悲恋おかる勘平

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作品概要
制作会社 松竹
公開年度 1956年
内蔵助役 中村時蔵3rd
評価 2ツ星
公開当時のパンフレット

仮名手本忠臣蔵の五段目と六段目にあたる、お軽勘平の悲劇を映画化したもので、30でこぼこの勘平を24歳の萬屋錦之介(当時:中村)が演じている、ラブストーリー忠臣蔵。


映画化するにあたって、桃井若狭助や鶴岡八幡宮、高師直顔世御前への横恋慕やラブレターのやりとり一切がカットされて(でしょうな)、かわりに阿久里が赤穂明神のお札を江戸城までお軽に託すという新しいエピソードを用意して、そこらへんのタイミングで松乃廊下事件が起こるアレンジになっている。


とにかくマジメ一貫のキャラ・勘平くんはおかると彼女の実家に引っ込んだあと猟師をしてるが、茶店でお家断絶のうわさを聞いてお軽一家とミズさかずきして赤穂城に駆けつけるけど門前払いされて、あげく無血開城ってことで悲嘆に暮れてすごすごお軽ンちに戻り、「猟師頑張ります!」とカラ元気。

そんなある日神崎与五郎から内蔵助が殿さまの石牌建立の話を聞き、舅・与市兵衛に十両の金策をたのむ。

お軽は茶屋に売られる。与市兵衛は売った金を定九郎に強奪され殺される。勘平は定九郎を誤射するが警察に通報するでもなく、あろうことか死体がフトコロに飲んだ五十両をネコババする。なんだかんだで勘平切腹。…な、おなじみの内容。


この話は、女子と男子で大きく感想が別れそう。

女子で錦之介ファンの友人は、後年を予見させる「強いキャラ」な演技の中に「ウジウジキャラ」を織り交ぜた和事(わごと)を演じきってる若き錦之介に、キラキラと初々しいものを感じ、なかなかこたえられないようだったが、男子で、おまけに歌舞伎の事情(or歌舞伎の良さ)知らない人のサイト・レビューを見ると、とびきり腕が立つわけでもなければ、かといって恋にも生きず、ウジウジしてたかと思うと急に農家のじいさんに金の無心をしたり死体からネコババしたりと、どこに魅力を見いだしてイイかわからないようすで「なんじゃこのキャラは?」という印象を持つようでございます。

(ま、概してラブストーリーの感想は男女でそんなふうに別れるものかもですな)

・・余談だが、「笛吹童子」「里見八犬伝」「紅孔雀」路線の錦之介はたいそうかっこよかったそうで、そこに魅了されてた往年のファンは本作や「赤穂浪士 天の巻・地の巻」の小山田庄左衛門の意気地なしなありさまには心からエールを送れなかったそうです。


(以下ネタバレ)

勘平の名は短冊に書かれて彼の槍とともに討ち入りで活躍。死んで参加する、討ち入り装束姿の勘平にジワッと来る。

歌舞伎でははっきりしないおかるの行く末は、生前の内蔵助に身請けされたあと瑤泉院のところで働くというかたちで丸く収まります。


ちなみに、定九郎も、もちろん登場するが、松乃廊下事件の時に勘平を侮辱したり、浪人後は農家から小作米をぶんどる無頼漢として出番が多い。演じるは高木二朗さんというきわめてオッサン顔の人だが、これはこれで良い定九郎でした。


<附言>

ミフネ版」に前後編で本作と同じタイトルの回があるので(石坂浩二の勘平✕山本陽子のお軽)、リピート放送があるとこのコーナーのアクセス数が上がる。

厳密には石坂の役は萱野三平であるが、萱野の死をまるきり仮名手本の勘平のエピソードになぞらえた全く新しい悲恋もの(<なかなかかっこ良くアレンジされ、お軽に横恋慕するのが伴内ではなく定九郎。)に構成しなおされている。