部盛り込む」をコンセプトにしていたわりに、肝心な「勢揃い」「討ち入り」に、じゃっかんの肩透かし感が漂う。(そこに居ない有島一郎の、代役の背中ばかりを写して、アフレコで有島一郎の声だけかぶせるというシーンの苦しいことと言ったら…)
ただ、討ち入り回はそうした穴を埋めるべく、赤穂浪士以外の活躍をクローズアップしてがんばっている。吉良側は大友柳太朗や芦田伸介などメンツがズラリと揃っており、かっこいいし、ほかにもこれまで影なり日向なり活躍していたいろんな登場人物が集合してクライマックスを盛り上げ、吉良邸内外で立ち回りを見せてくれる。(さながら仮面ライダーの最終回の怪人大集合に似て…ああ、そういえばあのドラマも途中から藤岡弘不在だったなあ!ちなみに藤岡ライダーも'71放送作品)
このことは、予算もさることながら、スケジュール調整も難しかったのではと思う。
あらためて作品を見てみると、討ち入り前にも、多くの赤穂組メンバーが勢揃いしていなければいけない場面において「全員欠席」シーンがある。たとえば、グッとさかのぼって、城明け渡しの前の、最後の評定なのだが、三船大石が吉良を討つ存念を一堂に打ち明ける際に(けっこう大事なシーン)、その場にいるのは"知らない人"ばっかり(大部屋俳優さんたち)なのである。
もちろん、70名近いメンツはこのあと脱盟していったりするわけだから、その場に知らない人が残ってても差し支えないのだが、それにしても、討ち入りまでは残るべき俳優陣(それこそ先述のフランキー、伴淳、中村ら)がひとりもいないのは、じゃっかんの違和感があった。(補足すると、同エピソードに出番のあった大石主税と吉田忠左衛門だけは、いる)
とはいえ、討ち入りに比べれば「ただ大石のハナシを聞いてるだけ」のために、巨額のギャラを払ってまで名優を一堂に会すのはさすがに贅沢がすぎるし、討ち入りの無断欠席に比べれば、見ている方としては実は重たくは気にならない。
ほかにも、細かくは、石坂浩二の三平と山本陽子のおかるで、前後編の2回にわたって山崎街道の悲恋ドラマが展開されるのだが、よく見ると一緒にいるはずの三船敏郎が、石坂と山本両所と同フレームに収まってるシーンがひとつもない。編集で上手に見かけの辻褄を合わせている。もそっと遡ると、そもそも石坂の三平は、松乃大廊下事件のあと、早駕籠に乗ってなきゃいけないのに、そのシーンでは後ろ姿ばかりでセリフの無い代役さんで間に合わせている。
人気スター勢揃いという高いこころざしも、スケジュールの都合という難題には、すでに序章から振り回されていたようである。この番組の自慢がそのまま自分の首を絞めるようなことになっている。(憶測だが、柳生一党の親玉・柳生俊方の仲谷昇さんは名優だが、彼の登場&活躍する#39「暁の江戸潜入」は、ホントはもっとビッグネームを当てたかったんじゃないかなと思うキャラとストーリーだった。ほかにも実現しなかったキャスティングもありそうな。)
スケジュールと言えば、有名なエピソードとして、不幸にも最終回よりも前にお亡くなりになってるメインキャストがいるのも珍しい。人生のスケジュールをしくじった市川中車(8th)丈(吉良上野介役。討ち取られる前の逝去が残念)である。
彼の死後は弟さん・市川小太夫 (2nd)が代役を務めたが、お兄さんの演じ方をなぞるわけでもなく(ビデオの無い時代でサクッと確認も難しかったろうし、急難を救ってくれた相手に強い演出もできなかったのか)、"彼なりの吉良"像を演じているので、キャラ変が凄まじい。(兄は臆病な権威主義者。弟は「ザ・悪役」といったかんじ。)
その他
●初めてみた時は、女性の撮り方は今ひとつ美しくないかなと思ったものだが、あらためて見てみると、描かれている女子メンはどれもナヨナヨ一辺倒の添え物には終わっておらず、敵キャラも味方もメンズに負けない魅力的な女丈夫に描かれている。ジェンダーに固執しない登場人物たちは、時代の最先端を行った表現だったのかもしれない。
●千坂兵部が放つ隠密・お蘭の香月晃(元宝塚)と、内蔵助のサポートに三村次郎左衛門=アースノンガスの左右田一平、大石三平…高島彩アナのお父さん竜崎 勝、公儀隠密の加倉井林蔵=高松英郎らが持ち回りで三船敏郎の次くらいに四六時中出ずっぱりなのも本作の特徴。
●デジタル放送になって以降の忠臣蔵映像作品は、DVDよりBSやCSで見るほうが映像が綺麗に感じられることが多いが、どういうコンディションなのか本作の場合は、DVDのほうが画質が良いように思える。どういう素材、またはコンディションで放送されているかは不明だが、本作に限ってはDVD鑑賞はオススメ。また、放送の場合は差別用語がカットになってたりする(特に#29「浪花に散った恋」なんかは音声が穴だらけ)。
ただ、BSとかは字幕がつくことがあるので、これもおろそかにできない。(もちろん字幕は不完全になったセリフを反映する形になる)(加筆:関東ローカルで再放送の時は映像が綺麗で字幕が無いので、DVD素材を使って流してる?)
●音楽良いです。いさましいけど、どっかさみしい。ぱっと頭に浮かぶ「忠臣蔵」の音楽と言えば、コレです。冨田勲。
●ノンケの人が見てもすぐ引き込まれるという作風ではなく、あくまで昭和の時代劇ファン、三船ファン向けかな…と思っていたが、過日まったくノンケの後輩が「南部坂」だけ見てたちまちハマり、最初に遡ってイッキ見していたのでやはり魅力たっぷりの連ドラなのかもしれない。


